ここ2,3年、日本を襲う台風や豪雨災害の激甚化を体験すると、「気候変動や地球温暖化のせい?」とか「このままで、地球は大丈夫だろうか?」と不安な気持ちになります。
日々、人類が出し続けている二酸化炭素などによる環境汚染や地球資源の枯渇などが、絵空事や遠い未来の話ではないということをひしひしと感じるようになりました。
今、ここで何らかの手を打たないと、「地球は持たないのでは?」と警鐘をならす科学者も多いです。そんな地球の危機的状況を救うかもしれない一つの答えが、「麻」だと言われています。
サスティナビリティとは?
サスティナブル(=sustainable)やサスティナビリティ(=sustainability)とは、もともと、「維持できる(こと)」「持ちこたえられる(こと)」という意味で、そこから、最近では、主に地球環境の持続可能なこと(持続可能性)として使われることが多くなりました。
私たち人類が、今までのように、資源を勝手気ままに、好き放題に使ったり、汚染物質を放出したら、地球が持たないので、地球のために、環境を守ることと経済の発展のベストな兼ね合いを探りましょうということです。
サスティナブルな素材として注目される麻
環境意識の高い人たちの間で、天然素材というのは一つのキーワードです。天然素材の代表選手、コットンは、環境にも、私たちの体にもやさしいというイメージがあります。
ところが、綿花栽培には、多くの農薬や水が使われています。農地全体の1%に過ぎない綿花栽培で、農薬使用量の10%が使われているという事実はあまり知られていません。
一方、最近、サスティナブルな素材として麻が、脚光を浴びています。なぜ、麻がサスティナブルなのでしょうか?
麻は、痩せた土地でも栽培できる
麻は、太古の昔から、世界中で育てられてきました。日本でも、麻の栽培は、縄文時代に遡ります。
麻は、痩せた土地でも育ち、そのうえ、痩せた土地に麻を植えることによって、土壌を改良することができると期待されています。
麻は、そのほとんどを利用することができる
麻は、あらゆる部位を活用することができます。茎の皮は繊維として、葉は医療品や飼料・肥料に、種子は食用に、根は土壌改良などに利用できます。
そのうえ、樹木などに比べると、4倍のスピードで成長するので、紙の原料としても注目されています。
貧困対策に効果的
麻は、比較的環境が厳しいところでも栽培が可能なので、アフリカなどの貧困国で、麻栽培を行うことによって、産業の創出、経済的自立、貧困からの脱出が期待できます。
繊維としての麻が、サスティナブルな理由
麻は、人類最古の繊維と言われ、日本でも、縄文時代から利用されていたことが、遺跡などからわかっています。
日本では、麻は重要な農作物でしたが、第二次世界大戦後、GHQによって、麻の栽培が禁止されました。さらに、化学繊維の登場で、「麻は、しわになりやすい」「扱いにくい」などと麻の利用が急減しました。
ところが、最近、おしゃれ感度が高い人たちの間では、麻やリネンはとても注目されています。なぜでしょう?
麻は、オールシーズン活躍する素材
麻のシャリシャリした肌触りは、汗ばんでもべたべたせず、暑く、湿気の多い日本にはピッタリと考えられてきました。麻といえば、夏用素材というイメージだったかもしれません。
ところが、吸水発散性や通気性などの麻の特徴は、すぐれた温度調節や熱伝導性で、夏は涼しく、冬は暖かく感じられ、オールシーズン大活躍する素材だったのです。
麻は、長く愛用できる素材
麻は、天然繊維の中でももっとも高い強度を持ち、水にも強い性質を持っています。長く愛用すればするだけ、ソフトでしなやかな風合いへと変化します。
麻は、丈夫で長持ちするので、きちんとケアすれば、変化を楽しみながら、長く愛用できる素材といえます。
ファストファッション全盛の今、使い捨てず、長く愛用できる麻は、とてもサスティナブルな繊維だと言えます。
ヨーロッパなどでは、リネンのシーツやナプキンなどを大切に代々伝えています。今こそ、使い捨てない、サスティナブルな暮らし方をしたいですね。
麻の活用で、環境負荷の少ないプラスチックも!
プラスチックとサスティナブル、プラスチックと麻って、対極にあるような気がしますが、技術の進歩はすごいです!今や、麻(ヘンプ)からプラスチックを作る試みが、世界各地で行われています。
ヘンプを活用したプラスチックをヘンププラスチックと言います。ヘンプ100%のものだけでなく、麻の繊維や、繊維を取ったあとの苧殻(おがら)や、種子から採れるヘンプオイルを原料とし、そこにさまざまな樹脂や充てん剤を加えた合成樹脂のことをいいます。
そのなかでも、よく知られているのが、プラスチックの強化剤として使われるグラスファイバーの代わりに、亜麻やヘンプなどの天然繊維をプラスチックの強化剤として加えたプラスチックです。
実際に、ドイツの自動車メーカーBMWでは、ヘンプ繊維を強化剤として加えたヘンププラスチックが、BMW車のドアパネルとして使われています。
ヘンププラスチックがサスティナブルとされる特徴は、以下の通りです。
- グラスファイバーを強化剤としたものより、5~20%軽い
- グラスファイバーを強化剤としたものより低コスト
- 植物由来、高いリサイクル性、低製造エネルギーなど環境負荷が低い
麻とプラスチックというように、今までは考えも及ばなかったことが、技術の進歩によって実現しています。まさに、麻とプラスチックの夢のコラボです。さらなる進歩が期待されます!
まとめ
麻といえば、繊維製品、衣料品というイメージが強いかもしれませんが、それだけにとどまらず、さまざまな方面に、麻の可能性、サスティナビリティを広げています。
太古の昔から、私たち人類のそばで活躍してきた麻ですが、未来も、私たちの傍らで、私たちを手助けしてくれることでしょう。
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情報引用元
What’s Sustainability?:https://www.daiwahouse.com/sustainable/sustainable_journey/about/
綿花と農薬:http://yokoushijima.com/column/z_diary/unnatural/
麻がサスティナブルな理由:https://cannabees.shop/news/371/
麻は世界一サステナブルな最強天然繊維:https://www.elle.com/jp/fashion/fashion-column/a33228931/linen-history/
ヘンププラスチック:http://www.hemp-revo.net/report/0604.htm