石油などの燃料資源の枯渇や、それらが引き起こす地球温暖化などの危機が、日々現実的に我々に迫ってきています。
太陽光発電、風力発電、バイオマス燃料など化石燃料に代わる代替エネルギーが、開発、進展していますが、最近、注目されているのが、サスティナブルなエネルギーとしての麻です。
ここでは、麻が、なぜ、サスティナブルなエネルギーとして期待されるのか、ご紹介します。
エネルギー作物として注目を集める麻!
日本人は、古来より麻を大いに活用してきました。衣料として、食料として。ところが、最近、世界中で、麻がエネルギー作物として見直されてきています。
麻は、成長が早く、数か月で数mの高さに達します。また、荒れ果てたり、放射能で汚染された土地でも育てることができ、そのうえ、麻を植えると、土壌改良もできます。
農薬や化学肥料が不要で、不毛の地でも収量が多く、南極大陸やグリーンランド以外ならどこででも育てることができます。
あらゆる部分を活用できる麻は、脱化石燃料として注目されています。
麻から燃料を取り出す!
麻は、あらゆる部位が活用されてきました。エネルギー作物としても、実や茎が利用できます。
麻の実
麻の実は、七味唐辛子の中に入っている大きな粒としてご存じの方も多いかもしれません。麻の実には、じつに30%の油分が含まれています。麻の実から麻の実油を抽出して活用してきました。最近では、スーパーフードとして、ヘンプオイル(麻の実油)が注目されています。
麻の実を燃料化するためには、3つの方法があります。
- 麻の実油をそのまま利用
- メタノールを加え、軽油に近い状態に加工
- 水素を添加し、硬化油とする
麻の茎(=麻幹 オガラ)
お盆の迎え火にオガラを燃やす風習がある地域があります。よく燃えるので、祭りの松明などにもオガラはよく使われます。
- そのまま燃やす
- 炭にする 麻の炭は、昔から爆発力が大きいことが知られています。
- ペレット燃料とする
- アルコール発酵をさせて、バイオエタノールとする
- ガス化して合成液体燃料(BTL)にする
- オガラを燃やしタービンを回すことによって発電
- メタン発酵させて、メタンガスを作る(研究段階)
以上のように、麻の活用範囲は多岐にわたります。世界では、研究開発がどんどん進められています。
石油資源に代わるエネルギーとして!
環境にやさしいエネルギーとして、一時、菜種油が脚光を浴びました。今、最も注目を集めているのが、麻を利用したものです。
バイオエタノール
バイオエタノールとは、トウモロコシやサトウキビ等の植物由来の資源から作られるアルコールのことで、バイオマスを発酵、蒸留することで作ります。枯渇の心配がない再生可能エネルギーとして注目されています。
ブラジルでは、世界に先行して、サトウキビからバイオエタノールを作る試みを成功させましたが、熱帯雨林の大量伐採、食糧不足などという副作用を生み出しため、サスティナブルなエネルギーとはなりませんでした。
サトウキビと同じことが、麻でもできることが研究によって確かめられています。オガラは、主にセルロースと呼ばれる多糖類で構成されているため、これをアルコール発酵させると、エタノールになります。
麻は、成長が早い、荒廃地でも育つ、麻を植えると土壌改良になるなど、サトウキビ以上のメリットも持っています。
ガス化
ガス化とは、麻のバイオマスを粉砕し、高温に晒すことによって、水素、二酸化炭素、メタンに変換することを言います。
このように、麻などの有機物をガス化する技術を、ガス化技術(orガス合成技術=BTL)といい、価値の低い未利用資源を高付加価値のエネルギー製品に変換できます。
ガス化して触媒を通じて合成液体燃料を作ります。主に軽油ができますが、触媒を変えれば、灯油、重油、ガソリンなどもできます。
水素
麻などのバイオマスを粉砕して、高温に晒すことによって、水素、二酸化炭素、メタンなどに変換しますが、その水素をバスや電車に電力を供給する燃料電池用として利用します。
フランスの企業が、2022年には、本格的な生産を開始する予定とのことで、将来的に期待が持てます。
3Dプリンターに麻原料フィラメント
言うまでもなく、3Dプリンターとは、3次元的なデジタルモデルを基にして、現実の物体を作り出すことができる機械のことで、一般のプリンターのインクにあたるものが、フィラメントという細長い糸状の材料です。
フィラメントは、合成樹脂の熱可塑性樹脂と呼ばれる、熱を加えると柔らかくなり、冷やすと固まるものです。いろいろな種類のフィラメントがありますが、麻の木質部分の微粒子をポリ乳酸と複合させたものもあります。
麻原料フィラメントは、軽量で丈夫なうえ、コンポスターに入れておけば、2週間で分解が始まるという優れものです。
まとめ
この記事では、「麻のサスティナビリティ その2」として、エネルギーを中心とした麻に期待されることをまとめました。
麻ができることをまとめていると、私たち人類の将来は、麻の利用に大いにかかっているということがわかりました。
人類最古の栽培作物である麻は、将来も人類とともにあり続けてくれることでしょう。
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引用情報元
麻はエネルギー作物:https://www.ooasa.jp/know/index.php?fuel
麻でバイオエタノール:https://ameblo.jp/karadaniaiwo/entry-10882557133.html