はじめに
みなさん日常的に牛乳を使用していますよね。使用していないにしても、牛乳を使用した製品を口のしているはずです。他には、最近では、アーモンドミルクもスーパーマーケットで目にします。豆乳などで代替する機会が増えてきました。これまでは、健康面(よりよい健康状態、およびアレルギー)を考慮して購入するひとも多いのではないでしょうか。日本語にすると少しややこしいので、この記事では乳牛から得られたものを牛乳、その他をミルクと定義します。今回はこれらの植物性ミルクが環境問題に対してどういった効果があるのかみていきましょう。
環境と乳製品
乳製品は、牛肉同様に環境への影響が最も大きい製品です。その問題は3点あります:
- 牛から出されるメタンガス量
- 土地の占有量
- 水の使用率
牛(肉牛、乳牛ともに)の消化のためにたくさんのメタンガスや二酸化炭素を発生しています。その量は1日150-300 L(年間で約75 kg)と言われており[1]、メタンガスや二酸化炭素は温室効果ガスとして知られています。豆やナッツなどの種から作られた植物性のミルクであれば、温室効果ガスの排出量や水や土地の使用量に関しては、牛乳よりも環境に優しいです。2018年の研究では、乳製品は植物性の牛乳に比べて温室効果ガスの排出量が約3倍多いと推定されています[2]。牛乳の場合、その地球温暖化係数[3]を牛乳1リットルあたりの二酸化炭素[kg]として測定すると、オーストラリアとニュージーランドでは1.14からアフリカでは2.50の間で変動しています。これを植物由来の牛乳の地球温暖化係数と比較すると、アーモンドミルクとココナッツミルクは平均0.42、豆乳は0.75です。
さらに、乳製品は一般的に、植物性乳製品に比べて9倍の土地を必要とします。牛乳1リットル当たりの年間使用面積は8.9平方メートルですが、オートミルミルクでは0.8平方メートル、豆乳では0.7平方メートル、アーモンドミルクでは0.5平方メートル、ライスミルクでは0.3平方メートルとなっています。
水の使用量も同様に牛乳の方が多く、乳製品1リットルあたり628リットルの水を使用しているのに対し、アーモンドは371、米は270、オート麦は48、豆乳は28です。
このように植物性のミルクを製作するほうが環境への負荷が非常にするくないということがわかります。
ナッツミルク
ミルクはほとんどのナッツから作ることができますが、アーモンド、ヘーゼルナッツ、ココナッツが人気を集めています。ナッツミルクは、一般的に土地面積が狭いだけでなく、ナッツの木が炭素を吸収し、寿命が尽きると有用な木質バイオマスを生産します。
しかし、様々なナッツの木が栽培されている地理的条件には大きな違いがあります。
アーモンドミルク
カリフォルニア州は世界最大のアーモンドミルク生産国で、オーストラリアがそれに続きます。他の植物性ミルクに比べて水の使用量が多く、主に淡水の灌漑に依存している。カリフォルニア州のアーモンド1粒には12リットルの水が必要であり、水不足の地域でのアーモンドの工業生産に疑問を投げかけています。
しかし、アメリカでのアーモンド生産における最大の環境問題は、木の交配に使われるミツバチの死亡率の高さです。これは、ミツバチが殺虫剤にさらされることが原因と考えられます。
ココナッツミルク
一般的にココナッツミルクは、ココナッツの木が少量の水を使い、二酸化炭素を吸収するという環境性能が良いとされています。しかし、ココナッツは熱帯地域でしか栽培されていないため、このミルクの工業生産は野生動物の生息地を破壊する可能性があります。しかし、環境面での大きな懸念は、大豆を栽培するために在来の植生の大部分を伐採し、転換する必要があることです。食肉や動物性食品の需要が全体的に減少すれば、飼料用の大豆を大量に生産する必要性が減る可能性があります。
環境に優しいのはヘンプミルク
ヘンプミルクの環境面での利点は、地域や環境を選ばず育てられるというヘンプの特徴です。根が深く伸びるので、土壌の構造が改善され、菌類の存在を減らすことができます。また、病気にも強く、日陰を多く作り、雑草の成長を抑えます。これにより、除草剤や殺虫剤の必要性が減ります。そのため、アーモンドのようにミツバチに害をあたえることも、ココナッツのように地域を選び、その需要の向上にともなって過剰な採取の必要がないことから、非常に環境にやさしい食品です。ヘンプの種子はオイルやミルクに加工されますが、ヘンプ自体は非常に汎用性の高い植物で、そのすべての部分を建築材料、繊維、パルプや紙、ヘンプベースのプラスチックなどに利用することができます。バイオマスとしての利用法も幅広いのがヘンプの特徴です。
近年のヘンプ栽培の解禁と環境意識の高まりに伴い、ヘンプミルクの活用がますます増えてくると予想されます。
ヘンプミルクの作り方
ヘンプミルクは、乳製品不使用、ナッツ不使用、植物性のおいしいミルクです。自然に軽く、ナッツのような風味があり、必要な材料は2つだけです。ヘンプシードと水だけです[4]。しかし、甘味料とバニラエキスを少し加えるだけで、美味しくて新鮮なミルクが出来上がります。効率的なヘンプミルクを作製するために、その乳化現象についても最近研究が進められています。これまで、麻薬という印象から生産量や生産そのものに制限されていました。ここ数年で状況が大きく変わり、それらの制限が緩和され始めました。今後、安くて美味しいヘンプミルクがどこのスーパーマーケットでもみられる日が来るかもしれません。
さいごに
これまで生活の中心にあった、牛肉、牛乳など製作の家庭で環境への負荷が大きいというのが昔から問題視されてきました。そして、(昔からありますが)ここ10年健康や美容への配慮から豆乳が気軽に手に入る時代になりました。そして、次のステップとして、植物性ミルクについて考えてみるのはいかがでしょうか。興味がある方はヘンプシードと水だけで作れますし、今後気軽に変えるようになるかもしれません。
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参考文献
[1] 地球温暖化:メタンガスと畜産 https://www.hopeforanimals.org/environment/213/#:~:text=%E7%89%9B%E3%81%AF%E7%8F%BE%E5%9C%A8%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%A7,%E6%97%A5150%E5%85%86%E3%82%AF%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%A0%E3%80%82
[2] Poore, Joseph, and Thomas Nemecek. “Reducing food’s environmental impacts through producers and consumers.” Science 360 (2018) 987-992.
https://science.sciencemag.org/content/360/6392/987
[3] Clune, Stephen, Enda Crossin, and Karli Verghese. “Systematic review of greenhouse gas emissions for different fresh food categories.” Journal of Cleaner Production 140 (2017): 766-783.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0959652616303584?via%3Dihub
[4] How to Make Hemp Milk, https://minimalistbaker.com/make-hemp-milk/