植物性カンナビノイドとは、アサ科に属する1年草のアサ(Cannabis sativa L.)に含まれる生理活性物質です。その種類は120数種にもおよぶとされ、それぞれに特徴が見られます。
今回は主要な植物性カンナビノイドの種類と特徴について説明します。
植物性カンナビノイドの種類
植物性カンナビノイドは「フィトカンナビノイド」とも呼ばれ、現在では120種類以上の存在が明らかになっています。カンナビノイドは植物性以外にも「合成カンナビノイド」や「内因性カンナビノイド」があり、それらと分けて考えるために「植物性カンナビノイド」と呼ばれています。
もともと大麻成分の研究は19世紀半ばころから始まり、まずカンナビノール(以下CBN)の構造が確定し、その後テトラヒドロカンナビノール(以下THC)やカンナビノール(以下CBD)の構造が明らかになっています。そのためこれらの3つの種類のカンナビノイドが主要な植物性カンナビノイドと呼ばれています。
120種類以上の存在が確認されている植物性カンナビノイドのうち、最もよく知られているのは大麻(マリファナ)成分のTHCと精神作用の少ないCBDとなっています。
植物性カンナビノイドの種類はさらに細かく分類できる
120種類以上ある植物性カンナビノイドはさらに細かく分類することができます。
- △9-THC 26種類
- △8-THC 5種類
- CBDタイプ 7種類
- CBNタイプ 11種類
- CBC(カンナビクロメン)タイプ 8種類
- CBG(カンナビゲロール)タイプ 16種類
- CBT(カンナビノトリオール)タイプ 10種類
- CBE(カンナビエルソイン)タイプ 5種類
- CBL(カンナビシクロール)タイプ 3種類
- CBND(カンナビノジオール)タイプ 2種類
- 未分類 22種類
植物性カンナビノイドの化学研究は、近年さらに進んでおり今後も新たな成分が発見され、その有効性を見出せることが期待されています。
主要な植物性カンナビノイドの特徴
ここからは主に薬理作用がわかっている、主要な植物性カンナビノイドであるTHCやCBD、CBNの特徴を挙げていきます。
THC(テトラヒドロカンナビノール)タイプ
カンナビノイドの一つの種類である、テトラヒドロカンナビノール(Tetrahydrocannabino=THC)は△9-THCが26種類、△8-THCが5種類、合わせて31種類の存在が知られています。
△8-THCは△9-THCよりも作用が弱いものの、同じ薬理的作用が期待できます。
THCは大麻草の主な成分としてカンナビジオール(CBD)とともによく知られています。強い幸福感(多幸感)などをもたらす精神活性作用があり、乾燥した大麻にはテトラヒドロカンナビノールが3〜25%含まれるとされています。
体に作用するときには、まず脳や全身にあるカンナビノイド受容体にくっついて神経保護や痛みを和らげる、吐き気を抑えるなどの様々な作用を及ぼします。
日本では法律によって麻薬指定があるため使用や臨床試験(特別な場合を除く)などは使用や所持等は禁止です。
CBD(カンナビジオール)タイプ
カンナビジオール(Cannabidiol)は「CBDオイル」などで日本でもよく知られている成分です。CBDタイプの植物性カンナビノイドは現在7種類の存在が確認されています。
様々な研究において不安を抑える作用やてんかんを抑える作用、神経保護や抗けいれん作用が確認されており、上述のTHCとは違って精神作用を導かないのが特徴です。
海外では医薬品としても広く認知されてきており、日本でも麻の茎や種などから取られたCBDを使った商品を健康食品として利用することは可能となっています。
CBN(カンナビノール)タイプ
CBNタイプの植物性カンナビノイドは11種類確認されており、大麻草にわずかに含まれるカンナビノイドです。
大麻草の中に見られるCBNはTHCやCBDが空気酸化を受けて生まれる二次的な変換物と考えられており、大麻が乾燥して時間が経つと大麻草に含まれる量が増えるといわれています。
CBNの精神作用はTHCに比べると10分の1程度であり、THCのような精神活性作用をほとんど導かないことも特徴です。そのため精神的な副作用が少ない治療薬として痛みを和らげたり、炎症を抑制したり、不眠症などの睡眠を補助する作用を期待して使われています。
まとめ
最近のさらなる化学技術の進化によって植物性カンナビノイドの研究がますます進んでおり、今後も新たな種類の植物性カンナビノイドの発見も起こりえます。
これから発見されると予測される植物性カンナビノイドにTHCやCBDに見られるような有効な成分を見つけ出すことができるのかが注目されているといえるでしょう。
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引用先
(参考文献)
日本臨床カンナビノイド学会 基礎情報「エンド・カンナビノイド・システム(ECS)」
http://cannabis.kenkyuukai.jp/special/index.asp?id=19132
日本臨床カンナビノイド学会 基礎情報「カンナビノイド(Cannabinoids)」
http://cannabis.kenkyuukai.jp/special/?id=19134
日本カンナビジオール協会 ■Q&A
http://www.j-cbd.org/faq.html
渡辺和人, 正山征洋;大麻成分フィトカンナビノイドの変遷,第一薬科大学研究年報(35),2019
https://core.ac.uk/download/pdf/230133454.pdf