麻は、中央アジア原産の一年生植物です。人類が、繊維を得るために栽培した最も古い植物の一つといわれています。
その歴史は、紀元前8000年に、チグリス・ユーフラテス川流域で栄えた文明にまで遡ります。当時、麻が植えられ、利用されていたことが証明されています。
その後、営々と築いてきた人類と麻の関係は、産業革命によって大きく様変わりします。人類の各方面の歴史に多大な影響を及ぼした産業革命ですが、麻産業にどのような影響を与えたのかを考えてみましょう。
産業革命前の麻産業
ヨーロッパの麻産業
約1万年前、人類の麻栽培は、チグリス・ユーフラテス川流意識に端を発しました。その後、麻の栽培は、古代エジプトからローマへ、さらには、ヨーロッパ各地に広がります。ベルギーやオランダでも、紀元前5000年ころの亜麻の種や、紀元前800年ころの世界最古の糸巻きがベルギーで見つかっています。先史時代のスイスでは、湖上生活をしていた民族がリネンの衣料や船の帆のロープを作っていたことがわかっています。
このようにヨーロッパ各地に広がった麻栽培と麻織物は、ヨーロッパの文化の中で脈々と生き続けます。特に、中部ヨーロッパでは、リネンの織物が流通し、麻産業として栄え始めます。
フランスとベルギーの国境付近のフランドル地方は、地理的な条件が、フラックス(リネンの原料の麻)栽培に適していること、紀元前からリネン栽培が行われてきたため、長年にわたって培われてきた技術があることで、最大で最高の麻生産地となりました。
昔、純白のリネンは、上流階級だけのものでしたが、こうして、だんだん一般の人々にとっても身近なものとなっていきました。
今、アンティークリネンとしてもてはやされているものは、当時、花嫁道具として、花嫁と一緒にお嫁入をしたリネンが、大切に使われ、使いきれずに残ったリネンが、現代にまで受け継がれたものです。
リネンをお嫁入り道具とするため、女の子が生まれた家庭では、お嫁入りに備えて、少しずつリネンをためていくという風習があった国もあります。
世界の麻産業
約1万年前のチグリス・ユーフラテス川流域から、ヨーロッパ各地に広がった、麻栽培と麻織物でしたが、世界においても、それぞれの地域の発展を遂げました。
中央アジア原産の麻は、中国、北朝鮮、韓国、そして、タイやミャンマーなど、アジアの人々にとって、麻はとても身近なものでした。
特に、日本では、世界各地と同じように大昔から、麻が大いに利用され、時代とともに発展してきました。
産業革命は、麻産業に何をもたらしたか?
産業革命とは、18世紀半ばから19世紀にかけて、イギリスに始まる綿工業での手工業に替わる機会の発明、さらに蒸気機関の出現とそれにともなう石炭の利用という生産技術の革新とエネルギー変革のことを言います。
18世紀後半から19世紀前半の産業革命によって、ヨーロッパ各国に綿紡織機が普及するまで、亜麻布は、タオル、ナプキン、テーブルクロス、シーツなど室内用品として広く用いられ、当時のヨーロッパにおいては繊維製品=亜麻製品でした。
イギリス産業革命は、綿糸生産と綿織物生産を促進する機械の開発から始まりました。それまで毛織物業と麻織物業を主力としていたイギリスで綿業から工業化が始まったのは、インドから綿花や綿糸を輸入していたからです。
ところが、産業革命によって、イギリスで綿織物業の工業化が開始されると、綿織物は汎用衣料として麻織物と競合関係に入り、やがて麻織物を駆逐していきます。
つまり、イギリス綿業の進展とともに、亜麻製品だけでなく、それまで亜麻製品であった衣類にも綿製品が使われるようになっていきました。
イギリス各地で盛んだった麻産業は、産業革命の進展にもかかわらず、工業化が立ち遅れ、生産地域が限定されていきました。
産業革命後の麻産業
ヨーロッパの麻産業
産業革命によって、イギリスの麻織物産業は、大打撃を受け、駆逐されていきます。ただ、イギリスにおける麻織物業で、工業化に成功したのは、アルスター(北アイルランド)のみという有様でした。
その後、イギリスの隣国、アイルランドでは、アイルランド産の亜麻(フラックス)を使った上質なリネンが生産されるようになりました。アイリッシュリネンは、リネンの最高峰との誉れ高く、ファンが多いです。
麻と言えば、「チクチク、ザラザラした手触り」や「シワになりやすい」というイメージですが、最高級と言われるアイリッシュリネンは、天然繊維の中で、最もしなやかで肌に優しい質感を持っています。
暑い夏、パリッとした麻のスーツを着こなして、汗一つかかず、涼しい顔をしているなんて、かっこいいですよね?
アイリッシュリネンと同様、上質なリネンに挙げられるのが、フレンチリネンです。涼しい気候と豊富な水に恵まれた、フランス北部で栽培された甘辛は、最上級のリネンが作られています。
上質な麻に対する需要は根強く、それぞれの特徴を生かしたリネンが作られています。
世界の麻産業
前章では、アイリッシュリネン、フレンチリネンについて述べましたが、世界の他の地域ではどうでしょうか?
現在、フラックスをもっともたくさん作っているのはロシアです。ただ、1ha当たりの効率や質を考慮に入れると、やっぱりフランスに軍配が上がります。アイリッシュリネンとして名高いアイルランドのリネンも、最近では、フランスの畑で収穫され、ベルギーで繊維に加工されたものだそうです。
さらに、東ヨーロッパでも、リネンづくりが盛んです。特に、リトアニアリネンは、有名です。
まとめ
18世紀後半に、イギリスで起こった産業革命は、人間の暮らしに多大なインパクトを与えました。麻産業にとっても、同様でした。
産業革命は、起こるべくして起こりました。また、産業革命によってもたらされた恩恵も、枚挙にいとめがありません。きっと、長い目で見れば、麻産業にとっても、新しい可能性がもたらされたに違いありません。
引用元
アサ Wikipedia:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B5
麻の歴史:https://asabo.jp/museum/tradition/
リネンと人のかかわりは「紀元前」亜麻(リネン)の歴史を遡る:https://www.teramoto.co.jp/columns/8651/
アジアと麻:http://www.hemp-revo.net/report/asia.html
産業革命(第1次):https://www.y-history.net/appendix/wh1101-000.html
麻と綿が紡ぐイギリス産業革命:https://www.mode21.com/4623066096-2/
リネン生地の種類ってどれぐらいあるの?:http://www.rolca.net/blog/linen-clothes-care/170.html