
2025年5月、イギリスで。薬剤師が医療用大麻を安全に扱えるようサポートする、初めての「医療用大麻ガイドライン」発行されました。
薬剤師向けの現場マニュアル
2025年5月イギリスで発行された「医療用大麻ガイドライン」は、医療現場で安全に大麻を使うための実践的なマニュアルです。イギリスの医療用大麻臨床家協会(MCCS)が作成したもので、薬剤師が医療用大麻を取り扱う際に、安心して、そして法律に沿って対応できるようサポートすることを目的としています。
イギリスでは、医療用大麻を使用する人は自身が選んだ認可薬局で調剤を受けることができます。このガイドラインには、製剤の取り扱い方法や、他の薬との相互作用、副作用の対処法、患者対応の記録のしかたなどが、詳しくまとめられています。そのため、薬剤師にとっては現場ですぐに役立つ現場の教科書のような存在となっています。
なぜ今、ガイドが必要なのか?
イギリスでは2018年に、医療用大麻の処方が正式に認められました。きっかけとなったのは、重いてんかんを抱える2人の子どもたちのニュースです。彼らは海外で医療用大麻を使って症状が改善していたものの、イギリスではその持ち込みが認められず、再び発作が悪化してしまいました。この出来事はメディアを通じて大きく報道され、医療用大麻に対する理解が一気に広まりました。
その後、世論の後押しや患者団体、活動家たちの粘り強い働きかけによって、ついに合法化が実現。現在では、民間のクリニックを通じて医療用大麻が少しずつ処方されるようになっています。
こうした広がりを受けて、大麻を使った医薬品が一般の医療現場でも扱われるようになり、薬剤師には、法律や製品の種類、そして患者の安全についてしっかり理解することが求められるようになりました。けれども、これまでイギリスには薬剤師向けの総合的なガイドラインがなく、多くの薬剤師が実際の対応に不安を感じているのが現状でした。
今回の日々の業務で役立てられる初の公式ガイドラインは、今後も毎年の改訂を重ねながら、現場で使いやすい形に整えていく予定です。

ロンドンでは非犯罪化の動きも進行中
医療の現場だけでなく、政策の面でも大麻に関する動きが活発になっています。ロンドン市長のサディク・カーン氏は、少量の大麻所持について非犯罪化を支持する姿勢を明らかにしました。これは、大麻を所持していること自体は違法だが、犯罪として取り締まりはしないというグレーゾーンの扱いです。背景には、黒人コミュニティに対する不均衡な取り締まりの実態があります。専門家チームの報告書でも、「現在の刑罰は行き過ぎであり、人種間の不平等を深めている」との指摘があり、社会全体で見直しが求められています。
ただし、これはあくまで対象は個人の少量所持に限ってのこと。大麻の製造・販売・供給は今も違法であり、「完全な合法化」とは異なる点に注意が必要です。今後、このテーマがどのように議論されていくのか、注目が集まっています。
一方で、中央政府は依然として慎重な姿勢をとっています。すでに合法化へと踏み切ったマルタ、ルクセンブルグ、ドイツなどと比べると、イギリス全体での制度改革には、まだ時間がかかりそうです。
ヨーロッパ各国でも進む大麻医療
イギリスで発行された新たなガイドラインは、今後ヨーロッパ各国にも影響を広げていく可能性があります。すでにドイツやスイスでは、医療用大麻の処方が一般的になりつつあり、CBDを使った製品も人々の生活に自然と溶け込んできています。CBD入りのドリンクやオイルがスーパーで手軽に買える国も増えており「安心して使えるためのルール」が少しずつ整えられてきていることがわかります。
こうした動きは、CBD製品を扱う企業にとって大きなチャンスです。しかし同時に、これまで以上に高い責任も求められる時代になってきました。製品の成分表示や品質管理だけでなく、薬剤師や医療従事者への教育体制、ユーザーからの相談に丁寧に応える仕組みなども重要になっています。
これからのブランドには、「安心して使えること」と「正しく伝えること」が求められます。これらをしっかり実現できるかどうかが、信頼を築く大きなカギになっていくでしょう。

安心して使うには「知識」がカギ
そして、制度が少しずつ整いつつあるとはいえ、最終的にCBD製品を選んで使うのは私たち一人ひとりの消費者です。だからこそ、自ら情報を集め、成分表示をきちんと確認すること、信頼できるブランドを見極める目を養うこと、そして自分の体調やライフスタイルに合った使い方を見つける「リテラシー(正しい知識と判断力)」が、これまで以上に重要になっています。
行政、医療、そして消費者が協力し合い、安全性と有効性をいっしょに支えていく姿勢が普及のためには大切な要素です。
ヨーロッパ全体でも「CBDを正しく知り、安全に使う」意識が社会に広がっています。これからの日本でも「なんとなく流行っているから」ではなく、「きちんと知って、自分に合ったものを選ぶ」ことが、CBDと上手につき合っていく基本になっていくでしょう。
<参考資料>