2013年、ウルグアイでの大麻合法化を皮切りに、その後世界で大麻規制緩和の動きが加速しました。数百億ドルの市場規模が予測されている大麻マーケットが経済に与える恩恵は決して小さくなく、それをビジネスチャンスとして捉える者や、犯罪抑止力として政治的な試みを実施する者、消費者として嗜好品を楽しむ者などさまざまな変化を世にもたらしました。
ところが日本の大麻事情は、大麻取締法が1948年に制定されて以来何の進化も変化も遂げていません。時代とともに移り行き人々の価値観や常識、モラルに、日本はこれからどのようにして適応していくのでしょう。
大麻医療研究の妨げになっている大麻取締法
「大麻」と聞くと「薬物」や「犯罪」というキーワードを連想する方はいまだ多いのではないかと思います。大麻取締法制定から現在に至るまで大麻を厳しく取り締まってきた国ですし、あまつさえ「薬物、ダメ、絶対」という価値観のみ周知され、薬物教育が正しく行われてこなかった背景もあるでしょう。
現在では大麻が医療でおおいに役立つことがわかり、世界中で積極的な研究が続けられています。たとえば抗がん剤の副作用を緩和したり、うつ症状などを緩和したりなど、大麻の有用性は実は我々にとって非常に身近で現実的です。
海外では医療用大麻の臨床試験を経て既に実用化されている国がたくさんあります。イギリスでは1998年より医療用としての研究が開始され、2010年からは販売も開始しています。カナダでも2003年から医療用として流通し始め、イギリス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、オランダ、ベルギー、スイスがそれに続きました。アメリカでは嗜好用大麻が2014年より4つの州で合法化されていますが、医療用についても1996年より実用化され今も臨床試験が続けられています。
さて、日本はどうかといいますと、嗜好品として使用するのが違法なのはもちろん、大麻の主成分の一つであるTHCを含む薬品を輸入することができず、臨床の現場などにおいて医療用の研究すらできないのが実情です。大麻取締法によってTHCをはじめとするカンナビノイドを多く含有する部位の利用が全面的に禁止されているためです。
大麻取締法と麻薬及び向精神薬取締法
大麻取締法ではTHCを多く含む花穂や葉など、大麻の部位を規制しています。一方麻薬及び向精神薬取締法ではTHCを規制しています。大麻取締法では大麻の茎や種子を規制対象外としていますが、茎や種子に一定のTHCが確認されれば麻薬及び向精神薬取締法に抵触することになるのです。
また大麻を産業用として(麻製品の原料など)栽培する場合、日本では各都道府県知事に免許を交付してもらい初めて可能ですが、薬物乱用防止の観点から免許を交付されるケースが極めて少ないというのが実態です。
つまり日本では医療用はおろか、産業用大麻の栽培すら難しいということ。
大麻の可能性が無視されているのが日本の現実です。
大麻が研究できないとどうなるのか?
医療は常に人の健康を守るために発展してきました。研究者をはじめ製薬会社や医療現場の人間すべて、新薬の研究に多大な労力と時間をかけて安全性を担保しています。
大麻に医療での有用性があるのは世界規模で明らかになっています。言うまでもなく医療大麻の研究も人の健康や健やかな生活を守るために行われるもの。研究の余地すらなくその可能性から目を背け続けるということはつまり、大麻の効能で救われたはずの人が救われなくなってしまうということにほかなりません。
2015年に「打つ手がない」と医師からさじを投げられた末期がん男性患者が大麻を使用し、起訴された事件がありました。男性は大麻を使用することでがんの痛みが和らぐだけでなく食欲が戻り、腫瘍マーカーの数値が1/20まで減り改善の兆候があったため、大麻の使用は治療目的であり生存権の行使であると主張しました。
この事件は男性の死去により幕を閉じ判決は出ませんでしたが、医療大麻の必要性や現行の法律の問題点を浮き彫りにした事件だったといえます。
もし日本国内での医療大麻研究が発展していれば、彼は救われていたのかもしれません。
まとめ
日本と世界の大麻への研究姿勢には、天と地ほどの開きがあります。法律に背く行為は当然処罰されるべきですが、法律が人々の権利や健康、ひいては生命を救う機会を奪う可能性があるのなら、当然その法律は変えていかなくてはなりません。
大麻取締法が今後どのようにテコ入れされていくのか。それは消費者の大麻に関する正しい知識と正しい行いにかかっています。
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情報引用元(参考文献、URL、URKページ タイトル記載)
http://www.jspm.ne.jp/newsletter/nl_85/nl850101.html
http://cannabis.kenkyuukai.jp/special/index.asp?id=19144