【麻の名産地】日本の麻の有名産地とその歴史

日本では、古代から、麻が利用されてきましたが、特に、衣料の原料として活用されてきました。その歴史は、縄文時代にまで遡ります。

江戸時代のはじめ、綿織物が一般の人にも普及するまでは、日本における日常使いの布製品といえば、大麻や苧麻で作られていました。

一般庶民の着物の布地として親しまれてきた一方で、麻織物は、皇族や幕府への最高級の献上品としても用いられてきました。

日本では、各地で伝統的な麻織物が作られています。ここでは、代表的な麻織物をご紹介します。

日本の麻織物

(麻織物)

麻織物とは、麻の繊維でできた織物のことを言います。古くは、エジプトのミイラを包んだ布が麻布でした。日本でも、弥生時代の吉野ケ里遺跡から、絹とともに麻の繊維が発掘されています。

麻の衣服の材料となるのは、亜麻の繊維リネン、麻(大麻、狭義の麻)の繊維ヘンプ、苧麻(からむし)の繊維ラミーで、日本では、古来より、麻、苧麻が重宝され、ともに、麻織物と呼ばれてきました。

正倉院御物には、多くの麻織物が保存され、平安時代の「延喜式」にも、麻織物について多く記載されています。

その後、時代が進むにつれ、各地で独自の麻織物が発達します。中世から近世にかけて、奈良晒、越後上布、宮古上布などが生産されます。上布(じょうふ)とは、細い麻糸(大麻と苧麻)を平織りしてできる上等な麻布のことで、過去には、幕府への献上品として用いられたこともありました。

奈良晒(ならざらし)

時代が進み、江戸時代になると、裃(かみしも)が武士の正装になりました。裃とは、肩衣(かたぎぬ)という袖のない上衣と袴(はかま)を組み合わせたもので、同色同質の素材で作りました。

裃の素材は、「麻」が正式と決められていました。江戸時代には、その裃用の高級麻織物の産地として、奈良が名高いでした。特に、奈良晒は、幕府御用品として、その名声をほしいままにしました。

当時、「麻の最上は南都(奈良のこと)なり」と言われるほど、奈良晒の白さと肌触りには定評がありました。奈良晒は、従来、苧麻を原料とし、灰汁、天日干し、白搗きという工程を経て、奈良晒独特の風合いが作られました。

近江上布(おうみじょうふ)

近江上布は、滋賀県湖東地方で生産され、近江商人によって、日本全国に流通しました。古くは、高宮布、高宮細美(たかみやさいみ)と呼ばれていました。また、江戸時代には、中山道高宮宿に集まって、商人によって販売されました。主に、都市の商家の仕事着として利用されましたので、垢ぬけた都会的な雰囲気の布になっています。

明治以降、急激な産業の変化で高宮布の生産は途絶えましたが、その後、滋賀県愛荘町や東近江市に拠点を移すとともに、技術革新もあり、近江上布として発展しました。

近江上布の特徴は、苧麻の糸と麻の糸を組み合わせたり、苧麻だけ、麻だけなど、いろいろ使い分けられている点と、仕上げの工程に、鈴鹿山脈からの豊富な湧水が使用されている事です。

越後上布(えちごじょうふ)

越後国での麻織物の歴史は古く、天平勝宝年間(749~757)に、朝廷に献上された「越布」が正倉院に収められています。また、平安時代の「延喜式」にも、越後布についての言及があり、宮廷に越後の布を納めていたことがわかります。

越後上布は、上布の最高級品とされ、「東の越後、西の宮古」と並び称されています。日本を代表する織物の一つと言えるでしょう。

現在では、越後上布とは、新潟県南魚沼市、小千谷市で主に生産されている、平織りの麻織物のことを言います。

古来は、越後縮と言われていましたが、現在では、平織を越後上布、縮織を小千谷縮として区別しています。いずれも、重要無形文化財に登録されています。

越後上布の雪晒しは、非常に有名で、2~3月の快晴の日に、雪の上に布が晒されるのは、新潟の冬の風物詩となっています。

宮古上布(みやこじょうふ)

宮古上布とは、沖縄県の先島諸島の宮古島で生産される上布と呼ばれる麻織物です。前章の越後上布とともに、「東の越後、西の宮古」と並び称されています。

1反を織るのに、2か月以上かかると言われる上布の最高級品です。ちなみに、1反とは、大人用の和服一着分の用布のことです。

手績みの苧麻糸によって作られる、錆色(青色)の織物で、甘藷で作った糊をつけ、砧で打ってロウを引いたような光沢が特長です。

宮古上布は、16世紀に完成したと伝えられています。江戸時代には、薩摩藩によって、薩摩上布として江戸等に送られ、全国にその名前を知られるようになりました。

明治以降は、宮古上布として、全国向けに生産が続けられましたが、第二次世界大戦をはさみ、生産量は、急激に落ち込みました。その後、関係者の努力によって、徐々に、生産量は回復しています。

望陀布(もうだのぬの)

古代において、上総国望陀郡(現在の千葉県袖ケ浦市、木更津市、君津市付近)で織られた麻織物です。

律令制の「調」として徴され、当時の最高級品とされていました。大嘗祭などの宮中祭祀や遣唐使の贈答品として用いられました。

現在、実物は残っていませんが、房総半島地域は、古くから麻布の一大生産地でした。

岩島麻(いわしまあさ)

岩島麻は、江戸時代、「上州北麻」と呼ばれ、吾妻錦という製品名は、最上級麻の代名詞でした。岩島麻は、優良品質の麻の生産地として、全国的に名前を知られていました。

岩島麻は、一時、化学繊維に押され、消滅の危機に陥りましたが、岩島麻保存会の努力によって、貴重な生産技術を後世に伝えるべく、伝統技術の保存と精麻生産が継続されています。

戦後初めてとなった平成の大嘗祭では、徳島の阿波忌部氏の技術が途絶えていたため、伊勢神宮に奉納している群馬県の岩島麻の種子や栽培方法などを技術指導し、大嘗祭に間に合わせたということです。

からむし織

からむしは、イラクサ科の多年草で、苧麻とも呼ばれ、原野や畑で栽培されています。苧麻の繊維を青苧(あおそ)といいます。

室町時代には、越後(新潟)に、越後青苧座が組織され、青苧の販売が独占されました。後に、会津(福島)での生産が盛んとなりました。

現在において、本州で唯一、福島県の昭和村で栽培され、からむし織が製造されると同時に、越後上布や小千谷縮の原料となっています。

まとめ

日本各地で、時代や地域に根差した麻織物が織り続けられています。正倉院御物に収められる時代から営々と続いているものもあれば、残念ながら、合成繊維など時代の趨勢に押されて途絶えてしまったものもあります。

各地の麻織物の多様さを見ると、いかに、日本人の暮らしに麻織物が根付いているのがよくわかりました。これからも、その伝統が、次の世代に受け継がれることを願わずにはおれません。

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情報引用元

日本人の「服と文化」を作ってきた布の正体:https://sunchi.jp/sunchilist/craft/115196

麻織物:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BA%BB%E7%B9%94%E7%89%A9

上布:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E5%B8%83

裃:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A3%83#:~:text=%E8%A3%83%EF%BC%88%E3%81%8B%E3%81%BF%E3%81%97%E3%82%82%EF%BC%89%E3%81%A8,%E7%94%B7%E5%AD%90%E3%81%AE%E6%AD%A3%E8%A3%85%E3%81%AE%E4%B8%80%E7%A8%AE%E3%80%82

奈良晒とは:https://sunchi.jp/sunchilist/narayamatokooriyamaikoma/115411

越後上布とは:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B6%8A%E5%BE%8C%E4%B8%8A%E5%B8%83

宮古上布とは:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%AE%E5%8F%A4%E4%B8%8A%E5%B8%83

望陀布:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%9B%E9%99%80%E5%B8%83

岩島麻とは:http://www.polaculture.or.jp/promotion/thickbox/parson_data28_05.html?sc=_map


https://www.taimauniversity.com/400%E5%B9%B4%E3%81%AB%E3%82%8F%E3%81%9F%E3%81%A3%E3%81%A6%E7%B6%9A%E3%81%8F%E4%BC%9D%E7%B5%B1%E3%82%92%E4%BB%8A%E3%82%82%E5%AE%88%E3%82%8B%E9%87%8D%E8%A6%81%E4%BA%BA%E7%89%A9%E9%81%94%E3%80%80/

からむし織とは:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BA%BB_(%E7%B9%8A%E7%B6%AD)#:~:text=%E9%BA%BB%EF%BC%88%E3%81%82%E3%81%95%EF%BC%89%E3%81%AF%E3%80%81%E6%A4%8D%E7%89%A9,%E3%81%8B%E3%82%89%E9%87%8D%E5%AE%9D%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%8D%E3%81%9F%E3%80%82

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