自然素材であり環境にも優しい産業用ヘンプ。本稿では眠りの質を上げるベッドリネンや食品、靴、サプリやバス用品など日常生活にヘンプ製品を取り入れて、エコでヘルシーに暮らすコツを紹介します。
生活の様々なシーンで役立つヘンプ
サステナブルに生産でき、環境への負荷も低いと言われるヘンプ=大麻。大麻と聞くと麻薬のイメージを思い浮かべる人も未だ多いですが、近年では気候変動問題への関心から世界各地で大麻の利用に熱い視線が注がれています。
大麻がサステナブルだと言われる理由は「多目的に使える万能さ」と「環境ダメージが非常に少ない」こと。
現在、産業用大麻は世界で25,000以上の製品に使用されているといいますから驚きです。
繊維を紡いでロープや布地を生産したり、種子を食べたり産業用オイルを作り出したり。茎に含まれる繊維を利用して建築用素材を作ったり。セルロースを加工してプラスチック複合材なども作られています。
また麻に含まれる数百種類に及ぶ薬理成分の研究も進んでおり、ウェルネスや医療界でも利用が広がっています。よく知られている成分はリラックスや安眠、炎症緩和効果のあるカンナビジオール(CBD)で、サプリや医薬品など様々な製品が生まれています。
麻は成長が早く収穫までのサイクルが短いため1年に数回できるというメリットがあります。そして成長の過程で大気中の二酸化炭素をどんどん吸収してくれるため、面積あたりの吸収量は森林の数倍といわれています。農薬や肥料、水の使用が少なくても丈夫に育つのも、麻が地球に優しい植物と言われるゆえんです。
どんな生活用品がある?
麻を生活に取り入れてみるのは、プラスチックの消費を控えてマイバッグを持参したりごみのリサイクルを行うのと同じように地球環境改善の改善に役立ってくれます。
コツは「麻でできているから買う」ではなく、自分が実際によく使うものに麻素材アイテムを取り入れてみること。
使えば使うほど味と風合いが出てくるのが、麻の魅力でもあるので、長くお付き合いできるものを選んでみましょう。
以下では、ヘンプを使った生活用品の例を紹介していきます。
ベッドリネン、ヘンプタオル
リネン素材(亜麻)のシーツやピローケースといえばハイクオリティな寝具として知られていますが、同じく麻の仲間であるヘンプ素材のベッドリネンも手に入るようになりました。
ベッドリネンやタオルはコットン素材のものが定番ですが、綿花を生産するためには大量の農薬や水が必要になるため、天然素材とはいえ環境への負担や、綿花農家のへの健康被害という大きなデメリットがあります。
農薬を使わないオーガニックコットン素材に切り替えるのも良いですが、最近では繊維や紡績技術の進化によってヘンプというチョイスも仲間入りしました。
ヘンプもリネンと同じように通気性や吸汗性がよく、さらっとした肌触りが特徴です。また洗濯すればするほど風合いが増し、生活に馴染んでいくというメリットがあります。天然の防臭効果や抗菌性を備えているのも嬉しいところ。安眠グッズとしてもぜひ取り入れたい素材です。
同じ理由で、ハンドタオルやバスタオルもヘンプ素材を取り入れてみたいエリアです。吸湿性がよくしかも乾きやすいため、気になるにおいのトラブルもありません。使えば使うほど柔らかさが増していく楽しさもあります。
食生活に取り入れる
大麻の種、ヘンプシードは栄養価が高いことで知られています。大麻といえばマリファナ、種を食べても大丈夫?という心配は無用です。
産業用に生産されている大麻は精神を高揚させる成分、テトラヒドロカンナビノール(THC)をほぼ含まない品種です。例えばあんパンについているケシの実はアヘンの原料になりますが、アンパンを食べてもアヘン中毒になることがないのと同じこと。
(※問題視されることも多いTHCですが、使い方次第では素晴らしい医療効果を発揮することもあり、世界各国で研究が進められています。)
ヘンプシードはクセもなくナッツのような風味で食べやすく、サラダやお浸し、シリアルなどにふりかけるだけで簡単に食べることができます。また料理が好きならヘンプシードを使ったクリーミーなパスタソースや植物性チーズ作りにも挑戦できます。最近ではヘンプシードを原料にした豆腐などユニークな商品も登場しています。
ガーデニング・インテリアに取り入れる
窓際ガーデニングに、ヘンプ素材を使った風合いのある植木鉢でナチュラル気分を盛り上げてみるのはいかがでしょうか。
ベルリン在住のアーティスト、ヤスミン・バワの作りだした植木鉢のように単体でも彫刻作品のような存在感を放つものも登場しています。
https://www.yasminbawa.com/
またヘンプ素材で編んだ観葉植物用のハンギング・バスケットを部屋に吊るして、植木鉢のカバーに使うのも、温もりあるナチュラル空間を演出するよいアイデアです。
ヘンプ・ボードで街をクルーズ
ストリートカルチャーと切り離せない存在のスケートボード。メープルウッドで作られるものが大多数を占めますが、良質の樹木が成長し成熟するまでに40〜60年もの時間がかかります。最近では家具や楽器、スケートボードなどの需要に木の成長が追いつかず、伐採ばかりが進み森林破壊が起きています。
このため成長が早く素材としても丈夫な大麻繊維が注目されています。スロベニアからは、都会的なクールさを兼ね備えたヘンプ性スケートボード・ブランドRolkaz Collectiveが誕生しました。 https://rolkaz.co/#slide-1
環境に優しい自転車をさらにエコにする
欧州の中でも大麻産業が盛んなことで知られるオランダでは、ヘンプ製自転車やヘンプ電気自転車なども登場しています。
通常プラスチックや金属が使われるパーツに、麻ベースのバイオプラスチックが使用されているのが特徴です。麻を使うことで再利用できないパーツを減らし、加工時の高温処理に使われるエネルギーを削減し、トライアスロン競技にも耐えるほどの強度も実現できています。
麻や竹などの天然素材から作られる生分解性プラスチックは、微生物の働きによって最終的には水と二酸化炭素にまで分解されるため、増え続けるゴミ問題や土壌汚染を軽減することができると言われています。
ファッションとフィットネスにも
健康のため、リフレッシュのためにヨガスタジオに通う人が増えています。これらのヨガグッズにもヘンプを取り入れてみるのはいかがでしょうか。例えばヨガマットやヨガマットを運ぶためのバッグ。美しい風合いのヨガウェアなどもあります。
私たちの生活に欠かせないスニーカーも、石油由来の素材がたくさん使われています。このため代替素材としてヘンプ由来のアッパーや土に還るソールを取り入れたスタイリッシュなブランドが登場しています。
ミリタリーやワークテイストを取り入れたイギリスの老舗ブランド「マハリシ」でも、ヘンプ・ブレンドの和テイストを感じさせるジャケットを発売しています。
サプリで取り入れる
ヘンプは薬草として使われてきた歴史もあるほど、様々な薬効成分が含まれています。
中でもテルペンやカンナビノイドと呼ばれる成分は、人体に様々な栄養をもたらすことが知られており、医療利用のため世界中で研究が行われています。
私たちが普段取り入れやすいのは、リラックス効果や痛みや炎症の緩和、安眠効果があるという成分CBD入りのサプリメントやクリーム、ドリンクなどです。
ストレスを感じやすい忙しい毎日のルーティンにこれらのサプリを取り入れて心身のバランスを整えてみましょう。
まとめ
ヘンプに限らず、現在は天然素材を加工し石油由来のアイテムに置き換える技術が進歩しています。現在はヘンプ生活の究極型ともいえる、へンプ素材で作られた究極のエコ・ハウスも登場。
知れば知るほど万能で、その魅力の虜になってしまう麻。気になるアイテムを取り入れてとことん使い倒すことで、麻の持つ底力と魅力を味わってみてはいかがでしょうか。
参考資料