車やファッションそして日用品まで、石油由来の製品に囲まれている私たち。人類と地球に優しいサステナブルな社会実現の取り組みが行われる中、私たちが知っておくべきことは何でしょうか。
石油は永遠に使える訳ではない
ロシアのウクライナ侵攻により、世界的な物価上昇が起きています。ロシアが多く産出する天然ガスや石油などのエネルギー価格はその最たるもので、家庭や企業の光熱費が急激に押し上げられている様子が日々報道されています。エネルギー資源に乏しく、その供給の多くを海外からの輸入に頼っている日本でもその影響を免れることはできないでしょう。
地下に眠るこれらの資源は産出できる量や場所が限られており、世界情勢の影響を受けやすいという性質を持っています。また現在と同じように採掘を続けられる年数は、たったの60年前後という予測もあります。
また石油系エネルギーに頼ることで地球環境に大きなダメージを引き起こしていることからも、将来に向け、より持続可能=サステナブルなエネルギー源を確保することが重要視されています。
サステナブルな消費とは
2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」を実現する手段の1つとして「サステナブルな消費」が挙げられます。
サステナブル(Sustainable)には「持続可能」つまり「将来も継続できる」という意味があります。ビジネスでは資源を有効に使ったり、代替エネルギーに切り替えることで地球環境を守る取り組みという意味で使われています。
「サステナブルな社会」と言った場合、それは「将来においても持続可能な社会」という意味を持ちます。石油や天然ガスに頼った経済活動は、将来資源が枯渇してしまう可能性や、社会情勢によって供給ができなくなってしまうこと、そして地球環境そのものが破壊され生きにくくなってしまう確率が非常に高いことからも非サステナブルな消費社会です。
サステナビリティ(持続可能性)は、企業や国の活動を表すことが多いですが、最近では消費者個人が環境に配慮した消費活動を心がける「サステナブル消費」に注目が集まっています。
今日から始められること
プラスチックやゴム、化学繊維など私たちの生活に石油製品は欠かせない存在です。また日々の光熱費やガソリンなどのエネルギーもそのほとんどを化石燃料に依存しています。
サステナブル消費の代表は、天然素材の商品を選ぶ、過剰包装を避ける、無農薬の野菜を選択する、スーパーのレジ袋の代わりにマイバッグを使う、風力や水力、太陽光発電をベースにしたエネルギー会社に契約を切り替えることなどが含まれます。
またファッション業界は石油産業に次いで環境汚染に影響を与えていると言われます。
「安い製品を使い捨て消費」より、「エシカル(倫理的)に作られた納得のいく商品を適正価格で買い、長く使う」こともサステナブル消費の1つです。
どんな素材がサステナブル?
サステナブル素材とは、自然環境に配慮した、環境負荷の少ない素材のことを指します。大きく分けると「天然素材」と「リサイクル素材」の2つ。廃棄された後、微生物に分解され土に還る素材と、分解はされないけれど、リサイクすることで新しい製品に生まれ変わることができる素材と言い換えることができるでしょう。
<天然素材>
天然素材の中でもオーガニックコットンのように無農薬で育てられた素材は環境被害や、生産者や消費者への害が少ないため、より安全でサステナブルな素材です。衣類に使われる素材としては古くから重宝されてきた綿(コットン)・亜麻(リネン)・絹(シルク)が代表的です。
また大麻草=ヘンプは丈夫な繊維が取れることから麻袋やロープ、紙の材料などに古くから使われていましたが、肌触りをよりソフトにする技術が進歩したことでリネンやコットン素材のようにファッションに取り入れることが可能になりました。カジュアルブランドの「リーバイス 」では、ヘンプを使ったジーンズのコレクションを発表し話題に。ヘンプは綿花よりも農薬や水の使用量が少なくて済むため、コットンよりも環境に優しい素材であると言われています。
<生分解性再生セルロース>
木材パルプやコットンリンター(綿花の種に残っている繊維のこと)など植物由来のセルロース(繊維)に化学処理を施した素材、レーヨン・リヨセル・キュプラなども天然素材の一種です。しかしこれらの繊維は化学処理を施して繊維を溶解する際にアルカリ(苛性ソーダ)などの危険な薬品を使うため、環境や人体への悪影響を懸念する声もあります。
<リサイクル素材>
リサイクル素材はこれまで廃棄されてきたプラスチック類を再利用した素材のことで、工場などで出る廃プラスチックやペットボトルを再生用したリサイクルポリエステルなどが代表的です。再利用を行うことで石油資源が節約できる他、CO2排出量のカットにもつながります。
ユニークな新素材も仲間入り
繊維技術の進歩とともに、これまで廃棄物として処理されてきた素材も天然ファッション素材に利用できるようになっています。
パイナップルの葉を使った素材「ピニャテックス」は、動物性素材を使わない革製品、ビーガンレザーとして注目を浴びています。皮革製品のように大量の水や薬品を必要としないためめ環境ダメージが低く、食用パイナップル栽培の副産物として生まれた葉を材料にするため、生産のために新たな土地や水を必要としません。
またキノコのような菌糸体を培養させて作る人工レザー「マッシュルーム・レザー」も、動物を犠牲にすることなく、環境負荷も極めて低いため、各ブランドがこぞって取り入れている素材の一つです。中でも高級ブランドのエルメス(HERMÈS)が支援するスタートアップ企業マイコワークス社は、ファッション業界の注目を集めています。
https://www.mycoworks.com/
サステナブル製品はなぜ高い?
食料品を全てオーガニックで揃えようとすると高くつくのと同じように、サステナブルな生活を送ろうとすると、割高になると感じる人も多いでしょう。
しかし考えてみると、こちらの方が適正価格であることが分かってきます。私たちが安価に物を手に入れられるのは、大量生産を実現するために石油や森林資源の濫用、過酷な労働条件、環境ダメージというコストを払ってきたからに過ぎません。
気候変動問題により、異常気象に見舞われることが頻繁になってきた今、私たちはこのコストを自分たちで支払うことで、環境への負担を少しでも減らすことができるのではないでしょうか。
マインド・チェンジを起こす
ファッション業界ではトレンドが命。しかし若い世代では「サステナブルこそがクール」であるというマインド・チェンジも起こりつつあります。
ファッションに関しても、サステナブル素材を使ったもの取り入れるのがトレンド。自分のスタイルを確立した大人世代になれば、上質なものを手に入れ、大切に長く使うことも可能になるでしょう。
例えば英国ブランドのVollebakでは、スチールの15倍の強度があり破壊は不可能という謳い文句のジャケットや、火山ツアーにも耐えるという「100年パーカー」、そして電子廃棄材から作られた時計「ガベージ・ウォッチ」といったユニークな製品を発表しています。
贅沢品と捕らえられがちな上質な靴やオーダーメイドの靴を作ることも、大量生産の逆をいくのサステナブルなショッピングの方法です。自分の足にぴったりとフィットする靴は手入れをしながら何年も、ときには何十年も履くことができ、量産シューズでは味わえない体験ができます。また古くから手法で作られた靴は生分解性の素材を使っていることが多いのもサステナブルです。
また最近では、リサイクルやリユース(再利用)の考え方を発展させた「アップサイクル」にも注目が集まっています。これはものを再利用するのではなく、より次元や価値の高いものに生まれ変わらせるという考え方。例えば前述のピニャテックスのように栽培の際に出る廃棄物を人工レザーに生まれ変わらせるといった試みです。
まとめ
サステナブルな社会は環境問題にストップをかけるだけでなく、エネルギーをめぐる紛争や、供給の不均衡など様々な社会問題を緩和することもできます。私たち消費者も意識を変えていくことで、脱石油・脱炭素社会へのシフトを加速させていくことができるでしょう。
https://www.theguardian.com/fashion/2020/oct/04/future-proof-clothing-will-this-label-protect-you-from-covid-vollebak
https://www.vollebak.com/product/garbage-watch/