【新時代の医薬品】希少・難治性疾患に対するカンナビノイド医薬品の有効性

希少疾患・難治性疾患とは患者数が少なく有効な治療がない難病のことです。世界にも7,000種類以上の希少疾患・難治性疾患があり、日本でも約750〜1,000万人に及ぶ患者がいると言われていますが患者数が少ないために治療薬の開発が進まないなどの背景があります。

しかし最近ではこれらの希少疾患・難治性疾患を含めた疾患の治療に対して大麻に含まれるカンナビノイドと呼ばれる生理活性物質の成分を使った治療薬が開発され効果が期待できると注目されています。特に2000年以降では天然大麻から抽出されるカンナビノイド成分のひとつであるカンナビジオール(CBD)の多くが医療的な効果を持つと言われてきています。

今回の記事では希少疾患や難治性疾患に対するカンナビノイド医薬品を使った治療の有効性についてまとめました。

希少疾患・難治性疾患とは

患者の数が非常に少なく有効な治療がない病気のことを希少疾患・難治性疾患といいます。難病ともいわれており、日本では昭和40年代に視神経が侵されるのと同時に脊髄の炎症を合併する「スモン病」が難病という言葉を使うきっかけとなりました。

厚生労働省は難治対策要綱において希少・難治性疾患を以下のように定義しています。

・原因不明、治療方針未確定であり、かつ、後遺症を残すおそれが少なくない疾病
・経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず、介護等に等しく人手を要するために 家族の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病

難病は対象患者数が日本で5万人未満であるとも定義されており、スモン病、ベーチェット病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデスなどの疾病が医療費助成の対象となっています。

難病に対する治療薬や医療機器などの研究や開発は中々進まない

希少・難治性疾患は他の病気と同じく治療の必要性は高いものの、原因不明な疾患も多く患者数が少ないため研究や開発が企業で進まない傾向があります。そのため国が総合的な対策を行うようになり、難病に罹患していると指定された患者は医療費の助成などが行われているのが現状です。

平成27年度末には指定難病患者は約94万人、平成30年4月時点での指定難病は331疾病となっています。

カンナビノイド医薬品は希少疾患や難治性疾患に有効か

希少疾患や難治性疾患に対する治療薬などの開発や研究が中々進まないなかで注目されているのが、大麻に含まれるカンナビノイド成分を使った治療薬です。

カンナビノイド治療薬は医療大麻とも呼ばれ、医療目的のために栽培されている大麻草の成分を使って作られており、特定の医療大麻が合法化された国々で実際に治験や臨床で治療に使われています。

医療用大麻は240種類の疾患に有効といわれており、神経性の疾患や多発性硬化症、てんかんなどの治療で利用する可能性も立証されており、他の疾患でも効果が期待できる証拠もあると言われています。これらの疾患の中には希少・難治性疾患も対象として含まれ、カンナビノイド医薬品(医療用大麻)は特定の疾患に対して有効性が示されつつあるといえます。

CBDを含む治療薬を難治性てんかん薬として承認する国もある

最近では難治性てんかんの治療薬として大麻から抽出した成分で作られた「エピディオレックス」という薬が注目されています。エピディオレックスはCBDを精製したものでTHCはほぼ含まれておらず、2018年に米食品医薬品局(FDA)は難治性てんかんの治療薬として初めて承認しました。この薬は臨床試験を経たあと、難治性てんかんのドラべ症候群やレノックス・ガストー症候群の治療薬として承認され、これまでの治療薬と組み合わせることでてんかん発作を約40〜50%抑えることが期待できると言われています。

ドラベ症候群は重度のてんかん性脳症であり、日本で使える多くの抗てんかん薬を併用してもてんかん発作を完全に抑えることが非常に少ない難病といわれ、重症のてんかんであるレノックス・ガストー症候群も幼児期から小児期に発症して多様で特徴的なてんかん発作があり、難治に経過することが多い病気とされ日本では、この2つの病気は難病に指定されています。

米国以外にもオーストラリアでは治験が実施され、EUでは欧州医薬品庁(EMA)の承認待ちとなっています。2020年1月には英国イングランドでは保険診療としてエピディオレックスが使えるようになりました。日本でも2019年9月に日本てんかん協会がCBD医薬品承認に関する要望書を他学会などと連名で厚生労働大臣宛てに提出しています。

まとめ:カンナビノイド医薬品の有効性は期待されるが法整備が必要

カンナビノイド医薬品(医療用大麻)はハーブ(薬草)として世界の先進国で様々な疾患の治療で使われつつあります。疾患の中には希少・難治性疾患などこれまで治療法が確立されてこなかった疾患も含まれており、今後先進国ではさらに医療大麻が合法化されていく流れがあるといえるでしょう。

一方で日本では大麻は主に産業用として使われており、大麻草の成分で向精神作用のあるTHCなどは規制の対象となっています。THCを含まない一部のCBDオイルを日本で購入することもできますが、医薬品ではなくあくまでも健康食品やハーブとしての使用と位置付けられているのが現状です。

今回取り上げたように難病である難治性てんかんの治療薬としてカンナビノイド医薬品の使用効果が認められ、海外では医薬品として承認される動きがあることからも、日本でも治験や法整備に対する承認が今後より求められていくといえるでしょう。

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引用元

難病情報センター「2015年から始まった新たな難病対策」
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4141

厚生労働省 難治性疾患政策研究事業
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/kenkyujigyou/hojokin-koubo-2019/gaiyo/08.html

国立研究開発法人 日本医療研究開発機構
https://www.amed.go.jp/program/index.html

国際薬政策コンソーシアム(IDPC)「世界各国の医療用大麻の政策と実践」
http://cannabis.kenkyuukai.jp/images/sys%5Cinformation%5C20180528163600-E58B5FB67156756A1AEF6628181C36D0B731B1B620BCB72E8B1FBC1AA4E60F1F.pdf

大友千絵子;米国における医療大麻の現状,ファルマシアVol.52,No.9,2019
https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/52/9/52_863/_pdf/-char/ja

渡辺正仁他;カンナビジオールの治療効果とその作用機序,保健医療学雑誌9(2),2018
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jalliedhealthsci/9/2/9_112/_pdf/-char/ja

朝日新聞デジタル「大麻の成分含むてんかん治療薬国内でも使用可能に」
https://www.asahi.com/articles/ASM3N440PM3NUBQU001.html

公益社団法人日本てんかん協会「厚生労働大臣に「カンナビジオール医薬品(CBD)承認」に関する要望書を提出しました」
https://www.jea-net.jp/news/6700

難病情報センター「ドラべ症候群(指定難病140)」
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4744

難病情報センター「レノックス・ガストー症候群(指定難病144)」
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4889

NHS.UK;NHS to fast-track access to cannabis-based medicine for children with severe epilepsy,21December2019

https://www.england.nhs.uk/2019/12/nhs-to-fast-track-access-to-cannabis-based-medicine-for-children-with-severe-epilepsy/

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