【穢れを祓う麻】日本各地の祭りに見る麻

日本人の生活にとって、麻は、切っても切れない密接な関係にあります。衣服は言うに及ばず、穀物として、または、実から油を採り、あるいは、薬として、さまざまに活用してきました。

日本では、特に、麻は、神聖なものとして、神社や神事ととても密接な関係にあります。日本各地で行われる祭りの、さまざまなシーンで麻を見ることができます。

この記事では、日本各地の祭りに見る麻について、ご紹介します。

神戸山王まつり(ごうどさんのうまつり):岐阜県

神戸山王まつりの神戸は、「こうべ」ではなく、「ごうど」と読みます。岐阜県安八郡神戸町(ごうどちょう)にある日吉神社の例祭です。

毎年 5月3日(試楽)、4日(本楽)に行われます。この祭りは、さまざまな行事、儀式で成り立っていますが、4日午前0時から行われる山王七社の七基の神輿の朝渡御と、午前5時からの還御が中心です。

特に、松明に囲まれた朝渡御が有名で、「神戸(ごうど)の火祭り」と呼ばれています。

神輿の渡御の際には、絶対に止まらず、全力疾走し、走りながら担ぎ手が替わるなどとても勇壮なものです。

神輿を囲む松明は、3mもの長さの苧殻(おがら)です。苧殻とは、麻の皮を剥いだ茎の部分を言います。麻幹(あさがら)とも呼ばれます。お盆の迎え火や送り火で燃やす方もおられるでしょう。

火は、「すべてを浄化するもの」と考えられ、神輿に乗った神様を囲うことに意味があります。

往馬大社(いこまたいしゃ)の火祭り:奈良県

往馬大社は、奈良県生駒市にある式内社で、正式には、往馬坐伊古麻都比古神社通称、生駒神社と呼ばれています。

往馬大社の祭神は、火を司る神として信仰され、大嘗祭で用いられる浄火をおこす道具である火燧木(ひきりぎ)は、代々、往馬大社より献上することになっています。

さて、往馬大社の火祭りは、毎年体育の日の前日に行われる秋祭りです。神前から神火を火つけ松明に点火します。

燃え盛る火松明を受け取った火取りが、大きな松明を肩に担いで、7段の石段を飛ぶように駆け下ります。この松明は、苧殻でできています。

松明が石段を駆け下りた後、松明の燃え殻や燃え残りの苧殻を授かろうと参拝者が集まります。

伊勢神宮 神御衣祭(かんみそさい):三重県

神様の衣を、「神御衣(かんみそ)」といいます。伊勢神宮では、毎年春と秋の神御衣祭で、天照大御神に「和妙(にぎたえ)」と呼ばれる絹、「荒妙(あらたえ)」と呼ばれる麻の反物を、御糸、御針などの御料と一緒にお供えします。

5/14、10/14の神御衣祭では、皇大神宮と第一の別宮で天照大御神の荒御魂をお祭りする荒祭宮に神御衣を奉ります。これは、豊受大神宮や他の宮社では行われず、天照大御神にだけに行われます。

祭りに先立ち、和妙は、神服織機殿神社、荒妙は、神麻織機殿神社の八尋殿で奉織されます。

五反田柱祭り(ごたんだはしらまつり):愛媛県

五反田柱祭りは、愛媛県八幡浜市王子の森スタジアムで毎年8/14に行われます。

この祭りは、戦国時代に始まったとされています。戦国時代、誤って味方の遠矢によって倒れた山伏の霊を鎮めるために始まったという伝統行事です。

高さ約20mの柱に括りつけられた籠に向かって、火のついた麻木がら(たいまつ)を投げ入れます。籠の中にたいまつが入って燃え上がるまで続けられます。美しい火の玉が闇の中で尾を引く光景は神秘的で、県の無形民俗文化財に指定されました。

麻木は、おがらと読みます。麻の繊維を取るために麻の表面の皮を剥いだ後に残った茎のことです。古来、日本人は、麻を清浄な植物とみなし、悪いものを寄せ付けないと考えてきました。

六郷神社 七草こども流鏑馬祭(やぶさめまつり):東京都

流鏑馬といえば、全国各地の神社などで行われる、疾走する馬上から鏑矢を射る、勇壮な日本の伝統行事です。

東京都の六郷神社の七草こども流鏑馬は、毎年1/7に催されます。3~12歳の裃姿の男子が射士となって的を射て、邪気を払い鬼門除けをして、成長と出世を祈る行事で、かつては、弓入りとも言われました。平成10年からは、旧来の歩射に加え、木馬に跨って矢を射ることも行われています。

使われる弓は、椿の木に麻の弦を張ったもので、矢は長さ1mほどの篠竹に、西之内の矢羽をつけたものを用います。

田原凧まつり:愛知県

田原凧は、江戸時代から続く愛知県田原市の伝統行事です。

田原凧では、長男の誕生と無事を願って揚げられてきた「初凧」と大空で勇壮に糸を切りあう「けんか凧」という2種類の凧揚げを楽しむことができます。

勇壮さで人気のけんか凧ですが、田原凧の特徴は、横長で縦に2本の糸目がつけられているだけで、凧の向きを調整します。

けんか凧合戦では、ナンキンと呼ばれるガラスの粉を糊付けした凧糸を使い、相手の糸に絡めて切りあいます。糸は、昔ながらの大麻糸で高価な指先撚片で製造されたものを使います。それらの凧糸は、ほとんど伸びることがなく、手元の操作で瞬時に方向を変えることができます。

田原凧と同じように、けんか凧で有名な浜松けんか凧でも、使う糸は、麻糸です。

勧請綱(かんじょうづな):奈良県

(勧請綱 弓打ち:奈良県桜井市鹿路)(著者撮影)

勧請綱は、注連縄や横綱の綱のように、標(しめ)として、内と外の境を示す結界として、不浄や穢を隔離するため、村の出入り口や境にかけます。正月明けに、村人総出で、綱を綯い、綱をかけます。

奈良県では、この綱を勧請綱といい、蛇形や男女の性器に模したり、雌雄2本に作ったりして邪悪なものを排除します。また、蛇形の綱を村の周りを引いてまわり、これに邪悪なものを託して川や海、村境に捨てたり、綱引きで神意や作柄を占うこともあります。

それに併せて、村人の思いが届くように、弓打ちが行われます。そのとき、弓を強くひいて、弓の弦の音を響かせます。その弓の弦は、麻糸でできています。

まとめ

日本各地のお祭りの中で、さまざまに麻が登場することがわかりました。日本人にとって、麻は、穢れを払う、神聖なものですので、お祭りのいろんなシーンで、麻が登場するのは、自然なことだと言えるでしょう。
次に、お祭りを見学されるときには、「麻」という視点でみられても、面白いかもしれません。

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情報引用元

神戸山王まつり:http://hiyoshi-jinjya.jp/sannou/

神戸火祭り たいまつピンチ:http://ctrms.blog.fc2.com/blog-entry-20.html

往馬坐伊古麻都比古神社:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%80%E9%A6%AC%E5%9D%90%E4%BC%8A%E5%8F%A4%E9%BA%BB%E9%83%BD%E6%AF%94%E5%8F%A4%E7%A5%9E%E7%A4%BE

往馬大社火祭り:http://www.ikomataisha.com/iz_himaturi.html

伊勢神宮神御衣祭:https://www.isejingu.or.jp/ritual/annual/kanmiso.html

神御衣とは:https://www.isejingu.or.jp/about/estate/cloth.html

五反田柱祭り:https://www.iyokannet.jp/event/1241

五反田柱祭り:https://www.nihon-kankou.or.jp/ehime/detail/38204ba2212061667

おがら:https://blog.goo.ne.jp/d-i-y-sai-tama-neko/e/994f48752d205d42c74d5c3c8d9305ae

六郷神社七草こども流鏑馬祭:https://rokugo.or.jp/annai/yabusame-about.html

六郷神社こども流鏑馬祭:http://www.visiting-japan.com/ja/articles/events/j13oh-rokugo-jinja-yabusame.htm

田原凧まつり:https://www.taharakankou.gr.jp/event/000007.html

凧あげの紐:https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1026405060

勧請綱とは:https://kotobank.jp/word/%E5%8B%A7%E8%AB%8B%E7%B6%B1-1295496

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