はじめに
大麻草という植物の利用方法を、皆さんはご存知でしょうか。
代表的なものとして、薬物として扱われるマリファナや、繊維素材として用いられる麻衣料が挙げられるかもしれません。しかし、それだけではありません。
実は、多岐にわたる使用用途があり、余すところなく全部位を利用できる優秀な植物なのです。例えば、ヘンプシードやヘンプオイル等のスーパーフード、ヘンプクリートやヘンププラスチック等の工業材料、さらに燃料、肥料、飼料。
捨てる部分が無いという点においても、その特性においても、環境にやさしい植物です。 今回は、大麻草の部位別に利用方法を確認してみましょう。すでに、私たちの生活に取り込まれているものもあるはずです。
大麻草の種子・・・食用、健康・美容製品用
大麻草の種子は古くから食用に使われてきました。七味唐辛子の中に入っていて、噛んでしまうとガリっと歯ごたえがあるあの実が、麻の実、つまり大麻草の種子です。
このように種子全体を煎って食べることもできれば、中の胚乳を料理に加えたり、種子から抽出した油を健康・美容面に活用したり、さらにこの油を搾り取った後のかすまで粉状にして料理に利用できます。種子だけでも4通りの使われ方があります。
種子はヘンプシード、油はヘンプシードオイルと呼ばれて、多くの健康食品や美容製品への商品化が進んでいます。特に、人体内で生成することができない必須アミノ酸(オメガ3、オメガ6)や必須脂肪酸(リノール酸、αリノレン酸、γリノレン酸)が含まれていることに注目が集まっています。また、大豆と同程度の良質なたんぱく質を含有し消化吸収効果はより高く、ミネラル(鉄、亜鉛、銅、マグネシウム)、コレステロール0等、まさにスーパーフードと言えます。
味はクルミのようで、風味が豊かです。和洋中さまざまな料理やデザートとも相性が良いため、重宝できます。ぜひ、日常の食生活に取り組みたい食品です。
美容製品としては、血行・新陳代謝の促進効果、高浸透力、高保湿力が高く、肌や髪の表面からも内面からも用いることができます。
ヘンプシードオイルは種子のみから抽出したオイルで、これとは別に種子だけでなく茎や他の部位全体から抽出したオイルをフルスペクトラムオイルと言います。 また麻の実から抽出されたオイルを燃料にしてディーゼル車を走らせるヘンプカープロジェクトが世界各地で実行されています。この燃料は、燃費や価格帯は軽油と同等ですが、硫黄酸化物(酸性雨の原因)や黒煙の排出が少ないため、環境にやさしい燃料になっています。
大麻草の花穂・・・薬用
大麻草が薬用として使われるのは、主に花穂と葉の部分を乾燥あるいは樹脂化したものです。精神作用をもたらす成分THC:テトラハイドロカンナビノールを多く含んでいるため、多くの国や地域で取り扱いについての規制があります。
日本で禁止されている麻薬としての大麻の定義は、この花穂と葉のことです。許可なく栽培することも、所持することも、できません。
ただ、近年では、キャンディやビールに大麻草の花を混ぜ込んだ製品も開発されています。薬用効果は吸引するよりも低いため、嗜好用として試しやすく、人気があるのかもしれません。
さらに、開花すると独特のにおいを放つようになる大麻草を香料として用いる手段もあります。中には刺激臭に感じて好まない人も多くいますが、甘い香りに感じて香料として用いる人もいます。
大麻草の葉・・・薬用、肥料用
大麻草の葉は、花穂と同様に薬用として使われることが多く、日本では禁止されています。
しかし、海外ではハーブティとして、長い歴史を持っています。起源は、大麻草を神聖な植物として扱ってきたインドです。大麻草の代表的な品種のインディカ種では、特にリラックス効果が期待できます。 また、大麻草の葉は、収穫段階になると枯れて落ちていきます。この葉が腐葉土の役割を果たすため、天然の肥料として活用されることもあります。
大麻草の茎・・・工業用、繊維用
大麻草の茎は、皮と芯(オガラ)で分類できます。
まず、皮の部分。繊維としての利用は、麻の使われ方の代名詞です。吸湿性、耐久性、通気性、抗菌効果に至るまで、優れものの素材です。長年、紐、布、服、紙等、多用されてきました。
次に、芯の部分。繊維を取り除いた部分を乾燥させたオガラ(麻幹、麻がら)は、工業製品として重宝されています。ヘンププラスチックに加工されて、様々な用途に役立てることができます。セメントと混ぜて作られるヘンプクリートは、断熱性、防音性、調湿性、軽量で作業が容易であること等、利点の多い建材として用いられています。 従来の化石燃料由来のものと違って、成長の早い一年草の大麻草からなる植物由来の工業製品は環境に配慮されたものと言えます。
大麻草の根・・・土壌改良用
外敵に強く、荒れた土地でも、手間をかけなくても、元気に育つ大麻草は、土壌改良の効果も持っています。
大麻草の根は、地中深くまで張り巡り、空気を通すため、細菌が繁殖しやすく、柔らかで健康な土壌を形成します。
また、大麻草を収穫した後は、根がすぐに腐るため、有機肥料にもなります。 そのため、他の農作物を育てるために、先に大麻草を栽培することで土壌を改善させるというような使われ方もします。
まとめ
大麻草は全部位が捨てることなく使用でき、さらにその汎用性の高さにも驚かされます。ただ、今回ご紹介したものは、ごく一部です。 また、現在の日本ではまだ法規制もあり、身近に感じることは難しいかもしれません。正しい情報を基に大麻草の有用性を利用していきましょう。
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引用元
https://news.yahoo.co.jp/byline/endotsukasa/20160930-00062747/
日本の大麻をいますぐ解禁せよ:日本産大麻ビジネスの破壊的影響力
遠藤司 皇學館大学准教授
https://www.hempkitchen.jp/user_data/about_hemp_seeds
麻の実とは?
ヘンプキッチン
http://takumishop.jp/sp/765beer/asa_5.html
赤星栄志
https://agri-biz.jp/item/content/pdf/7782?forward=%2Fitem%2Fcontent%2Fpdf%2F7782
日本で麻農業をはじめよう
赤星栄志
【CBD製品】大麻茶が注目される理由とは?簡単な作り方や効能を徹底解説!
http://www.airgreen.co.jp/hemp/hemp%20usage.htm
大麻の栽培と利用
参考文献
The great book of Hemp; Rowan Robinson, Park Street Press, Rochester Vermont
Hemp for Health; Chris Conrad, Healing Arts Press, Rochester, Vermont
大麻の茎は、外側に篩部繊維と呼ばれる長い繊維(セルロース)があり、この繊維の長さは、茎の高さと等しく、セルロースの含有量は、60-78%になる。中心部は、短い繊維(セルロース)とヘミセルロース、リグニンから出来ている堅い組織で、セルロースが36-41%、ヘミセルロースが31-37%、残りがリグニンである。
https://www.ooasa.jp/hemp_car/
ヘンプカー・プロジェクト
株式会社いやさか
http://www.ooasa.jp/know/index.php?useful
麻は何に役立つの
株式会社いやさか
http://www.hemp-revo.net/report/0205.htm
バイオ燃料の未来は? ~ヘンプカーの巻~
麻の総合利用研究センター