世界的な食料・飲料メーカーのペプシコが、ドイツでヘンプ入りエナジードリンクを発売しました。大手でもいよいよヘンプ関連商品リリースの兆しが見られるようです。
ペプシコ初の試み
ペプシコーラやスナック菓子ドリトスなど世界的な人気商品で知られる食飲料メーカーのペプシコが、ヘンプ成分配合のエナジードリンク「ロックスターエナジー+ヘンプ」をドイツで発売しました。同社にとって麻成分入りのドリンクは初の試みになります。
「ロックスター」は、2001年に発売開始した米国発のエナジードリンクで「アスリートからロックスターまで」をコンセプトに、アクティブなライフスタイルを送る人々向けのドリンクを展開し、これまで米国を始めヨーロッパや中東、オセアニアなどで販売されてきました。世界中で30種類以上のフレーバーを展開し、同じく米国発の人気エナジードリンク「モンスター」とはライバル関係にあります。
この「ロックスター」は2020年3月に38億5000万ドルで買収され大手ペプシコ傘下に。その後リブランディングを経て再び成長を続けてきました。ドイツでも人気は高く、エナジードリンク部門で35%のシェアを誇っています。
今回ドイツで販売されたのは、このオリジナル「ロックスター」ドリンクにトレンド成分の麻種子抽出エキスを加えた新商品。「オリジナル」「トロピカルバースト」「サボテン」の3フレーバー展開で、トレードマークのゴールドスターが大きくプリントされた缶が特徴です。
オリジナルの「ロックスター」ドリンクと同様、ジンセン(朝鮮人参)、ガラナ、ビタミン B、カフェイン、砂糖、タウリンに加えてトレンドである麻種子の抽出成分が配合され、2021年4月よりドイツ国内で発売を開始しました。グローバル展開についてはまだ未定ですが(2021年5月現在)ドイツ国外でもニュースとなっておりファンの注目を集めています。
またパンデミックがワクチン普及によってようやく落ち着きつつある欧州では、レストランやスポーツスタジアム、映画館などが再開しつつあり消費者の行動が大きく変化しつつあります。人々の動きが活発になるにつれ、エナジードリンクの需要も再び増えていくものと予測されています。
麻抽出成分が人気の理由
麻関連製品はマーケティング業界でFMCG(※)とよばれる比較的短期間で消費される日用消費財のカテゴリーで2021年の大きなトレンドであると指摘されています。またドイツの400万以上の世帯が既にある種の麻関連商品を購入しているといわれます。
産業用ヘンプとマリファナ両方に含まれる薬理成分CBD(カンナビジオール)は、美容や健康業界でブームとなっている成分で、心身がリラックスしたり、不安やストレス症状・炎症などが緩和されたり、不眠や慢性痛の改善をもたらすと言われています。
これはCBDをはじめとする、麻に含まれる成分カンナビノイド類が、人間の体内に備わった薪炭調節機能エンド・カンナビノイド・システム(ECS)に働きかけるためです。ECSは食欲、痛み、免疫調整、感情、発達と老化、神経保護、認知と記憶などといった様々な機能のバランス調整を司っています。タンパク質共役型受容体であるカンナビノイド受容体CB1、CB2などで構成され全身に分布しており、細胞同士のコミュニケーション活動を支えています。
麻にはほかにも100種類を超えるカンナビノイドを有しており、大麻草が持つさまざまな薬理効果を生み出しています。中でもCBDは依存性もなく健康効果を享受できるとあって、ブームが白熱しています。
ただしカンナビノイドの中にはTHC(テトラヒドロカンナビノール)のように酩酊状態を引き起こすため法律で規制されている成分も含まれています。
ただし産業用に使われるヘンプ=麻はTHC成分が0.3%以下の品種と厳密に定められているので信頼できるメーカーの商品であれば、安心して使用することができます。
ちなみにTHCは規制されているとはいえ必ずしも悪者・毒物というわけではなく、病気の改善や治療に役立つ様々な効果も報告されています。実際に医薬品として使用されているものもありますから、あくまでも「どのようにして使うかが肝心である」という点を留意しておくべきでしょう。
※FMCG=Fast Moving Consumer Goodsの略で飲料、食品、化粧品などの比較的短期間で消費される製品(日用消費財)のことを指します。
どのように抽出される?
このような食・飲料に使用される麻の成分はCO2抽出法、または超臨界二酸化炭素抽出法という過程を経て抽出されます。主に高圧力と超低温の環境で二酸化炭素を用いて成分を分離したのち、医薬品からサプリメント、コスメなどの用途に産業利用されます。低温で分離した場合は、麻の栄養価や香りも失われにくいうえ安全性が高く、質の高い抽出が可能な方法とされています。二酸化炭素のみで化学薬品を使わない点でも不純物が少なく、安心して利用できます。
麻はほかにも種子を食用にすることができます。七味唐辛子に入っている麻の実が日本では古くから親しまれていますが、この麻の実を挽いて粉にして小麦粉のようにして使ったり、水とブレンドして豆乳のように「ヘンプミルク」を作ることもできます。
繊維質や必須脂肪酸であるオメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸をバランスよく含み、ビタミン、ミネラルも含んだスーパーフードとしてメディアに登場することも。良質なたんぱく質を豊富に含んでいるため、プラントベース・ブーム真っ只中の欧米では、乳製品ベースに変わる植物性プロテインパウダーとしてアスリートやワークアウト好きにも愛用されています。
まとめ
どちらかと言えばリラクゼーション・ドリンクやビールやワインなどのお酒に配合されることが多かった麻由来の成分が、エナジードリンクにブレンドされるというのは画期的。
エナジードリンクでシャキッと目覚め元気をもらうだけでなく、ついでに健康効果もゲットできる。疲労回復や栄養補給を目的に飲むエナジードリンクはまだまだイノベーションの可能性に溢れているようです。
<参考資料>
https://www.beveragedaily.com/Article/2021/04/08/PepsiCo-launches-Rockstar-Energy-Hemp-in-Germany