米国ジョージア州に本拠地を置き、世界各国でチェーン展開するピザレストラン「パパ・ジョンズ」。イギリス店舗で人気のヘンプシードを使ったメニューを発売し、話題になっています。
注目のスーパーフード「ヘンプシード」とは
近年スーパーフードとして注目が高まっているヘンプシード。産業用大麻の種を食用にしたもので、必須アミノ酸が豊富で、必須脂肪酸のオメガ6とオメガ3をバランスよく含んでいます。
日本でも麻の実(=おのみ)として七味唐辛子にブランドされていたり、漢方でも整腸剤として使われていたり、昔から馴染みの深い食材です。近年注目を浴びているのは、ヘンプの持つ様々なパワーが知られるようになり、産業用ヘンプの栽培がより多くの国で合法となっているため。大豆やナッツ、小麦のようにアレルギーを起こす人が少なく、味にクセもないため受け入れられやすいことも人気の一因となっています。また豆乳やオートミルクのようにヘンプシードを原料にした植物性ミルク、ヘンプミルクもビーガン食の流行によって市民権を得ています。
あえて「ハイ」を強調?!
人気の米ピザチェーン「パパ・ジョンズ」は、イギリスとロシア限定でヘンプシードをまぶしたピザ生地を使った新メニュー「ヘンプスティック」を発売して話題となっています。
ヘンプ=マリファナ喫煙をイメージし、ネガティブなイメージを抱く人もいる現状を逆手に取り「Hemp is HIGH in protein,vitamins and other nutrients(=ヘンプはプロテイン、ビタミン類ほか栄養素が豊富です)」と、あえて「ハイ」という言葉を使った商品コピーで注目を集めました。
もちろん実際には産業用のヘンプシードを食べて気分が高揚する、いわゆる「ハイ」状態になることはありません。あんパンについているケシの実を食べてもアヘン中毒になることがないのと同じで、産業用ヘンプに含まれる精神作用を引き起こす成分THCは0.3%以下とごく微量のため健康に害を及ぼすことはありません。
大手参入でヘンプへの誤解を払拭できるかも
パパ・ジョンズのヘンプシティックはガーリック風味がきいたピザ生地を使用し、見た目はガーリックブレッドそっくり。ヘンプシードをまぶすことでクランチ感と栄養価がアップしています。イギリス版ではガーリック・ブレッドタイプのほかにもモッツァレラチーズをのせたタイプも追加され、よりボリューム感が加わりました。
経営陣のジョー・ブランデル氏は、同チェーンがヘンプをメニューに加えた最初の世界的ファストフード・ブランドとなること、そしてこのメニューによってヘンプシードにまつわる誤解を払拭できることを期待しているとコメントしています。
小麦粉の代わりにも
ヘンプシードはグリーンがかった殻付きのままでも、殻を取り除いた中身だけでもおいしく食べることもできます。またヘンプシードを挽くことで小麦粉にそっくりのヘンプフラワー(大麻種子粉)を作ることができ、小麦粉を使った食品でグルテンアレルギーを起こしてしまう人のためにも利用されています。またこのヘンプ粉は、ベジタリアンの人向けのプロテインパウダーとしても使われています。
栄養面においてもタンパク質、脂肪、マグネシウム、ビタミン類が豊富なヘンプシードは優秀で、ココナツフラワーや米粉、アーモンドフラワーなどと同様、小麦粉に変わる代替食材としても重宝されています。
農薬や化学肥料をほとんど必要としない丈夫なヘンプは、環境にも体に優しい作物です。成長も早いため年に何回も収穫できることから、未来の食料供給のために欠かせない作物になると言われています。
食料にもプラスチックにもなる?
ヘンプは食べるだけでなく、繊維を加工して衣服の材料にしたり、さらに加工することで生分解性のプラスチックを作り出したり、バイオ燃料を作ったりと、石油に代わるサステナブルな産業品としても活躍しています。ヘンプ繊維は加工の方法によっては金属に負けない強度を持っているため、古代には武具や鎧として利用され、現在では自動車のパネルなどにも使用されています。自動車会社フォード・モーターの創設者であり、アメリカ自動車工業の父といわれたヘンリー・フォードも、ヘンプ繊維で作られた車を開発しています。
またヘンプ植物からはカンナビノイドとよばれる生理活性成分が100種類以上も見つかっており、医薬品やウェルネス業界でも活用されています。特に知られているのは健康効果の高く副作用の心配がない安心して使えるCBD(カンナビジオール)。リラックスや安眠効果があるほか、体の痛みや皮膚や筋肉の炎症を緩和したり美肌効果があることで、様々なサプリメントやコスメが開発されています。
市販のCBDオイルは健康サプリとしてじわじわと人気を高めています。これは大麻草の中からCBDを抽出し、キャリアオイルにブレンドしたもの。ヘンプシードを絞って作るヘンプオイルとは似て異なる製品です。ヘンプオイルはオリーブオイルのような感覚で料理に使うことができるほか、保湿効果が高いため肌に塗ったりコスメに配合して使うことができます。
まとめ
産業利用から健康分野まで万能に役立つヘンプ。しかも美味しいとあればぜひ試してみたくなります。現在は限定発売ですが、近いうちに近所のピザチェーンやパン屋さんでもヘンプシードを使った美味しくヘルシーなピザやパンが手に入るようになるのかもしれないですね。
<参考資料>