大麻医療やヘルスケア にまつわる偏見を払拭し、人々に安心して利用できる場所を提供するため、米国の大麻薬局ではウェルネスストアとスパを組み合わせた魅力的なビジネスモデルを展開しています。
マイナスイメージと戦う薬局
医療用や嗜好用の大麻の合法化が進むアメリカ。大麻薬局では痛みケアや難病治療、美容やリラックスに至るまで、目的に沿った大麻が手に入るようになっています。
アメリカ市民の意識も2012年にコロラドとワシントン州で初めて嗜好用大麻が合法化された10年前から大きく変わりましたが、いまだに大麻にネガティブな印象を持つ人が多いのも現実です。このため「ディスペンサリー」と呼ばれる大麻薬局の経営者は、地域や近隣の住民と偏見に立ち向かわなくてはならないこともあります。
2023年に嗜好用大麻が合法化されたメリーランド州の大麻薬局では、ユニークな経営方針で大麻に対するマイナスイメージを払拭することに成功しています。
キュリオ・ウェルネスの試み
アメリカの首都ワシントン D.C. の近くのメリーランド州で、医療用大麻ディスペンサリー「キュリオ・ウェルネス」を経営するウェンディ・ブロンフェインと彼女の仲間たちは、大麻に対するネガティブなイメージを変えるための戦略として、ディスペンサリーにウェルネスストアとエステを組み合わせました。この方法は、大麻をホリスティックで安全な選択肢として紹介し、人々の大麻に対するマイナスの考えを減らし、同時に顧客数を増やすことに成功しました。
ディスペンサリーはホリスティック薬局、エステが別々に運営されていますが、すべて同じ建物内にあります。来店者はまず薬局に入り、その後薬局からエステに続く入口に進みます。エステでは熟練エステティシャンによる全身マッサージやフェイシャルエステ、鍼治療などを受けることができるようになっています。ここでは薬局にいる間や施術の予約を待つ間に、大麻成分を使ったコスメやウェルネス製品を購入できるようになっています。
ここでは、品質の高いCBD製品、ビタミン、健康補助食品、自然由来の健康商品、美容用品、そして大麻関連のアイテムがたくさん揃っています。この新しいビジネスモデルは、代替医療を検討している人たちに魅力的にアピールし、リラックスした雰囲気の中で安心して治療を受けられる場所を提供することを目指しています。
合法化後の規制が生んだアイデア
メリーランド州では、以前から医療用大麻は合法となっていましたが、娯楽用大麻合法化によって、ディペンサリーでは従来の広告とマーケティングに制限がかけられるという思わぬトラブルも発生しました。
医療大麻オンリーの時代には、大麻薬局の広告を出して大麻医療を必要とする人にアピールすることができたのですが、嗜好用大麻が合法となり一般の人々にもアクセスしやすくなったことで、宣伝に安全のために規制がかけられるようになってしまったのです。このため道路の看板スペースを買って広告を出すといった大型宣伝を打つことができなくなってしまいました。「キュリオ・ウェルネス」ウェルネス&エステを併設するようになったのはこのような背景も関係しているのです。
大麻とCBDが持つウェルネス効果
古くから薬草として使われていた大麻は現代に入り違法薬物として規制される時代が長く続きました。しかし研究が進むにつれて体と心の健康に役立つ様々な物質が含まれていることがわかり、医療やヘルスケア業界などでも広く利用されるようになっています
大麻成分の中でも、CBD(カンナビジオール)という成分は特に注目されています。CBDは大麻から抽出されリラクゼーションやストレスの軽減、睡眠の改善、難病の治療に役立ちます。また気分を高揚させる作用がないため、安全に使うことができます。
CBDは痛みの緩和に役立ちます。長期にわたる慢性的な痛みに悩む人々にとって、CBDは低い副作用で痛みを和らげる方法として注目されています。カンナビノイドの1種であるCBDは炎症を抑える働きがあり、副作用の強い化学薬品を使わずに痛みを効果的に緩和できる可能性があります。
さらに、現代社会では多くの人がストレスや不安に対処しています。CBDはこれらの問題に対処する手段としても利用されています。特に不安症に対する効果が高く、心身をリラックスさせ、精神的な安定を取り戻すのに役立ちます。そのため、CBDは海外でメンタルヘルスの障害やトラウマ治療にも利用されるようになっています。
アメリカ各地ではどんなアプローチがとられている?
多くの観光客が訪れるエリアでは、大麻体験を提供する観光ツアーやイベントも増えています。2018年に嗜好用大麻が合法化されたカリフォルニアではこの分野は急速に成長し、観光バスと専門ガイドつきで、観光客が安全に大麻を試すことができるサービスが増えています。
また、コロラド州は大麻の合法化に早くから取り組んでおり、大麻に関連するさまざまなフェスティバルや展示会が開催されています。ここでは大麻体験に加えて、スキーやアウトドア活動、ワインや美食の楽しみも組み合わせたツアーを選ぶことができます。また、医療大麻が合法化されている州では、医療大麻カードを持つ患者が必要な医療用大麻を購入できるような制度も導入されています。
医療目的で大麻が適用される病気には州によってことなりますが、
ALS(筋萎縮性側索硬化症)
⦁ MS(多発性硬化症)
癌
クローン病
てんかん
緑内障
HIV
多発性硬化症
パーキンソン病
PTSD
末期疾患(余命12ヶ月以内と診断された患者など)
などがあります。
まとめ
現代医学の進歩に伴い、大麻は医療分野とウェルネス分野の両方で注目を浴びています。代替医療としての大麻の可能性はますます広がっており、メリーランドの大麻薬局の例は、優れた成功例と言えるでしょう。彼らの取り組みは、大麻に対するイメージを改善する上で、日本でもお手本にする日が来るかもしれません。
大麻成分の使用に関する法律や規制は国や地域によって異なりますから、その地域の法律を理解することが大切です。またCBDをサプリメントとして使用する場合も、正確な情報を得て理解を深め、自分の健康状態に合った使い方を心がけましょう。
大麻を正しく使うことはとても大切です。正しい使い方を守ると、大麻が医療や健康の分野で役立つ可能性が高まります。自身の健康を守り、法的ルールを順守することは、大麻の活用において不可欠な要素と言えるでしょう。
<参考資料>