大麻草や産業用ヘンプなどから生まれた話題の成分CBD=カンナビジオールですが、どのようにして抽出されているのでしょうか。本稿では様々な抽出法やそのよしあしについてご紹介します。
ヘンプとCBDの関係
ストレスや不眠緩和、炎症を抑えるなど、様々なヘルス効果が期待できると噂の大麻由来の天然成分CBD(カンナビジオール)。近年ではサプリ的利用だけでなく、コスメやペットフード、ドリンクなどにまで配合されるようになり使用範囲が広がっています。
大麻由来の成分というとマリファナ吸引などを連想し、違法薬物なのではと不安に感じることもあるかもしれませんが、CBD自体は精神活性作用がなく日本でも合法と認められている成分です。世界保健機関(WHO)も、健康への悪影響はなくいくつかの医学的用途があると報告しています。また人間だけでなく動物にも使用でき、公衆衛生上の悪影響とも関連していないことが分かっています。
流通しているCBD製品のほとんどが、麻薬成分とされる成分THC(テトラヒドロカンナビノール)がほとんど含まれていない品種、いわゆる産業用ヘンプから生産されています。
ヘンプオイルとの違い
ヘンプオイルと「CBDオイル」として販売されている製品はどこが違うのでしょう。
食用だけでなく産業用インクや燃料も作ることができる ヘンプオイルは「麻の種から抽出されたオイル」のこと。種から抽出しているためヘンプシード・オイルと呼ばれることもあります。肌馴染みがよく保湿効果に優れているため、ボディクリームなどの化粧品に配合されたり、マッサージオイルとしてそのまま利用することもあります。体内でつくることができない必須脂肪酸オメガ3および6脂肪酸が豊富だったり、ビーガン実践者にもむいていることから、欧米では健康効果も兼ねて料理に使う人も多いようです。
ヘンプシード自体も、ビタミンや繊維質、良質のタンパク質も含まれたスーパーフードとしても注目されている素材です。ココナツミルクやアーモンドミルクのように種子を粉砕して水とブレンドしたヘンプミルクもヴィーガン・ブーム全盛の欧米で人気となっています。
一方のCBDはオイルを豊富に含むヘンプの種だけでなく、花・茎・葉、根の部分など麻のさまざまなパーツから抽出することができます。この抽出されたCBDの精油を希釈するための植物油=キャリアオイルに配合したものがCBDオイルと呼ばれています。
この2つは別々に生産され配合されるため、濃度を調節することができ、ユーザーは目的に合わせてどのオイルを使うかを選ぶことができるようになっています。一般的な商品のCBD濃度は3%〜10%ほど。またキャリアオイルにはヘンプシードオイルが使われるのが一般的ですが、ハーブや香料でフレーバーをつけて摂取しやすくしてある商品もあります。
いろいろある抽出法
ヘンプの種や茎、葉をただ絞ってもCBDを純粋な形で取り出すことはできません。麻からCBDを抽出する方法はたくさんありますが、手作業でできるものから大規模な設備を必要とするものまで様々です。これらのメソッドは製品の純度と有効性に影響を与えるため、違いを知っておくとよいでしょう。
以下が抽出法の主な4つの方法です。
①無溶媒抽出
麻の花や葉、種などに圧力・熱・摩擦を加えて取り出す無溶媒抽出、つまり手作業で成分を絞り出す最もベーシックな方法です。
この場合は植物全体を使った最も安価な抽出方法ですが、産業利用は難しく、成分の純度を細かく管理することができません。 植物の恵みを水蒸気蒸留法にて蒸留してつくる精油とアロマウォーターなどもこの一種です。
②オイル抽出
植物とオリーブオイルなど混ぜ、数時間加熱することで麻の成分を抽出する方法です。こちらも安全で簡単な方法ですが、CBDの濃度は低く、純度管理もできないため商業販売には適していません。
…このため商業用CBDに利用される抽出法は以下の「エタノールによるアルコール抽出」と「超臨界二酸化炭素抽出」です。
③アルコール抽出
CBDだけでなく、多くの物質から成分を抽出するために古くから使われてきた方法が「アルコール抽出」です。麻をエタノールに浸すことで、CBDオイルを抽出するのです。
エタノールによるアルコール抽出が優れているのは「CBD以外の成分も抽出できる」という点です。これらの成分はCBDと同じ水溶性なので、体内で吸収されやすいという性質を持ちます。
④超臨界二酸化炭素抽出
コーヒー豆からカフェインを取り除き、デカフェを作る際にも使用される方法です。麻に溶剤となる超臨界流体(二酸化炭素)を加え、両者の溶解度の差を利用してCBDオイルを抽出します。添加剤や汚染物質を使用せずに、クリーンで安全に抽出を行うことができ、抽出プロセスが終了したら、二酸化炭素を再利用するか、安全に大気中に放出することができます。工業プロセスであるため、費用と専門知識が必要ですが、商業利用に向いています。
…超臨界二酸化炭素、エタノールによるアルコール抽出のどちらも特徴があるので、CBDオイルを使ったアイテムの購入の際はチェックしてみると良いでしょう。
抽出の効率化でコスパを上げる
専門知識や大掛かりな設備が必要となるCBD抽出ですが、アグリテック(農業+テクノロジー)がすすんだ現在では、作物の生産から成分抽出までさまざまな過程にテクノロジーが導入され、効率化と生産性がどんどん上がっています。
「アルコール抽出」や「超臨界二酸化炭素抽出」のプロセスでも、加工・ろ過、溶媒回収、脱炭酸の過程などの多くが自動化されつつあります。たとえば、抽出されたオイルのバットをろ過システムに運ぶ代わりに、ポンプで汲み上げるといった過程です。これにより、個別の容器に残留物が蓄積することによる製品の損失も削減されます。
テクノロジーによってスムーズなワークフローがうまれ、労力が節約されます。ヘンプ生産から抽出のプロセスまでCBD抽出のコストを削減し、効率性・生産が上昇することで、リーズナブルな価格で上質の商品が手に入るようになっていくのです。
CBDの使用法〜お好みで試してみよう
さまざまな方法で抽出されたCBDは、スポイトで舌下にたらしてそのまま摂取したり、肌に塗ったり、コスメ、医薬品などに配合されます。コーヒー豆にブレンドしたり、スポーツ用の筋肉バームなどに炎症緩和成分として配合されることもあります。またCBDカートリッジとして、電子タバコ用リキッドになっている商品もあります。商品を購入の前には安全チェックのために製造元が提供しているCOA(certificate of analysis=分析証明書)をチェックされることをお勧めします。
生活のさまざまなシーンで利用できるようになったCBD。朝のコーヒーからおやすみ前の一滴まで、自分にあった方法で取り入れてみて、その効果を実際に感じてみてはいかがでしょうか。
<参考資料>
Hemp Industry Daily
https://hempindustrydaily.com/how-to-cut-costs-and-achieve-efficiencies-when-extracting-cannabis/