近年話題のグリーンラッシュと言われる新ビジネス。主に嗜好品としての大麻、マリファナを用いた産業で、危険なイメージを持たれることが多いと思います。しかし、大麻草自体は、工業や健康・美容関連等、様々な分野で重宝されています。今後も大きな成長が期待されているのが麻産業です。
もちろん日本には大麻取締法という規制があるので、欧米諸国と全く同じようにビジネスを展開するということはできません。
今回は、国内で実際に栽培することで、麻ビジネスに参入する方法についてまとめています。
大麻草の栽培品種の選定
大麻草の栽培を始める上で、どの品種の大麻草を栽培するかということはとても重要です。通常、利用する部位や使用目的によって選定することになります。
日本で栽培できる品種はTHC(大麻草に含まれる薬用成分)濃度が0.3%未満と低いものに限られています。
また、雌雄異株のものと雌雄同株のものとでは、収穫できる部位や収穫の時期が変わってきます。雌雄同株の場合は、1本の大麻草から種子も茎も同時期に収穫できます。一方の雌雄異株の場合は、雄株の開花後に雌株のみに種子がなります。
例えば、日本で生産量の多いブランド「とちぎしろ」は、雌雄異株の品種のため、繊維採取用は3,4月に種まきをし、7,8月に収穫を行い、種子採取用は5,6月に種まきをし、種子が登熟する9.10月に収穫を行います。
また、種まき用の種子を入手するには、合法的に大麻草の種子を取り扱うことができる免許取得者であることが大前提です。多くは、同じ都道府県内の栽培免許取得者や都道府県から種子を受領することになります。ただ、免許を交付する都道府県毎に異なる規則があり、免許取得後にその規則が変更となることもあるため、注意が必要です。
大麻草の栽培方法
どのような気候帯のどのような土地でも、比較的簡単に育つと言われる大麻草。しかし、良質な材料を収得するためには、正しい栽培方法と技術が不可欠になります。また、農薬や肥料がなくても成長しますが、肥料を上手に用いることもポイントです。
一般的な大麻草栽培の流れがこちらです。
<繊維採取用>
3~4月:種まき
大麻草は根を1m以上も深く張り巡らせるので、種をまく前に深くまでしっかり耕し、水分は十分抜き取っておきます。プラウ(トラクターに装着し、土を上下に反転する機械)やハロー(土塊を砕く機械)を用います。
種まき前に使う肥料は、窒素、カリウム、カルシウム、リン酸、マグネシウム等です。
18cm間隔で畝を作り、1㎡あたり約200粒の種をまきます。
5月:ふとがき
背丈が30cm程度になると、畝の間を耕します。水分が適度に行き渡り、水はけもよくなります。
5~6月:間引き
種まきから2ヵ月程度経過すると大麻草は2m以上に成長します。背丈が低いものや虫に食われたりしたものは、刈り取って間引きを行います。
7~8月:収穫(刈り取り、湯かけ、乾燥)
大麻草は収穫時期になると、少し黄色味を帯び、下葉が落下し始めます。繊維は、収穫時期が早いと細くきれいではあるが強度が弱く、収穫時期が遅いと太く見た目が悪い上品質も良くありません。適切な時期に収穫すること重要です。
3m程度に成長した大麻草を刈り取ります。葉は全て切り落とし、茎をそろえて束ねます。そして、熱湯で満たされた麻釜に2,3分浸して湯かけを行います。その後、室内(ビニールハウス)で3,4日干して乾燥させます。ここまでが収穫時の作業です。刈り取りから室内干しの作業までを1日で行うので、干すスペースの余裕を考慮しながら刈り取る量を調整します。
<種子採取用>
6月:種まき
繊維採取用から2ヵ月程度ずらして種まきを行います。種は1㎡あたり約50粒が目安です。
7~8月:間引き
大きすぎる雄株や密集している株を間引きます。さらに、背丈が30cm程度になったら、株間が1mとなるよう間引きます。種子を多く採取するためには、葉を下の枝から大きく広げるように育てることがコツです。
10月:種収穫
十分に種子が登熟したた、大麻草を収穫し、穂から種を採取します。
大麻草は病害虫に強いため、途上燻蒸材、殺虫剤、除草剤等の農薬を用いることはありません。
大麻草の栽培技術(精麻)
大麻草から取れる繊維の品質は、どれだけまっすぐ育つかどうかが重要になります。ある程度密集させて栽培することで、風の影響を受けたり、途中で葉をつけたり、日光に当たり過ぎたりしないようにするという手法もあります。太く過ぎず白く柔らかい繊維が作られます。
また、最終的に廃棄しなければいけない葉は、虫が付きやすいので成長段階でも不要なため、切り落とします。
それではここで、日本特有の精麻(光沢を放つ繊維素材)の技術をご紹介します。国内でも、地域によって技法が異なりますが、圧倒的な生産量を誇る栃木県の例です。
床まわし(床ぶせ)
表面を柔らかくする作業です。発酵菌を含ませた水を張った桶(麻舟)に、茎を漬けて引き上げた後、麻床と呼ばれる発酵場に寝かせてビニールや藁等を被せて発酵させます。この作業を2,3日繰り返します。適度に発酵すると、滑らかな質感と美しい光沢が出てきます。長年の経験を持つ職人の腕が試される場面です。強度が必要な場合は、この作業は行いません。
麻はぎ
表皮と芯を分ける作業です。床まわしで発酵させた大麻草の茎の根元を少し折り曲げて、一気にはがします。数本ずつを束のまま剥ぐので、絡まないようにまっすぐ剥がします。力のいる作業なので昔から男性の作業とされていました。
ヨーロッパでは、表皮と芯をはぐ作業を容易にするため、レッティングと言って一定期間(1~3週間)刈り取った大麻草を畑に放置する手法もあります。
麻ひき
繊維をひく作業です。麻はぎで剥がした表皮からカス(麻垢)を削って繊維を取り出します。電動の器具を使うため、女性の仕事とされています。これで精麻(光沢を放つ繊維素材)の完成です。その後精麻は風通しの良い日陰で数日間乾燥します。
この時に出てくるカスは麻紙の原料になり、残った芯の部分(木質部)は、乾燥させてオガラという建材や燃料や炭の原料になります。
どんな環境でも比較的簡単に育つと言われる大麻草。優良な製品へと変身させるためには、その使用目的に応じて、適切な栽培手法があることが分かりました。繊維用として出荷する場合、良質な精麻を作る農家さんの技術も重要で、大変興味深いものではないでしょうか。
次回は、いよいよ栽培した大麻草を収穫した後の加工についてです。
合わせて読みたい記事はこちら↓
引用元
https://agri-biz.jp/item/content/pdf/7552
今から始める大麻栽培 無毒大麻を産業に活かす
松田恭子
https://readyfor.jp/projects/hempfromthailand/announcements/34585
ヘンプが完全無農薬で栽培できるその理由について
https://agri-biz.jp/item/content/pdf/7658?forward=%2Fitem%2Fcontent%2Fpdf%2F7658
日本で麻農業をはじめよう
赤星 栄志
https://agri-biz.jp/item/content/pdf/4615?forward=%2Fitem%2Fcontent%2Fpdf%2F4615
産業用ヘンプの世界の最新動向
加藤祐子
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ダグ・ファイン
https://hokkaido-hemp.net/business.html
ヘンプのビジネスモデル (一般論)
北海道ヘンプ協会
https://yashuasa.com/free/3
〆麻束から精麻へ
野州麻紙工房・野州麻炭製炭所 |野州麻[公式]