
健やかな毎日の基盤である食生活。しかし度重なるダイエットや摂食障害で「食べること」にまつわる悩みに疲れている人も少なくありません。今回は今話題のウェルネス成分CBDが、症状緩和の希望になるかもしれないという、明るいニュースをお届けします。
摂食障害とはどんな状態?
健やかな毎日を過ごすためには、バランスの良い食事や落ち着いた気持ちでいられることが大切です。しかし摂食障害を抱えている人にとって「食べること」はとてもデリケートな問題で、思うように向き合えないこともあります。
摂食障害は「食べ方」や「体重」への強いこだわりによって、心や体の健康が大きく揺らいでしまう状態を指します。単なる好き嫌いや食べすぎ、一時的な食欲不振とは違い、食べ物が自己評価や気持ちのコントロールに深く結びついてしまうことで、さまざまなつらい症状や健康への影響が生まれる病気です。
摂食障害には、主に以下のタイプがあります。
神経性食欲不振症(拒食症): 極端な食事制限や運動により、低体重になる状態。
神経性過食症(過食嘔吐症): 過食を繰り返し、その後、嘔吐や下剤使用などの代償行為を行う状態。
過食性障害: 過食を繰り返しますが、代償行為は伴わない状態。
ARFID:「やせたい」という自覚はないが、食べ物に嫌悪や恐怖感を持つ
このまま症状が続いてしまうと、体に大きな負担がかかり命の危険につながる場合もあるため、放置せず適切な治療やサポートを受けることがとても大切です。

シドニー大学の調査でわかったCBDと摂食障害の関係
最近の国際調査では、ウェルネス分野で注目されている CBD を含むカンナビノイドが、摂食障害のつらい症状を少しやわらげる可能性があることが示されました。
シドニー大学が中心となって行われた国際調査では、83か国・7,600人以上の参加者の回答をもとに、摂食障害にまつわる症状を軽くするためにどんな工夫や自己ケアが行われているのかを調べました。回答者は主に女性(94%)で、オーストラリア(30%)、英国(21.3%)、米国(18%)など英語圏の出身者です。
この研究ではさまざまな種類の摂食障害を持つ人たちが、処方薬や市販薬をどのように使っているのか、そしてそれらが心の状態や症状にどんな影響を与えていると感じているのかにフォーカスしています。
調査に参加した人々の摂食障害の内訳は、
- 神経性無食欲症(40%)
- 神経性過食症(19%)
- 過食性障害(11%)
- ARFID(回避・制限性摂食障害)(9%)
となっており、約3分の1は正式な診断はされていないものの、摂食に関する深刻な苦痛を抱えていると自己申告しています。
調査の結果、大麻草に含まれる成分であるカンナビノイドについて「症状が楽になった」と感じたという声が多く寄せられ、特に、拒食症などのように食事を制限してしまうタイプの摂食障害では、ポジティブな変化を実感したと答える人が比較的多かったことが分かりました。
なぜカンナビノイドが役立つのか?
100種類以上ある大麻草由来のカンナビノイドの中でも、精神を高揚させる作用がなく、副作用もほとんどないCBDには大きな関心が集まっています。今回の調査でもカンナビス全体が高く評価されたことから、研究者たちはCBDを単独で摂食障害の治療に活かせる可能性に注目するようになっています。
さらに、研究チームはCBDを用いて若い世代の重度の食欲不振症にどのような効果があるかを検証する予備研究も現在進めており、その結果がまもなく公表される見通しだと報じられています。
食へのポジティブな感覚を取り戻す
摂食障害のサポートとして大麻由来の成分・カンナビノイドが注目される背景には、この成分が「食べ物の魅力や楽しさを高める」可能性があることが示唆されている点があります。特に拒食症では、食欲の低下や食事に対する楽しみ・幸福感の減少が大きな問題の一つとなっています。
通常の人が「美味しいものを食べる」時に感じる満足感や喜びは、脳の報酬系(ドーパミンなど)によって生まれます。しかし拒食症などの摂食障害の場合では、この食に対する快感や食欲のシステムがうまく機能せず、食べることが報酬(=良いこと)と感じられなくなっていることが、病気の中心的な問題の一つです。
もしカンナビノイドが食事に対するポジティブな感覚を取り戻す手助けをするなら、摂食障害を抱える人が「食べることは怖いこと」ではなく「食べることは嬉しいこと」と感じられるようになる大きなサポートになります。これにより、食事への抵抗感が和らぎ、栄養回復への道が開ける、つまり症状の改善と健康回復への重要な一歩となることが期待されているのです。
食の悩みと心のバランス
CBDが摂食障害の症状緩和に役立つ可能性の理由の1つとして、心の緊張や不安を和らげる働きも挙げられています。摂食障害を持つ人たちが食べることに対して抱く強い恐怖やストレスを、CBDの作用が軽減することで、より穏やかな気持ちで食事に向き合える可能性があるのです。
さらにCBDには、身体の不快感や過敏さを和らげたり、気分の落ち込みをやさしく支えたりする作用があることも示唆されています。また緊張や不安による不眠を改善する効果も報告されています。
これらの働きは、私たちの心や体の状態を自然に調整する「エンドカンナビノイドシステム(ECS)」と呼ばれる仕組みに関わっていると考えられています。ECSは、気分・食欲・ストレス反応などをバランスよく保つ役割を持っており、複合的なサポートを通じて、摂食障害に伴う心身のつらさを軽減させる可能性について、現在も研究が進められています。

ポジティブな未来への一歩に
CBDを摂食障害の治療に取り入れるには、今後も多くの研究や臨床試験が必要です。それでも、現行の治療だけではつらさが続く方にとって、自然由来の成分であるCBDが将来の選択肢のひとつとして注目されているという事実は、そっと心を支えてくれる希望になるでしょう。
摂食障害に悩む人は、自分だけで気持ちを抱え込んでしまいがちです。しかし、食べることや気持ちのコントロールがつらく感じたときには、早めに専門家に相談することで、適切なサポートを受けることができます。
※本コラムはCBDを摂食障害の治療薬として推奨するものではありません。CBD製品の使用を検討される際は、必ず医師にご相談ください。
<参考資料>
https://www.sciencedaily.com/releases/2025/07/250724040940.htm

