
日本人には、あまりなじみのない聖書ですが、聖書は、世界一のベストセラーです。なんと発行部数は、億を超えていて、ギネスブックにも載っています。
なぜ、それほど聖書が読まれているかと言うと、聖書は、キリスト教は言うに及ばず、ユダヤ教やイスラム教でさえ経典として取り扱われることがあるからです。
今、英語で、歴史=historyということは、誰もが知っていますが、historyとは、His Story、つまり、彼の歴史と言うことです。彼とは、もちろん、キリストのことです。聖書では、キリストのストーリーを通して、神について、人間について、神と人間の関係についてなどが説かれています。
そんな聖書の中に、麻が多く登場します。聖書では、麻はどのように描かれているかを探りたいと思います。
聖書に登場する麻

磔刑後のキリストの遺体は、亜麻布に包まれた!
一番最初にご紹介するのは、キリストが磔刑(たっけい、いわゆるはりつけの刑)に処せられた後、遺体は、清くて上等の亜麻布に包まれたシーンです。
”夕方になってから、アリマタヤの金持で、ヨセフという名の人がきた。彼もまたイエスの弟子であった。この人がピラトの所へ行って、イエスのからだの引き取りかたを願った。そこで、ピラトはそれを渡すように命じた。ヨセフは死体を受け取って、きれいな亜麻布に包み、岩を掘って作った彼の新しい墓に納め、そして墓の入口に大きい石を転がしておいて、帰った。”(マタイによる福音書 27章57-60)
十字架刑は、当時においてもその残忍性で反逆者のみが受けた刑で、両手首、両足首を釘で打ち付けました。さらに、キリストにおいては、死を確認するため、兵士が槍でわき腹を突き刺しました。そんな傷ついた体をやさしく包み込んだのが、亜麻布だったわけです。
これは、聖書の代表的な亜麻布が出てくるシーンですが、聖書に出てくるあらゆる衣料繊維原料のなかで、亜麻は、最も高い頻度で出てきます。麻関連は、なんと99回に及んでいるそうです。
亜麻布を脱ぎ捨てて、はだかで逃げた!
”ある青年が、素はだに亜麻布を一枚まとったままで、イエスについて行ったところ、人々は彼を捕えようとした。すると、彼は亜麻布を脱ぎ捨てて、はだかで逃げた。”(マルコによる福音書14-51)
この青年は、マルコだと言われています。「素はだに」とあえて書いているので、この亜麻布は、一般的には下着の上に羽織るものであったのだろうと考えられます。
聖書の時代の麻

人類が繊維をとるために最初に植えたのは麻
麻は、中央アジア原産の一年生植物です。人類が、繊維を得るために栽培した最も古い植物の一つといわれています。
その歴史は、紀元前8000年に、チグリス・ユーフラテス川流域で栄えた文明にまで遡ります。当時、麻が植えられ、利用されていたことが証明されています。
さらに、時代が進むと、エジプトのピラミッド内部の壁画には、亜麻を収穫する風景が描かれていますし、ミイラを包む布は、麻布でした。
聖書に登場する亜麻、亜麻布
“上等の亜麻布の衣を彼に着せ”(創世記41-42)
エジプトの王パロがヨセフに栄誉を与えようとして、亜麻布の衣を着せています。つまり、亜麻布は、地位と名声の象徴でした。
”雹によって、亜麻と大麦は打倒された。大麦は穂を出し、亜麻は花が咲いていたからである。”(出エジプト記9-31)
聖書に描かれた古代において、亜麻が食料作物とともに栽培され、それから織った亜麻布が、王族から民衆まで広く用いられていたことがわかります。
”亜麻布の長い服を着け、その下に亜麻布のズボンを履いて肌を隠し、亜麻布の飾り帯を締め頭に亜麻布のターバンを巻く。これらは聖なる衣服である。」(レビ記16-4)
まさに、亜麻布づくしで、まるで現代の中東地方の人々の装いです。
聖書ではどのように麻が描かれているか?

エジプトのミイラを包む布は、麻布でした。先ほども書いたように、磔刑後のキリストの遺体を包んだのも、清らかな亜麻布でした。その後、亜麻布を残して、キリストはよみがえったと聖書は続きます。
麻織物は、古代エジプトの時代にはすでに存在していました。ナイル川の岸に生えていたので、エジプト人はそれを神聖なものとみなし、神々が亜麻の衣を着ているとさえ考えていたようです。聖書においても、亜麻布=神聖なものと考えられていたことは明らかです。
現代においても、上質な麻布は、高く評価され、とても高価です。麻の繊維は、肌触りが涼しくて、快適なので、聖書に描かれている人たちは、麻布をとても重宝していたに違いありません。そのうえ、麻布の特徴として、洗濯が簡単で、汚れにくいので、清潔さと衛生のために衣を洗うことを規定したイスラエルの律法にかなった織物だったといえます。
”花嫁は、光り輝く、きよい麻布の衣を着ることを許された。その麻布とは、聖徒たちの正しい行いである”(黙示録19-8)
聖書の中で、麻布、あるいは亜麻布がいかに特別なものであったかがよくわかる記述だと言えるでしょう。
まとめ
人類は、はるか昔から、麻を利用してきました。
世界中の人々に、大きな影響を与えてきた聖書の中で、その麻は、清いもの、神聖なものとして描かれてきたことを探ってきました。
膨大な聖書の中の、ほんの一部だけを見ただけにすぎませんが、「麻」という視点で、聖書を読むのも、知的好奇心をくすぐられました。この記事をきっかけに、いろんなところで、麻に注目してみてください。
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引用元
世界一読まれている本は聖書:https://zatsugaku-company.com/holy-bilble/
聖書って何?:https://www.calvarykb.org/index.php/bible/2-bible
聖書の引用:https://www.wordproject.org/bibles/jp/
聖書に出てくる綿以外の他の衣服原料:https://blog.goo.ne.jp/soujyakuwakasa/e/79d6a66d583473791eee685ce8801c05
はだかで逃げた:https://blog.goo.ne.jp/kamisanbi/e/4c079f344b394c4b5da33c0e9bc6a54f
太古より人類に愛されてきた天然繊維「麻」:https://asabo.jp/museum/tradition/
麻はなぜそれほど特別なのですか:https://wol.jw.org/ja/wol/d/r7/lp-j/101992449