CBDなどの大麻由来成分がポピュラーとなる中、米国では更年期を迎えた女性の多くがつらい更年期障害の症状緩和のため大麻由来製品に関心を持っていることが分かりました。どのような効果が期待できるのでしょうか。
更年期障害とはどんなもの?
女性の多くが50歳前後で「閉経」を迎えるとされ、この閉経の時期となる45~55歳あたりの時期を更年期と呼び、この時期に起こる睡眠障害、ほてり、抑うつ、不安などの様々な体調不良は一般に更年期障害と呼ばれています。
これは加齢に伴って卵巣の働きが衰え、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が急に減少するために起こります。
女性ホルモンは、体のさまざまな機能に影響しているため、体が痛い、気分がふさぐ、イライラするなど人によって心身に様々な変化が生じます。また具体的に困った症状がなくても「これまでと違う」と心身の違和感や不安を覚える人も多いのです。
つい見過ごしがち、働き盛り世代のメンズ更年期
「女性だけに起こるもの」と思われやすい更年期障害ですが、実際には男性にも起こりうる現象です。
これは加齢やストレスによって男性ホルモン値が減少してしまうことで、やる気や記憶力・性欲が低下したり、不安を感じやすくなったり、筋力や骨が弱くなるため。
男女差だけではなく更年期の体調変化や感じ方は個人差が大きく、肩こりや息切れなどの軽い症状の人も多いものの、中には更年期うつなど深刻な状態に陥る人もいます。
厚生労働省が行った「更年期症状に関する意識調査」によると女性のうち40代で28.3%、50代で38.3%、60代で27.7%が更年期障害を疑ったことがある一方で、医療機関を受診した人は非常に少ないとされています。
食事の栄養バランスに気を使ったり、サプリを飲んだり、漢方薬を取り入れるなど様々な対策がありますが、症状が著しい場合には病院でのホルモン療法が効果的であることが証明されています。
大麻成分がつらい症状を緩和?
更年期障害は症状に合わせて睡眠薬や抗不安薬を投与したり、ホルモン補充療法を行うことで改善されると言われています。しかし全ての人が薬やホルモン治療を受けられるわけではありません。また症状に悩んでいても化学薬品やホルモン治療に頼ることに不安を感じる人も多いほか、「トシだから」「そういうものだから」と諦めてしまう人も多いようです。
北米更年期協会による2022年の新しい研究では、更年期に女性が経験する不快な症状を改善するための医療大麻に関心を持つ人が増えていることが分かっています。対象者の(78.7%)が更年期関連の症状に医療用大麻を使用することを支持、増加。
大麻の合法化が進み、大麻由来成分の中でも副作用のほとんどないCBDの利用が非常にポピュラーな米国らしいデータですが、大麻成分はどのように更年期の症状に働きかけるのでしょうか。
カンナビノイドの効能とは
大麻草に含まれる化学物質カンナビノイドは、私たちの体内に自然に存在する「カンナビノイド受容体」と結びつくことで様々な効果を発揮します。
これはもともと人体が内在性カンナビノイドと呼ばれる物質を生成して体内バランスを調節する仕組みを持っているからです。大麻に含まれる植物性カンナビノイドの研究が進む中で解明されてきたことですが、大麻から取り入れたカンナビノイドはこれらを補填する形で私たちの体に働きかけることができるのです。
100種類以上ある大麻由来のカンナビノイドですがその働きは様々です。中でもTHC、CBN、CBDが三大主成分として知られ、研究が進められています。
①THC(テトラヒドロカンナビノール)
=多幸感など向精神作用があることがあることで知られる成分。痛み止めや重度の吐き気抑制、難病治療など様々な医療効果も見つかっている。一般使用は規制されているケースがまだ多く、日本では規制物質。
②CBN(カンナビノール)
=THCが酸素、光、そして温度にさらされることで生成される成分だがTHCのような精神作用はない。大麻草から取れるCBNの量は全体の1%未満と希少成分。鎮静作用、抗痙攣作用、抗炎症作用、睡眠改善に効果があるとされている。
③CBD(カンナビジオール)
=リラックス効果や不眠解消をはじめ、様々な健康・医療効果があることで非常にポピュラーな成分。大麻医療にもよく使用される。副作用がほとんど見られなく使いやすい。
ホルモン治療の代わりになるの?
ホルモン分泌減少によって引き起こされる更年期症状は、体内の機能バランス調節が崩れてしまったことによる心身の反応です。カンナビノイドはホルモンの代用となるわけではありませんが、違った形で症状緩和に役立ってくれる場合があります。
中でもサプリメントとしてよく用いられるCBDは不眠緩和やリラックス効果、不安を緩和するなど、更年期障害の代表的な症状にも対応してくれる心強い成分と言えるでしょう。
現在有効とされているホルモン療法には副作用も報告されています。例えば気分のむらや疲労を引き起こしたり、エストロゲンとプロゲストーゲン(=いずれもホルモン)の併用療法を3 年から 5 年以上使用することによって乳がんリスクが高まる可能性も指摘されています。
医師との相談が必要なことはもちろんですが、重症でない場合は食生活の改善やサプリの導入や漢方薬に加えて、安全で使いやすいCBDを検討するのも一案です。
女性ホルモンは主に卵巣で、男性ホルモンは主に精巣でつくられますが、最新の研究では心身を司る多くのホルモンが腸内で作られていることもわかっています。中でも精神を安定させる神経伝達ホルモンである「セロトニン」はそのほとんどが腸でつくられています。これは脳内神経伝達物質の素となる物質が腸内細菌によって作られているため。腸内細菌のエサとなる繊維質の多い食品や発酵食品を取り入れるといった基本の腸内ケアも、更年期を気分良く健やかに過ごすためのヒントです。
効き目はいつ現れる?副作用は?
CBDは自分の適量に合わせて正しく使用し投与量を守れば副作用が起こることはあまりありませんが、ごくまれに口の中が乾いたり、眠気を感じる人もいるようです。
WHO(世界保健機関)は2017年に「CBDは安全で、 公衆衛生上の問題も濫用の危険性もない」と、CBDの安全性についてコメントしています。
使用量は薬と同じく体のサイズ=体重に合わせて上下するため、CBD製品の種類や濃度によって適量が提示されています。どのくらいの期間服用すると効果が現れるかについても個人差がありますが、早ければ服用後30分程度から効果が現れ、数時間効果が持続しますます。食べるのか、皮膚や舌下から直接吸収するかによっても効果の現れるスピードが変わります。
今一つ効果が感じられない場合は、使用量や製品のCBD濃度を見直したり、摂取方法を変えてみるとよいでしょう。また価格だけに左右されず、サードパーティによる品質テスト結果を公開している信頼のおけるブランドを選ぶ事も大切です。
まとめ
大麻製品の中でも最も安心でき使いやすいのはCBDであると言われています。世代によっては大麻に危険なイメージを持つ人も少なくないですが、古代から薬草としても使われてきたように、正しく使うことでいろんな恩恵を受けることができます。年齢を重ねる自分を受け入れ、自分を追い詰めたりすることなく上手に付き合っていくのが健やかに年を重ねるコツ。セルフケアで自分をいたわり、今日までがんばってきた体とこれからも丁寧に向き合っていきたいですね。
<参考資料>