「麻」がつく日本の地名と麻の関係

(JR四国徳島線麻植塚駅:著者撮影)

日本人と麻との関係は、縄文時代に遡ります。麻は、栽培しやすいため、昔から、暮らしに欠かせないものとして、日本人にとっては、とても身近なものでした。

地名の多くは、その土地にあったものやその土地を治めていた氏族、あるいは、地形などからとられます。

日本には、「麻」という字が使われている地名はたくさんありますが、この記事では、その代表的な地名の由来をご紹介します。

「麻」がつく地名のパターンは?

地名を考えるとき、その土地にあったものに由来するという場合が多く、「麻」が付く地名も、麻が育っていたところ、麻を栽培していたところ、麻を加工していたところなどに由来していることが多いです。

一方で、水の浅いところ、あるいは湿地を意味する「アソ」を麻生という字をあてたり、がけ崩れ、湿地という意味の「アサ」の転訛で麻生(あそう)となったりなどの、地形に由来する場合もあります。

その他、上記に分類されないものや、今では由来が定かではないものなどがあります。

順番にご紹介しましょう。

「麻」の栽培や産業と関連している地名

茨城県行方市麻生

「常陸国風土記」に「麻生の里、古昔、麻、潴水の涯に生ひき。囲み、大きなる竹の如く、長さ一丈に余れり」とあり、これが麻生の由来であるとされています。

茨城県鹿沼市麻苧町

「少年少女のための鹿沼の地名」によりますと、「四国麻の栽培が鹿沼宿のまわりにひろまりました。とくに西の方でさかんになりました。麻畑のまわりには野生の苧(からむし)がいっぱい生えていて、麻の出来が良くないときには、これが麻のかわりに使われました。(中略)明治7年、町の名を麻苧町とかえました。」とあり、これが、麻苧町の地名の由来です。

群馬県多野郡神流町麻生

「麻生は麻が生い茂っている所」昔は、どの家でも麻を栽培したのに、麻生村がその名を独占したのは、麻生村のツクエ台地から北に傾斜する麓は日陰で麦が播けない。したがって、春、麻を播き、大地の北面は帯を締めたように見事な景観を呈した」と、「万場町史」に記されています。

神奈川県川崎市麻生区

「麻生」の名は、この地が8世紀ごろの朝廷への貢物だった麻布の原料である麻を産したことによると伝えられています。(川崎市HPより)

新潟県十日町市麻畑

慶長3年の検地帳には、六箇の中村等に青苧畑が記載されており、この地方には麻畑、浅ノ平(麻ノ平)、苧島(おのしま)等の地名が残っています。その昔に、青苧を栽培した名残だと言われています。(「青苧の生産と流通」より)

富山県高岡市麻生谷

麻生谷村(あそうやそん)は、柴野村の南西に位置し、東は四日市村、西は石堤村。古くから麻を栽培して布を織り、近くの十日市、六日市、四日市、三日市の市場に売ったので、麻生谷の名が付いたと言われています。(「石堤村史」より)

長野県大町市美麻

美麻村(みあさむら)の名前は、麻の産地であったことに由来します。

愛知県豊川市麻生田町

「往古、禁裡へ麻ヲ献ジタルヲ以て、村名トスト云へり。」(「麻生田村史」より)

三重県松阪市御麻生薗町

室町時代初期の伊勢神宮文献にすでに、その名前が記されています。さらに、江戸初期のころの伊勢神宮文献にも、「その地において、阿波曽(=青苧)が生産されていたと記されています。

滋賀県東近江市上麻生

神様からいただいた「麻」の種子は、その後、「麻生庄」の人々によって栽培され、その麻を縄にして時の天皇に献上していたという。こうして麻の生産地として知られるようになり、「麻生」と名付けられたと伝えられています。(「滋賀の伝説4 おびのかけはし」より)

鳥取市国府町麻生

袋川中流右岸の沖積地に位置する。地名の由来は不詳であるが、微高地のため水利が悪く、麻の畑作地帯であったかとする説もある。(「鳥取県 地名辞典」より)

岡山県備前市麻苧那

古くは麻野上、麻宇野、麻苧等と呼ばれていました。17世紀半ばごろから、現在の地名で定着したそうです。これは麻苧(あさお)という、麻で作った紐の産地であることに由来します。

徳島県吉野川市麻植塚

2004年の町村合併前の麻植郡の由来は、麻の生産復活に取り組み、令和の大嘗祭で麁服(あらたえ)を調進された阿波忌部に由来します。麻植塚には、「麻植の神塚」と呼ばれるような石碑が数基あり、忌部の氏人・今鞍進士を祀ったものだと伝えられています。

香川県善通寺市大麻町

往古、忌部氏が当国に麻を伝え、天太玉命を祀り、大麻神と崇めたという。(大麻神社HPより)

熊本県清水町麻生田

麻生田組の麻生田というのは、上益城郡甲佐町の麻生原と同じように、アサフ(麻生)であり、漢字の当て字ではなく、麻が生えている所という意味からきていると考えてよいだろう。(「くまもと地名散歩」より)

愛媛県伊予郡砥部町麻生

古くは、麻の産地で、その茂っている姿を称したという説がある。また、アソウは、アソで水の浅いところ、湿地とする見方もあるが、これは当たらないのではないか。(「砥部町史」より)

地形に関連する地名

(国宝 當麻寺本堂:著者撮影)

埼玉県熊谷市大麻生

「オオアソ」と呼ぶ場合が多く、地元では「オアソ」とも呼んでいる。「アソ」は水の浅いところを指し、湿地の意味があり、荒川流域の低湿地から、この地名が生まれたと推測されている。「アソ」は漢字で「麻生」と書くのは、当て字で、麻が生えていたということに由来する地名ではないと考えられている。

千葉県山武市麻生新田

旧山武町。江戸期は麻生新田村。宝暦元年(1751)広野と称する原野が開墾され、同10年(1760)の検地により1村となった。往古八街村の一部分であったが戸田村の者が移住し開墾したという。「あさ(崖崩れ・湿地)・う(~になっている所)」の転訛で崩れるような崖のある所、または湿地という意味。

東京都港区麻布

「あざぶ」は「あさふ」でもあり、「あさふ」は口語では「あそう」と発音するため、「麻生」という表記をあてることもできる。「麻生」とは「あぞ・ふ」とも発音し、「あぞ・ふ」はすなわち崖地の場所を表している言葉なのだ。
東京都港区の麻布は、まさに台地の縁にある崖地であり、高低差がり、坂道が多く、「麻布」は崖地から由来した地名なのだという説で、信憑性が高いと思われる。

奈良県葛城市當麻

「常陸国風土記」によれば、日本武尊が巡當麻 行の時、その命に服しない佐伯鳥日子を攻めるのに、その地が道狭く、たぎたぎしかったことから、そこを當麻と言われました。葛城の當麻の地も険しい土地であったことから、このタギマがタヘマ、タイマと変化したとされています。(たぎたぎしいは、古語で「でこぼこのあるさま」)

由来が、麻や地形に分類されない地名

(奈良交通バス停 麻生田:著者撮影)

北海道江別市大麻

大麻(おおあさ)の由来は、国道12号の前身の旧江別街道が大きく曲がっていた3番通の江別大麻西郵便局付近の旧地名「大曲」、かつて亜麻が栽培されていた大麻元町付近の旧地名「麻畑」。これらふたつの字から一文字ずつ引用し、昭和11年に「大麻」の地名が成立したといわれています。

宮城県加美郡色麻町

宮城県色麻町という地名は、奈良時代に播磨国飾磨郡からきた屯田兵に由来します。

大阪府豊中市石橋麻田町

昭和49年からの豊中市の地名で、もとは豊中市麻田の一部とあり、古くは浅田とも書き、近世は麻田村として麻田藩青木氏領でした。(「角川日本地名大辞典27 大阪府」より)

奈良県宇陀市大宇陀麻生田

阿曽谷(あそだに)の転訛か。中世、興福寺一乗院領の北・南阿曽田庄に属していました。(「奈良県地名辞典」より)

高知県四万十市麻生

「浅尾村 中村郷 今書麻生村」(南路誌 巻28)から、浅尾村の転訛か。

大分県国東市武蔵町麻田

武蔵川の上流。麻生のように麻の産地であったか、あるいは麻によって他の田と区別するための麻田地名かもしれない。浅川のように、浅い沼や川の地帯でもあり、朝日を浴びる日当たりのよい地でもある。(「大分県地名大辞典 国東半島の地名あれこれ」より)

まとめ

「麻」が付く地名は、日本全国いたるところにあります。ここに挙げたものは、ごく一部です。小字などになるともっとあると考えられます。地名の由来を知ることは、その土地の歴史を知ることでもあります。
あなたの近くに「麻」のつく地名があれば、その由来を探ってみてはいかがでしょう?

 合わせて読みたい記事はこちら↓ 
引用元

常陸国風土記:https://japanknowledge.com/introduction/keyword.html?i=475

少年少女のための鹿沼の地名:http://a11234842.travel-way.net/ttt002.html

群馬県多野郡神流町麻生の由来:「万場町史」より

神奈川県川崎区麻生区:https://www.city.kawasaki.jp/170/page/0000023518.html

新潟県十日町市麻畑の由来:「青麻の生産と流通」より

富山県高岡市麻生谷の由来:「石堤村史」より

美麻村:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BE%8E%E9%BA%BB%E6%9D%91

愛知県豊川市麻生田町の由来:「麻生田村史」より

三重県松阪市御麻生薗町の由来:「伊勢神宮」文献

滋賀県東近江市上麻生の由来:「滋賀の伝説4 おびのかけはし」より

鳥取市国府町麻生の由来:「鳥取県地名辞典」より

岡山県備前市麻苧那:https://www.okayamania.com/chimei/bizen/asouna.htm

徳島県吉野川市麻植塚:https://www.topics.or.jp/articles/-/7755#:~:text=%E9%BA%BB%E6%A4%8D%E9%83%A1%E3%81%AE%E5%90%8D%E7%A7%B0%E3%81%AF,%E9%BA%BB%E6%A4%8D%E9%83%A1%E3%81%AF%E6%B6%88%E6%BB%85%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82

http://blog.livedoor.jp/fumi1202/archives/7099143.html

香川県善通寺市大麻:https://genbu.net/data/sanuki/oosa_title.htm

熊本市清水町麻生田の由来:「くまもと地名散歩」より

愛媛県伊予郡砥部町麻生の由来:「砥部町史」より

埼玉県熊谷市大麻生:https://www.city.kumagaya.lg.jp/smph/about/soshiki/kyoiku/tiikikouminkan/oasou.html#:~:text=%E5%A4%A7%E9%BA%BB%E7%94%9F%EF%BC%88%E3%81%8A%E3%81%8A%E3%81%82%E3%81%9D%E3%81%86%EF%BC%89&text=%E3%82%A2%E3%82%BD%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%AF%E6%B0%B4%E3%81%AE,%E3%81%9F%E3%81%A8%E6%8E%A8%E6%B8%AC%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82%E3%80%8C

千葉県山武市麻生新田:http://fusanokuni.web.fc2.com/gendai/sanmu.html

東京都港区麻布:http://fjnews.jp/%E7%BB%BC%E5%90%88%E6%96%B0%E9%97%BB/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E3%81%AE%E6%A7%98%E3%80%85%E3%81%AA%E5%9C%B0%E5%90%8D%E3%81%AE%E7%94%B1%E6%9D%A5%E3%80%80%EF%BD%9E%E9%BA%BB%E5%B8%83%EF%BC%88%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD%E6%B8%AF%E5%8C%BA%EF%BC%89/#:~:text=%E3%80%8C%E9%BA%BB%E7%94%9F%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%8C%E3%81%82,%E3%81%8C%E9%AB%98%E3%81%84%E3%81%A8%E6%80%9D%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%80%82

奈良県葛城市當麻:http://www.city.katsuragi.nara.jp/index.cfm/21,4554,56,274,html

北海道江別市大麻:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%BA%BB_(%E5%8C%97%E6%B5%B7%E9%81%93)

宮城県加美郡色麻町:https://folklore2017.com/timei900/0073.htm#:~:text=%E3%83%BB%20%E5%AE%AE%E5%9F%8E%E7%9C%8C%E8%89%B2%E9%BA%BB%E7%94%BA%E3%81%AF,%E5%B1%AF%E7%94%B0%E5%85%B5%E3%81%AB%E7%94%B1%E6%9D%A5%E3%81%99%E3%82%8B%E3%80%82

大阪府豊中市石橋麻田町の由来:「角川地名大辞典27 大阪府」より

奈良県宇陀市大宇陀麻生田の由来:「奈良県地名辞典」より

高知県四万十市麻生の由来:「南路誌巻28」より

大分県国東市武蔵町麻田の由来:「大分県地名大辞典 国東半島の地名あれこれ」より

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