元自転車ロードレース選手のフロイド・ランディス氏がCBDブランドを立ち上げるなど、自転車競技の世界でも話題になっている大麻グッズ。今回はサイクリングをはじめとするスポーツとCBDの関係についてご紹介します。
アスリートにも嬉しい成分CBD
スポーツ好きにもメリットがいっぱいの大麻由来製品のカンナビジオール(CBD)。2018年にスポーツ競技を促進・モニタリングする世界アンチドーピング機構(WADA)がCBDを禁止薬物リストから除外したことをきっかけにして、アスリートたちの注目を一気に浴びるようになりました。現在ではテニスや野球、ラグビーなど様々なジャンルのスポーツでトレーニング後のリカバリーなどにCBDを利用する人が増えており、フィットネス雑誌などでも特集が増えています。
大麻由来製品ということでCBDの使用に不安を覚える人もいるのですが、依存性や中毒性は見られず、WHO(世界保健機関)も2017年に「CBDは乱用や害を及ぼさない」という見解を発表しています。現在はプロのアスリートたちも規制対象物質のTHC(※)が混入していない限り、CBD製品の使用が認められています。ですからCBD製品を使用してもドーピングとはみなされず、安心して使うことができるのです。
※THCは「テトラヒドロカンナビノール」の略で、大麻草に含まれる成分の中でも精神作用を引き起こす働きで知られています。大麻がドラッグとして喫煙されるのは主にTHCを体内に取り入れるのが目的です。
スポーツにどんなメリットがある?
スポーツ生活にCBDを取り入れたいと考えるアスリートやフィットネス好きが増えていますが、実際にどのようなメリットがあるのでしょうか。
CBDには炎症を抑え、様々な痛みを軽減させる作用があり、スポーツで体の特定の部分に負担がかかった箇所、競技中の怪我などによって生じる痛みに働きかけることができます。最もポピュラーな使い方はトレーニングや試合後の回復を助け、筋肉疲労や痛みを緩和すること。
また心身をリラックスさせる効果もあるので、試合前のストレスや緊張状態を軽減したり、不安や緊張からくる不眠を和らげたりするのにも役立ちます。良質な睡眠は疲労回復と体の細胞を修復するために欠かせない要素です。
体内のバランス調整機能に働きかける
CBDは、人間の体内に存在する神経や免疫系などのバランス調節を行うエンドカンナビノイドシステム(ECS)に働きかけることで効果を発揮します。エンドカンナビノイド受容体は、脳および神経系の中のみに存在するとされていましたが、研究が進むにつれ、肌や細胞、骨、脂肪、内臓、血管など、身体中のあらゆる場所に存在することがわかってきました。このためCBDは粘膜吸収、食べる、飲む、肌に直接塗るなど様々な形で取り入れても効果を発揮します。
基本となるのはヘンプなどから抽出されたCBDをココナッツオイルやヘンプオイルなどのベースオイルとブレンドし使いやすくしたCBDオイル。舌下粘膜から直接吸収させ血管内に吸収させることで、CBD配合のドリンクやスナックのように飲んだり食べたりするよりも迅速に全身に効果が現れます。またクリームやジェル状のコスメや筋肉疲労用のCBDクリームは肌の炎症を抑えて筋肉炎症を鎮め、リカバリーを早めてパフォーマンス向上にもつなげることができます。
オピオイド中毒を克服した元ツール・ド・フランスのチャンピオン
世界最高峰の自転車レースツール・ド・フランスで勝者となったこともある元プロ自転車選手フロイド・ランディスは、事故で股関節置換手術を受けたあとに服用していたオピオイド系鎮痛剤の中毒を抜け出す過程でCBDに出会ったと語っています。
オピオイドはモルヒネに似た作用を示す物質で、痛み止めとして使われます。しかし優れた効果はあるものの常習性が高く、依存症によって心身にダメージを与えて命を落とすケースも報告されています。
ランディス氏は中毒に陥ることなく鎮痛効果を得られるCBDの効果を知り、自らの体を通じてその効果を実感したのちCBDブランド「Floyds of Leadville」を創設、アスリートを支援しています。
ランディス氏の目的は、サイクリストほかアスリートのリカバリー補助や故障のアフターケア。そして中毒性のある処方薬の代替品として、より安全なCBD製品を普及させることです。米国自転車協会の会員向けに製品の割引を行うなど、様々なプロモーション活動を行っています。
サイクリストだけでなく、自転車にもいい
またCBDを自転車ケアグッズに配合した商品も登場しています。米国の大麻産業が盛んなコロラドスプリングズに本拠を置くGoat Head Bicycle社はCBDブランドのTwisted Spokeと協力して、CBD配合の自転車用タイヤシーラントを提供しています。
Goat Head Bicycleは、天然ラテックスとバーミキュライトを使用した環境に優しいチューブレスタイヤシーラントを長年製造してきた地元メーカー。同社はタイヤシーラントにCBDを配合することで、
●漏れを止めるだけでなく、CBDの抗炎症作用によってゴムの早期摩耗を防ぐ
●タイヤのしなやかさが増す
●クッシュコアがさらに柔らかくなる
●THCを含まないため全米全ての州においてレースでの使用が承認され、合法である
といったメリットを紹介しています。
まとめ
パフォーマンス向上に心身のアフターケアだけでなく自転車メンテにまで役立つというCBD。CBDブランドが協賛するスポーツ大会もたくさん登場しています。これからもサイクリングだけでなく、様々なスポーツを楽しむ人にも心強い見方になってくれそうです。
<参考資料>
https://www.cxmagazine.com/goat-head-bicycle-new-cbd-tubeless-tire-sealant-april-1-2021