「大麻」と聞くと、皆さんは何を思い浮かべますか?
おそらく「薬物中毒」や「怖い薬」、「毒物」といった単語を連想する方も少なくないのではないでしょうか。
それでは「麻」だったらどうでしょう?
大麻が危ない薬物として認識される時代は、すでに終わりを迎えかけています。世界的に大麻は病気を克服するための薬あるいはハーブとして医療機関から処方され、医療や研究の場だけでなく政治的な場でも大麻の有用性について語られる機会が増えてきました。アメリカ合衆国大統領が、親しみとユーモアを込めて「大麻でも吸おう」と発言するのも今は昔、現在は州知事が真剣に大麻の合法化を表明し、それが実現する時代です。
当記事をご覧いただけば、大麻が我々の暮らしにいかに大きな恩恵を与えるものなのかがわかるでしょう。
実は私たち日本人にとても身近な大麻
「大麻」というとネガティブなイメージが先行するかもしれませんが、「麻」という言葉には抵抗を感じない人がほとんどではないでしょうか。それもそのはずで、麻は古くから私たち日本人にとても馴染みのあるものでした。かつてはしめ縄の素材として麻が使われており、麻は神事に欠かせない大切な道具の一つだったのです。
身近なところを例にあげるなら、七味唐辛子もその一つ。七味唐辛子に入っている、3mm大の小さな種を見たことがあると思います。これは麻の実で、いわゆるヘンプシードというもの。つまり大麻の種なのです。栄養たっぷりで美容効果にも期待できるヘンプシードオイルも同様、大麻の種から抽出したとても体にいいオイルです。
麻製品は食品だけでなく、日本人の生活用具を作る素材として古くから欠かせないものでした。今でもバッグやランチョンマット、ターバンなどのファッションアイテムなどにもしばしば麻製品見られます。言うまでもなく麻紐は大麻草の茎などから取り出した繊維のこと。麻つまり大麻は、私たちにとってとても身近な存在なのです。
大麻エネルギーとしての活用
もし「大麻をエネルギーとして活用できる」と言ったら、あなたは信じますか?
CO2による温室効果をはじめ、環境問題が社会問題としてグローバルに取り上げられる機会が増えるにつれ、人類はエネルギーの活用方法をずいぶんと工夫し始めました。石油など有限資源に頼るのをやめ、電気化が進められているのもそうした兆候の一つ。これは特にオール電化に代表される建築や不動産業界と、自動車業界に顕著です。
2020年9月、フランスの企業が麻を利用してエネルギーを生産する試験を開始しました。2022年には本格的な生産を開始する見込みだと発表し、注目を集めています。
しかし実は、大麻を燃料に変換して作られるバイオ燃料(ヘンプバイオマス)は、すでに実用化されている技術なのです。
さまざまなバイオガソリン
ヘンプバイオマスの理屈を簡単に解説すると、大麻の種や茎などからオイルを抽出し、そのオイルのうち工業用に適したものを加工して自動車などのエネルギーとして利用するというものです。ヘンプに限らず、とうもろこしなども同じ手法でエネルギーとして利用されており、これらのガソリンを「バイオガソリン」といいます。
バイオガソリンはCO2を排出しない(厳密にいうと「もともと光合成により大気中のCO2を消費している性質上、燃焼によって排出されたCO2は排出量として計上されない)ため、環境に優しい燃料として各所で採用されています。
大麻やとうもろこしがバイオガソリンに適している大きな理由として、栽培のしやすさと大量生産に向いている性質があげられます。
とりわけ大麻は特別な肥料などを与えなくても正常かつ早く成長し、大量に収穫することができます。生命力と繁殖力が強いため、オイルの原料となる種子や茎を効率的かつ大量に収穫することができるのです。また、広大な土地で広く栽培しやすいというのも、ヘンプバイオマスの汎用性を裏付けます。
バイオガソリンにはこのほか、さとうきびや油やし、キャッサバなどの栽培作物系のほか、生ごみや家畜の糞尿などといった廃棄物系もあります。
こうしたバイオガソリンは、日本最大手の石油会社である出光やコスモ石油、ENEOSなどの一部のガソリンスタンドで販売されています。
人類がヘンプバイオマスを必要とするとき
エネルギー問題は、国際的に深刻な社会問題として認識されています。なぜなら、現在我々人類は、エネルギーの大半を石油に頼っているからです。しかし有限資源である石油は、理論上ではいつか枯渇し、世界に十分な量を供給できなくなってしまいます。
世界的な石油生産量が最大値に達する時点をシミュレーションする「ピークオイル」や気候の変動などにより、石油が一気に高騰することも考えられるでしょう。さらに石油生産量が下がっていけば、事態はいっそう深刻です。
こうした状況の中で人類が石油に代わるエネルギーを模索するのは当然の流れで、ヘンプバイオマスはバイオ原料の中でも、とりわけ有力な代替候補としてあげられます。なぜなら、大麻は世界的な供給を見据えた大規模で栽培でき、効率的にエネルギーを生産できるからです。つまり低コストでの大量生産を実現できるわけですから、石油よりも安価に利用できる可能性があります。
これはあくまで理論上での試算に過ぎませんが、少なくともこれから世界のエネルギー問題がより深刻さを増していけば、こうした代替エネルギーについて国際的な場で積極的に語られる機会が増えていくでしょう。
まとめ
今、世界は医療大麻の承認に向けて大きく動いています。大麻が医療の現場で人類に大きく貢献することが、多くの国や多くの人々が理解し始めている証ではないでしょうか。
そして大麻は、医療だけでなくエネルギー産業においてもまた私たち人類に大きく貢献するポテンシャルを秘めています。
可能性にあふれたこの資源について、我々人類はいっそうの理解を深めていく必要があるでしょう。
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情報引用元(参考文献、URL、URKページ タイトル記載)
https://hemptoday.net/french-energy-startup/
https://www.ooasa.jp/know/index.php?fuel
https://www.idss.co.jp/business/nenryo/bio/