2018年12月、タイで医療大麻の使用を認める法律の改正が、国会で承認されました。東南アジアでの大麻合法化として初のケースになります。あくまで研究や医療での用途を目的とした医療大麻に限っての話ですが、大麻を法律で厳しく禁じる傾向が強いアジアにおいて、タイでの医療大麻合法化はとても大きな動きといえるでしょう。
アジアでなかなか進展しない大麻への理解や研究に、この出来事は果たしてどのような影響を与えるでしょうか
アジアで大麻を合法化している国々
歴史や文化の違いから、大麻はアジア諸国において西欧各国よりも大麻にネガティブな印象が持たれている傾向があります。日本はとくにそれが顕著で、現在の法律や制度では、医療を目的とした大麻研究すら実行できないのは皆さんご存知の通り。
そうした中、アジアでも大麻を合法化していたり、文化として受け入れられていたりする国があります。たとえばインドが典型的なケースで、大麻は1985年に施行された「麻薬・向精神物質法(Narcotic Drug and Psychotropic Substances Act of 1985)によって取り締まられているにもかかわらず、大麻の使用が実質的に容認されている州があります。米国など欧米では大麻を規制しているにもかかわらず、一般的に広く愛好されているのと似た構図かもしれません。つまりそれだけ大麻への理解が深く、寛容である文化や国民性があります。さらにインドの場合、宗教的な文化が背景にあり、大麻は何千年も前から嗜好品として日常的に使われてきました。
インドのほか、意外にも最近では韓国でも大麻が市民権を得てきています。韓国では2019年11月に医療大麻が合法化され、HIVやがん、てんかんなどさまざまな病気の治療に、大麻に由来する医薬品を使うことができます。
一方、嗜好品としての大麻はいまだ厳しく規制されている現実もあります。
インドは大麻が習慣として根付いているというだけで、大麻が合法化されているわけではありません。つまりアジアで大麻が合法化されているのは、実質的に韓国とタイだけなのです。
大麻にかんするタイの法律
タイで大麻合法化の法律改正が国会で承認されたのは、2018年12月のこと。タイの国王であるラーマ10世の署名により、これが正式に認められ合法化されたのが、翌年2月18日のことです。これにより、タイ国内で医療と研究を目的として大麻を使用できるようになりました。
これは東南アジアで初のケースであり、あまつさえ薬物に厳しい罰則(場合によっては死刑になることも)を設けているタイが、東南アジアをけん引する形で思い切った法律改正に踏み切った事実は、アジア各国の今後の動きに少なからず影響を与えそうです。
もちろん、医療大麻の使用が認められても嗜好大麻はいまだ厳しく規制されており、たとえ医療・研究目的であっても、大麻の栽培はタイ麻薬管理委員会の管理下でなければ許可されないなど、厳しく管理されています。
医療大麻合法化に対するタイ国民の反応
タイはこれまで大麻を厳しく取り締まってきましたが、実はインドと同様に、一部では生活習慣として嗜好品文化が根付いています。
たとえば精神作用があるといわれている植物クラトム(別名ミトラガイナ)を嗜む習慣がありますし、水パイプを楽しむ習慣もあります。こうした背景から国民は大麻を抵抗なく受け入れることができるのでしょう。それどころか大麻の医療研究の進展に伴い、医療大麻の有用性や可能性が公の場で語られる機会はどんどん増えてきました。
タイ政府の医療大麻に対する関心も高く、これまで押収後に焼却処分されていた大量の大麻草が、2018年には研究用材料として医療専門家に譲渡されました。法律改正後、早々にして状況が大きく変化したことを物語っています。
アジア各国がタイにどう続くか
現在、薬物にかんする社会的な問題を抱えるラオスやカンボジア、その他ミャンマーやベトナム、フィリピンなどにおいても、大麻への関心が高まっています。タイに続き自国でも大麻合法化を検討することをすでに表明している首相などもおり、今後はアジアでも大麻合法化の動きが加速していくことが予想されます。
欧米をはじめ、アジアもそれに追従する形で、いま世界的に医療大麻の可能性が注目されています。まさに時代の大きな節目にあるといえるでしょう。
まとめ
タイでの医療大麻合法化は、今後のアジアでの大麻にかんする法律改正に影響を及ぼすでしょう。これまでの世界の動きを見ると、大麻合法化に向けてはまず医療大麻が承認され、それに続いて思考大麻が規制緩和されるという流れが主です。日本が医療大麻の研究や導入を検討する際も、同様の流れでまず医療大麻の是非が議論されることが予想されます。
とはいえ、日本が世界をはじめアジアにおいても、大麻カルチャーに大きな後れをとっているのは紛れもない事実です。
病に苦しむ人やストレスにさらされている人など、現代社会で多くの問題を抱える人々の幸福と健康、権利を尊重するために、少しでも早く医療大麻の可能性が日本国内において認められる日が訪れるのを願うばかりです。
合わせて読みたい記事はこちら↓
情報引用元(参考文献、URL、URKページ タイトル記載)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/05/3c7f8ae199c67d3b.html
https://www.afpbb.com/articles/-/3262414