近年話題のグリーンラッシュと言われる新ビジネス。主に嗜好品としての大麻、マリファナを用いた産業で、危険なイメージを持たれることが多いと思います。しかし、大麻草自体は、工業や健康・美容関連等、様々な分野で重宝されています。今後も大きな成長が期待されているのが麻産業です。
もちろん日本には大麻取締法という規制があるので、欧米諸国と全く同じようにビジネスを展開するということはできません。
今回は、国内で大麻草の栽培者になることで、麻ビジネスに参入する方法についてまとめています。誰でも簡単に栽培者になれるわけではありませんが、栽培農家に従事する場合や栽培後の加工や商品化に携わる場合においても、栽培者免許について熟知しておいて損はありません。
大麻草栽培免許の申請
まず、大麻草の取り扱いには、都道府県知事が発行する免許が必要になります。
農家の方向けの栽培者免許と研究職の方向けの研究者免許があります。栽培においては、責任者一人が免許を保持していれば、経営が可能になります。
また、免許の交付には基本的に下記のような条件があり、実際には都道府県毎に異なる審査基準もあります。
・麻薬、大麻又はアヘンの中毒者ではないこと
・禁錮以上の刑に処せられた者でないこと
・成年被後見人、被保佐人又は未成年者でないこと
厚生労働省の発表では、現在(2016年)の栽培者数は37人です。決して大きな数字ではなく、狭き門と言えるかもしれません。現に、申請書類を提出しても門前払いとなることがほとんどです。特に栽培目的や利用方法についての計画を綿密に立て、粘り強く自治体窓口と交渉しなければなりません。
ちなみに日本で大麻草が盛んに行われているのは、昔も今も栃木県です。生産量の半分以上を担っています。
大麻草栽培のための準備
大麻草栽培者の免許申請時に用意しておかなければいけないものが、いくつかあります。
・大麻草を栽培する土地
北海道から沖縄まで日本全国で栽培可能ですが、十分に水をぬかなければいけません。目的に応じた広さの土地が必要になります。現状、0.1ヘクタール未満で許可がおりているケースが多いようです。
・盗難防止対策(柵等を用意)
日本国内で栽培できる品種はTHC濃度(大麻草に含まれる薬用成分)が0.3%にも満たないものと定められていますが、嗜好目的のマリファナを求める人がいます。盗難されることがないよう、厳重に盗難防止対策を講じる必要があります。万が一、栽培していた大麻草の一部でも盗まれた場合は、栽培者の責任になります。
・使用できない部位(葉、花穂、未熟な茎)を処分する手段
大麻取締法では大麻草の葉、花穂、未熟な茎の利用は違法とされているので、使用しない部位は適切に処分する手段をあらかじめ用意しておく必要があります。
大麻草栽培者の義務
毎年12月31日に、大麻草栽培者免許の更新をすべく、再審査が行われます。また、毎年1月31日までに、作付面積と収穫量を都道府県に報告しなければいけません。さらに、必要があると判断された場合は、麻薬取締官等による立ち入り検査が行われ、麻畑や倉庫、帳簿等を開示する義務があります。
そして、免許の交付を行った都道府県の条例に従い、条例の変更があればその都度対応する必要があります。
大麻草栽培者の逮捕事例
大麻取締法で逮捕されてしまうのは、違法な栽培、所持、授受、輸出入です。意外なことに、大麻の使用は規制されていません。
ここでは、大麻草栽培者として免許を取得していても、逮捕されたという事例をご紹介します。
鳥取県智頭町では「大麻で町おこし」と謳って、大麻草の栽培を促進していました。しかし、残念なことに、栽培の許可を得て栽培していた人物が嗜好用としての目的で大麻を所持していたため、従業員2人と一緒に逮捕されるという事件が発生しました。この所持していた大麻は栽培していた薬用成分の少ない品種ではなく、知人にもらったものということでした。この事件を受けて鳥取県は、今後一切免許の交付を禁止するという法案を成立しました。さらに、大々的に研究開発を行っていた北海道や、古くから神事に麻が使われていた伊勢神宮のある三重県でも、この事件の影響を受けて、大麻草の栽培が滞ってしまう事態となりました。
他にも、自治体の指示に従わず免許失効後も栽培や密売を行って逮捕されたり、嗜好目的の大麻を所持した上で大麻好きな人々を全国から収集して逮捕されたり、大麻草栽培免許取得者から逮捕者が発生しています。
また、栽培していた大麻草数本を麻畑から盗まれるという盗難被害に合う栽培者や、盗難防止対策の初期費用で多額の負債を抱え、なかなか利益も上げられずにいる栽培者もいます。
苦労して手に入れた大麻草の栽培者免許ですが、取得と同時に大きな責任も伴うことが、現実問題として大きくのしかかってきます。
まとめ
世界の国々では、大麻の合法化により、闇市場の撲滅や新たな雇用機会の誕生等、大きな変化をもたらしています。
一方の日本では、そのような海外のグリーンラッシュの波に乗って外国の大麻株に投資することはできますが、ビジネスの事業者になることは容易ではありません。
今回は大麻草の栽培者になることで、麻産業に参入する方法についてご紹介しました。輸出入にも規制のある大麻草を国内で栽培している農家の方々は、大変貴重な存在ですが、昔ながらの麻栽培の伝統を受け継いでいる農家は、減少傾向にあります。
次回は、実際に栽培する方法や技術について、取り上げています。
合わせて読みたい記事はこちら↓
引用元
https://agri-biz.jp/item/content/pdf/7552
今から始める大麻栽培 無毒大麻を産業に活かす
松田恭子
https://www.motleyfool.co.jp/archives/6159#:~:text=%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%81%A8%E3%81%AF%E5%A4%A7%E9%BA%BB,%E5%90%8D%E5%89%8D%E3%81%8C%E3%81%A4%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
米国の大麻ブーム。グリーンラッシュの恩恵を日本人も受けられるのか?
田守正彦
https://happymoneyusa.com/cannabis-stocks/
【日本&アメリカでの大麻/CBD株投資のはじめ方】銘柄選びのポイント
http://www.hemp-revo.net/report/1108.html
大麻草を栽培するための許認可について~大麻取扱者免許取得に挑戦する前にの巻~
麻の総合利用研究センター
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000194555.pdf
大麻栽培者数及び栽培面積の推移
厚生労働省
https://agri-biz.jp/item/content/pdf/7640?forward=%2Fitem%2Fcontent%2Fpdf%2F7640
日本で麻農業をはじめよう
赤星 栄志
file:///C:/Users/kanako/Downloads/s23Aa001240203ja8.0_h11A160%20(1).pdf
大麻取締法
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000193897.html
大麻取扱者による事件・事故
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/taima01/dl/pamphlet.pdf
大麻栽培の現状
厚生労働省
https://agri-biz.jp/item/content/pdf/4615?forward=%2Fitem%2Fcontent%2Fpdf%2F4615
産業用ヘンプの世界の最新動向
加藤祐子
https://www.sankei.com/west/news/161229/wst1612290006-n1.html
「大麻で町おこし」は大ウソ!?裏切られた鳥取県は「栽培全面禁止」…産業用の生産現場に広がる波紋
産経WEST