世界的に有名な麻ブランドOG DNAジェネティクスが、2021年1月に米カリフォルニアの高品質のスターター麻プラント生産を専門とするメリステマティック社とのパートナーシップ契約を発表しました。この提携で今後どのような動きが生まれるのでしょうか。
遺伝学に強いDNAジェネティクス
DNA ジェネティクス社は米国ロサンゼルスにルーツをもち、2004年にアムステルダムで設立された大麻ブランド。遺伝学を駆使した品種改良で麻業界へ大きく貢献し、世界の権威のあるイベントや見本市で200以上の賞を受賞している良質ブランドです。アメリカのマリファナ老舗雑誌「HIGH TIMES(ハイタイムズ)」での評価も非常に高く、シードバンクの殿堂入りを果たしています。
2015年には同社はカナダのキャノピー・グロウス社と独占ライセンスおよびパートナーシップ契約を結んで遺伝子ライブラリー開発を支援し、DNAブランドの製品をカナダの医療患者に販売できるようにしました。またキャノピーの子会社トウィードにもコンサルティングを提供。麻業界への取り組みと影響力が認められ、この年の終わりには「ハイタイムズ・トレイルブレイザー(※)・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。
また2019年からは米国でのライセンス取得を開始し、1933 Industries Good Meds、Copperstate Farms、Revolutionaryクリニック、Halo Labs、Green Peaks、BopheloPartnersなど様々な大麻メーカーと提携を結んでいます。
※「トレイルブレイザー(trailblazer)」とは、ある分野の開拓者・先駆者としてイノベーションを行う人々・組織のこと。
クリーンな母株生産に長けたメリステマティック社
一方のメリステマティック社は、2016年初めに米国の大麻カルチャーのメッカ、カリフォルニア州サンフランシスコで設立。麻および麻産業向けの高品質スタータープラントの組織培養生産を専門としています。 人為的にコントロールされた環境で 茎端、芽、分裂組織細胞のような外植片からたくさんの植物を生産する「マイクロプロパゲーション技術」や、最新の農業手法を用いて、クオリティを一定に保った病原菌を持たない高品質な麻母株を生産しています。
メリステマティック社の開発した「クリーン・カルティヴァー・プログラム生産法」では、まるでSF映画のような独自の組織培養プロセスを使用して、母植物を若返らせると同時に、分子技術を使用して病気や害虫を徹底的に除去します。その後このクリーンな母株を使用して、クローン生産によって良質株が大量生産できるようになります。また大麻ブランドはこのプログラムを導入することで、組織培養のためのラボ建設や研修スタッフを雇ったりすることなく、最新の組織培養テクノロジーの恩恵を受けることができます。つまりコストを大幅に抑えてより高品質の製品を作ることができるようになるのです。
2社が手を組むことで、害虫や病気に強い、高品質カンナビスを安定生産できるようになることが期待されてます。
ラボ大麻の利点
現在農業界で研究の進むマイクロプロパゲーション技術の大きな利点は以下の2つ。
- すぐれた性質をもつ作物を、短期間に殖やすことができる。
- 生育がそろうことで管理もしやすく、 生産性アップや売上増につながる。
安定品質の大麻生産が可能になれば、メーカー側だけでなく医療やサプリ的利用者、嗜好利用者にも大きなメリットがもたらされます。特に医療や臨床試験の現場では、品質の安定した株が得られることがとても重要になります。
現在、全ての産業作物買いにおいて、現在アグリテック(アグリカルチャー+テクノロジー)と呼ばれる、バイオ&IT 技術を導入した農業が盛んです。特に温度や光、水の量など高度に管理された屋内環境で植物を縦に積み重ね、太陽光の代わりにLED照明を使用して農業を行う屋内垂直農場(バーティカル・ファーム)は都市型農園として注目を浴び、欧米ではスーパーマーケットに垂直農場を設置して、とれたてのハーブやサラダ菜などを販売する店舗も登場しました。設備によってはほぼ完全無人化できるため、アグリテックは食糧危機問題などにも役立つ現在ホットな最先端分野です。
アグリテックの未来
麻は背の高い作物のため、垂直農業にはそれほど向きませんが、元々丈夫な作物でなため、屋外で、ドローン管理で育てる大規模栽培が米国ほかでスタート済みです。
麻生産に転向して日の浅い農家にも安心な、ドローン技術で生産管理をカバーするアグリテック技術。これによって農家は時間とコストを節約し、収穫を最適化できるようになります。日本でも農業ドローンを駆使して品質向上を実現した「スマート米」などを耳にした方も多いかもしれません。
麻生産に農業ドローンを導入することで、以下のようなことが可能になります。
濃度が低下する前に収穫し利益を最大限にする。
- 土壌サンプルを採取・分析し、カビや病気の発生をいち早く察知。必要に応じて農薬や肥料散布も自動化。
- 品種や生育エリアに特化したケアを行う。
米国のように大規模農業が盛んな国では、作物の種類にかかわらずドローン管理はもはや欠かせないツールになってきているようです。
遺伝子組み換え・クローン技術の他にも、ITテクノロジーによる外部からの管理によっても農業全体が大きく変わってきているのです。
環境にも生産者にも優しく、消費者が喜ぶ。そんなwin-winの状態を目指すアグリテックがヘ麻業界でも活躍中です。ラボ技術のさらなる普及で麻製品がより身近になることを願いたいものです。
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<参考資料>
OG DNAジェネティクス社
https://www.dnagenetics.eu/seeds/the-og-18.html
メリステマティック社
https://www.meristematic.com/home
ドローン農業参考
https://www.precisionhawk.com/agriculture/crops/hemp