
最新の世論調査によると、アメリカ人の多くはお酒がマリファナより有害だと考えていることがわかりました。
アルコールVS大麻で揺れるアメリカ
近年、大麻草(ヘンプ)由来の成分が、医療分野や健康食品として多様な用途で活用されています。このためか大麻の規制緩和が急速に進んだアメリカでは、「個人的には使ってはいないけれど、大麻に対して寛容」という人が増えているようです。またヘンプに含まれるCBDやTHCといった成分にはリラックス効果があるため、「お酒の代わりにヘンプ製品を楽しむ」という人も増えています。
最新の世論調査では アメリカ人の多くがアルコールは大麻よりも健康に悪いと感じているそう。それでも、健康リスクがあるにもかかわらず、大麻を摂取するよりお酒を飲むこと答える成人が大多数です。
しかし健康への影響を考えるとき、大麻とアルコールはどう違うのでしょうか?イメージや慣れだけでなく、実際のリスクや作用についてあらためて整理してみましょう。
※アメリカでは、ヘンプ成分として親しまれている大麻由来のCBD(カンナビジオール)とTHC(テトラヒドロカンナビノール)に対する法規制は州によって大きく異なります。一般的にCBDは比較的寛容に扱われていますが、精神作用のあるTHCについては、規制されている州も存在します。大麻そのものについても、嗜好用・医療用ともに合法な州、特定の疾患や症状を持つ患者に対してのみ医療用大麻が許可されている州、そして依然として規制対象となっている州が混在しています。

CBDとTHCの違いって?
CBDとTHCは、どちらも大麻草に含まれる代表的な成分ですが、その働きには大きな違いがあります。CBDは、精神に大きな影響を与えず、リラックス効果や抗炎症作用など、健康に良い効果が注目されています。多くの国、特に日本では、THCを含まないCBD製品は合法的に販売されており、健康志向の製品として人気があります。
一方で、THCは病気の治療にも役立つ優れた効果があるものの、酔っ払ったような精神的な作用、いわゆる「ハイ」な状態を引き起こすことで知られています。そのため、多くの国ではTHCに対する規制が厳しく、医療用途での研究は進んでいるものの、規制がまだ追いついていないのが現状です。
また多くの研究によってCBDやTHCがモルヒネなどのオピオイド系鎮痛剤の代替として、比較的安全な選択肢になる可能性があることが示されています。研究や実用化が進めば、これらの危険な鎮痛剤の代替薬として役立つ可能性もあります。
データが語る、大麻とアルコールのいま。
お酒と大麻製品について市場調査会社Yougovが2万人近くのアメリカ人を対象にした世論調査では、58%のアメリカ人が「アルコールの方が大麻よりも健康に有害だ」と回答しています。つまりアルコールのほうが有害と考える人は、半数以上に上ったのです。
また、一般にリベラルとされる民主党支持者や無党派層ではその傾向が顕著で、「大麻のほうが有害だ」と答えた人は少数派でした。一方で共和党支持者のあいだでは、アルコールの有害性を強く認識している人は、他の層に比べて少なかったのです。
健康リスクのとらえ方にエビデンスよりも政治的なスタンスが影響している可能性があるのかもしれない… 数字を見ながら、ちょっと立ち止まって考えてみたくなる結果です。
このように意識に大きな違いがある一方で、成人の27%が「大麻よりアルコールを飲むことを楽しむ」と答え、13%が大麻を好むと回答。両方を同じように楽しんでいると答えたのは5%、約半数の48%はどちらも楽しんでいないと回答しています。
「体に悪い」と思っていても、やっぱり選ばれているのはアルコール。規制の度合いも違うため簡単に比較することは難しいですが、健康リスクの認識と人々の行動にはズレがあるようです。

メリットとデメリットを比較してみる
合法化や違法性の議論はひとまずおいて、お酒と大麻、さらに大麻由来の成分について、それぞれのメリットとデメリットを比べてみましょう。
まずお酒(アルコール)には、リラックスできるという大きな魅力があります。ほどよく酔いが回ることで不安やストレスも和らぎ、社交の場でも気分よく過ごせます。一方で、飲み過ぎると肝臓に負担がかかって、長い目で見ると依存症や生活習慣病のリスクが高くなります。
一方、大麻と大麻由来の製品にもリラックス効果や不安・ストレスの軽減に役立ち、痛みを和らげたり、睡眠の質を改善してくれることがあります。しかし、使い過ぎると、特に記憶力や集中力に悪影響を及ぼす可能性があります。大麻を喫煙する場合は、肺がんのリスクも忘れてはなりません。また副作用のほとんど見られないCBD(カンナビジオール)に対し、THC(テトラヒドロカンナビノール)は精神作用があり、判断力が鈍ることがあるため、お酒と同じく運転は絶対に避けるべきです。またCBDに関しては運転能力には影響がなく、飲酒のような二日酔いのリスクもほぼありません。
大麻の合法化が進んでいる今、これらのメリットとデメリットをどう受け止めるか、政府も個人も真剣に考えるべき時が来ているのかもしれません。
変わりゆくドリンクのトレンド
このように、じわじわと変わり始めている飲酒文化。大麻を使用する人より飲酒する人の方が圧倒的に多いものの、頻繁に飲む人の数は減少しています。そして大麻の合法化が進む中で、アルコールの代わりに大麻成分をブレンドした飲料を選ぶ若い層も増えてきました。副作用なくリラックスや安眠をもたらしてくれるCBDに関しては、医療回やサプリ業界で健康に役立つというイメージが定着し「より健康的な選択肢」として定着しています。ある研究では、毎日アルコールを飲む成人よりも、大麻を毎日使う成人の方が多いこともわかっています。
こうした変化は、これまで盤石と思われていたアルコール業界にも、少しずつ影響を与え始めています。つまり、大麻が単なる嗜好品としてだけでなく、「お酒の代わり」という新たな選択肢として認識され始めているのです。アメリカではすでに、ノンアルコールビールやコンブチャ、アイスティーなどに大麻成分をブレンドした革新的な飲料が続々と登場しています。
アルコールによる酔いではなく、大麻由来の成分で心身を心地よく「ととのえる」という新しい感覚。
新製品のトレンドが生活スタイルや嗜好の変化を反映しているとすれば、これまで当たり前だった「一杯どう?」の選択肢も、近い将来少しずつ変わっていくのかもしれません。
<参考資料>
https://www.marijuanamoment.net/majority-of-americans-say-alcohol-is-more-harmful-than-marijuana-poll-finds