人類の誕生から現在にいたる人類の歴史は、なんと200万年に及ぶといいます。
その中でも、文字が発明され、歴史を知ることができる有史時代は、世界4大文明に始まるとされています。世界4大文明って、世界史で勉強しましたよね?覚えていますか?メソポタミア文明、エジプト文明、インダス文明、黄河文明です。
ここでは、特に、麻との関連が深いメソポタミア文明、エジプト文明を取り上げます。古代文明における麻を考えることを通して、麻と人類のかかわりがわかるはずです。いかに、麻が、人類にとってなじみのあるものなのかを考えてみましょう。
メソポタミア文明と麻
メソポタミア文明とは?
他の4大世界文明と同じように、メソポタミア文明も大きな川の流域に発展しました。メソポタミア文明は、チグリス・ユーフラテス両川流域で発展した世界最古の文明と言われています。
階段型ピラミッドを中心に巨大な都市文明が栄え、農耕の面でも、肥沃な大地、整備された灌漑施設などによって、大いに発展しました。小麦、大麦とともに、亜麻も栽培されていたことがわかっています。
メソポタミア文明より古い麻を発見!
紀元前8000年頃、チグリス・ユーフラテス川流域に発展したメソポタミア文明では、麻が植えられ、利用されていたことがわかっています。つまり、麻と人類のかかわりは、1万年以上前からと言うのが、歴史上の定説でした。
ところが、最近の研究によると、黒海とカスピ海に挟まれたグルジアにある洞穴から、約3万年前の亜麻糸の断片が発見されました。
このことにより、麻と人類の関係は、今まで考えられていた以上に古く、3万年前に遡るかもしれないと考えられるようになっています。
しかし、3万年前の亜麻糸の断片とは!?
メソポタミア文明における麻
麻は、中央アジア原産の一年生植物です。人類が、繊維を得るために栽培した最も古い植物の一つといわれています。
紀元前8000年には、チグリス・ユーフラテス川流域で、リネンのもとになる植物、亜麻が生えていたことがわかっています。
それを、繊維をとるための繊維作物として栽培したのが、世界最古の文明、メソポタミア文明だといえます。
エジプト文明と麻
エジプト文明とは?
エジプト文明も、他の世界4大文明と同じように、ナイル川流域に発展した文明です。エジプト文明と言えば、誰もが、ピラミッドやスフィンクスをイメージするかもしれません。
ナイル川流域のエジプト文明においても、亜麻が栽培されていました。ピラミッド内部の壁画には、亜麻を収穫する風景が描かれています、また、ミイラを包む布は、亜麻布でした。
そして、エジプトでは、世界最古の紡ぎ器が、ファイユーム湖畔で発見されています。亜麻が栽培され、糸に紡がれていました。つまり、BC5000年ごろには、糸を紡ぐ技術が確立されていたわけです。
古代エジプトの神話と麻
古代エジプトの神話の女神イシスは、豊穣の女神であり、ナイル河畔に、大規模なイシス神殿が作られるなど、古代エジプトでは最も崇拝されていました。
イシスの兄であり夫でもある神オシリスが、弟セトに殺されました。女神イシスは、オシリスを包むために亜麻を織りました。亜麻布に包まれて、オシリスは復活することができました。それで、亜麻は、聖なる布と呼ばれるようになりました。
女神イシスの神殿では、白い亜麻のみ身に着けることを許されたといいます。
エジプト文明における麻
古代エジプトにおいては、BC3世紀ごろには、ナイル川流域で生産されたリネンが輸出されるまでになりました。
さらに、古代エジプトにおいては、リネンは、「月光で織られた生地」と呼ばれ、リネン製のカラシリス(巻衣)は、「神に許された」ものとして、神官の衣服や神事に用いられました。つまり、古代エジプト人にとって、リネンとは、とても神聖なものだったのです。
そして、ピラミッドのミイラも、亜麻布によって包まれました。ピラミッド内部の壁画にも麻の収穫風景が描かれています。古代エジプト人にとって、いかに、リネンが大切、かつ神聖なものであったのかがよくわかります。
遺跡に見る麻
ピラミッドと麻
先ほども書きましたように、ピラミッド内部の壁画には、麻の栽培・収穫風景、ならびに紡糸風景が描かれています。さらに、ピラミッドから発掘されたミイラを包んでいた布もリネンです。
暑さが厳しいエジプトでは、薄手のリネンが主な衣服で、簡単なつくりのものが着られていました。男子は腰布、女子は胸から足首までを覆う筒型のワンピース様のものを着用していました。神官や貴族、王族たちは、身分や職業に応じた特別な装飾品を身に着け、一般のものと区別されました。
暑い気候のエジプトでは、衛生面でも、体温の発散と言う意味でも、亜麻素材は、ぴったりでした。
エジプトの人にとって欠かせない亜麻であり、とても神聖なものでもある亜麻は、ピラミッドの壁画から、その一端を覗き見ることができます。
最古のドレスは、5000年前!
古代の人々が着ている洋服と言えば、腰巻や筒型のワンピースのようなイメージがありますが、20世紀初頭にエジプトの墓から見つかった麻のドレスは、とても凝ったデザインでした。
このドレスは、体に巻き付けたり、体を緩やかに覆ったりするものではなく、腕にピッタリ沿う袖とVネックの首元、細かなプリーツの重なりが見事なデザインです。
タルカンの地で発見されたので、タルカンドレスと呼ばれていますが、放射性炭素年代測定によって、5000年以上前のものであることがわかりました。つまり、タルカンドレスは、最も古い織物の衣服であることが、正式に証明されました。
麻製である、世界で最も古い織物の衣服が、現代まで残っているというのは、まさしく奇跡です。このドレスに袖を通した人は、どんな人だったんだろうと、想像が膨らみます。
まとめ
古代文明、特にメソポタミア文明とエジプト文明と麻のと関係について調べました。麻が、いかに当時から人々に欠かせないものであったのか、そして、神聖なものとして、特別視されていたのかがお判りいただけたと思います。
今まで人類が麻とともに歩んできた時間の長さに驚くとともに、これからも絶えることなく、ともに歩んでいくだろうと確信しました。
合わせて読みたい記事はこちら↓
引用元
メソポタミア文明:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%BD%E3%83%9D%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%82%A2
リネンの歴史:https://asabo.jp/knowledge/linen/
エジプト文明と麻:https://handmade-wafu.com/essay/blog/2020/06/22/linen_history_01/
女神イシス:https://astroratio.com/4705/
女神イシス:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%82%B9