【日本神話に登場】神聖なものとして、神事に欠かせない麻の歴史

 日本人の多くは、初詣をはじめとして、家族そろって、神社にお詣りに行きます。また、お宮詣りに始まって、七五三、入試の合格祈願、結婚式など、人生の節目節目に神社に祈りを捧げます。
 神社にお詣りするとき、大きな鈴を鳴らしますが、その鈴縄は、麻の繊維でできています。また、神社の神主にお祓いをしてもらう際に、頭上で左右に振られる「おおぬさ」も、榊の枝に紙垂(しで)を麻ひもで取り付けています。
 このように、神社や神事と麻は、とても密接な関係にあります。この記事では、神事に欠かせない麻について、ご説明します。

日本神話の「天の岩屋」シーンに登場する麻!

「古事記」や「日本書紀」のいずれにも登場する「天の岩屋」のシーンは、日本人なら子どもまでもが知っている有名なエピソードです。
 “スサノオノミコトの暴虐に怒った、アマテラスオオミカミが天の岩屋に隠れてしまいます。そのため、世界は、暗闇に閉ざされてしまいました。困った八百万の神々は、アマテラスオオミカミに出てきてもらう方法について相談し、アマノコヤネノミコトが天の岩戸の前で激しく踊りました。それを見た八百万の神々は笑い、その笑い声を聞いたアマテラスオオミカミが岩戸を開けて出てきました”
 アマノコヤネノミコトが踊った際に持っていたのが、榊の枝に吊り下げたヤサカノマガタマ、ヤタノカガミ、シラニギテ、アオニギテでした。
 シラニギテとは、楮(こうぞ)の繊維で織った布の幣(ぬさ)、アオニギテは麻の繊維で織った布の幣でした。
 このあまりに有名なシーンで、重要な役割を果たす、アマノコヤネノミコトが持つものに、麻でできた幣が使われていることは、とても象徴的です。
 それまでの世界で、麻がいかに神聖なものとして考えられていたかをよく示しています。その後の世界でも、この幣が継承されていきます。

伊勢神宮と麻

大麻(おおぬさ)

 神社で神主にお祓いをしてもらった方も多いかもしれません。お祓いを受けるとき、頭上で左右に振られるのが、祓串(はらえぐし)です。
 榊の枝や白木の棒の先に紙垂(しで)と苧麻(ちょま)、あるいは、その片方をつけたものを祓串といいますが、伊勢神宮では、苧麻だけのものになります。祓串は、大麻(たいま、正式にはおおぬさ)といいます。ぬさとは、麻の古名で、神に捧げる布のことをいい、多くが麻布でした。
 大麻(おおぬさ)とは、罪を祓い除けする神具のことを言います。これは、前章でお話しした天の岩戸の前で、持って踊ったものに由来すると言われています。
 伊勢神宮では、お祓いをつとめた祓串を、箱に入れて、配りました。それを神宮大麻といいます。その後、祓串の御真(ぎょしん)を和紙で包んで、伊勢神宮の神札(おふだ)として配りました。そのため、伊勢神宮の神札は、神宮大麻と呼ばれています。
 ここにも、古来より、日本で信じられてきた、麻の持つ神聖さ、魔除けの力、罪を浄める力を表していると考えられます。つまり、麻は、「穢れを祓う」力を持つものとして大切に扱われてきました。

大嘗祭と麻

 日本の歴代の天皇は、毎年秋に、その年に収穫された新穀などを、天神地祇(てんじんちぎ)、つまりすべての神々に供え、感謝する儀式=新嘗祭(にいなめさい)を執り行っています。
 新嘗祭のうち、天皇が即位後、初めて行う新嘗祭を特に、大嘗祭(だいじょうさい)といいます。皇位継承に際して行う宮中祭祀であり、皇室行事です。
 新天皇が即位され、元号も、平成から令和に代わりました。21世紀の現代も、古代から脈々と続いている大嘗祭が執り行われました。
 令和の大嘗祭については、厳かに執り行われる様子の一端を、TVなどで見られた方もおられるかもしれません。
 その大嘗祭に使われる神聖な神衣、麁服(あらたえ)は、麻で作られます。麻の持つ浄める力が、その役割を大いに果たしています。これは、古来、阿波国(徳島県)で作られていましたが、日本各地の麻栽培が廃れていて、徳島では用意できず、群馬県の麻農家により作られました。
 時代の移り変わりとともに、麻栽培の環境も大きな時代の流れの中にありますが、麻が、神聖なものとして、国の大切な宮中行事で使われるという、麻に対する畏敬の念は、変わらず続いています。

相撲と麻

(第35代横綱 双葉山)

 日本の国技、大相撲には、ファンの方も多いでしょう。最近は、大相撲人気で、年配の方だけでなく、若い女性にもファンが増えてきています。
 そんな相撲ですが、取組前の所作などからもわかるように、いわゆるスポーツとは一線を画しています。つまり、相撲は、土俵の上で力士が組み合って戦う形をとる日本古来の神事に由来します。
 そのため、「古事記」にも、神様同士の相撲のことが描かれています。さらに、人間同士の最古の相撲として、ノミノスクネとタイマノケハヤの取り組みのことも書かれています。
 その後も、農作物の吉凶を占い、五穀豊穣を祈り、神々の加護に感謝するために、神社において相撲を取る風習が生まれました。このように、相撲は、神事としての側面を多く持っています。
 現在、大相撲の横綱が締める綱は、外側が晒木綿の布ででき、中に麻の紐と銅線が入っています。そして、三本の綱が三つ編み状にしっかりとなわれています。この麻ひもを作るのは、力士たちです。「麻もみ」といいます。
 横綱の綱には、神様が宿ったと言われ、縁起がいいものとされています。大相撲では、横綱が締める綱にも、そんな歴史があります。

なぜ、神事に麻なのか?

 日本人と麻とのかかわりは、縄文時代にまで遡ります。その頃より、繊維として衣服に、種子を食用に、種子から油を採り、さらには、陶酔薬や薬として活用してきました。一万年以上の付き合いになります。
 日本では、暮らしに大いに役立つ植物として、麻は、ベニバナ、藍とともに三草の一つに数えられています(ベニバナが木綿になる場合も)。日本人の暮らしの中に、麻は、すっかり溶け込んでいます。
 さらに、麻は、「白くて清浄で潔白、清々しさを表し、穢れを祓う」とされてきました。これが、さまざまな神事で麻が用いられるゆえんです。
 これから、神社などに行かれた際には、あちこちで使われている麻に着目してみてください。神社巡りの新たな楽しみになるかもしれません。
 一方で、麻の成長の早さゆえに、麻のようにすくすく育ってほしいという願いとともに、同時に、魔除けとして、乳児の産着には、麻の葉模様が使われてきました。親の、子供の成長を願う気持ちの表れです。
 植物を植物として見るだけでなく、畏敬の念をもって、麻を取り扱うのは、自然との調和を尊ぶ日本人らしい態度だと言えます。

まとめ

 この記事では、神聖なものとして、神事に欠かせない麻のことについてまとめました。
 古来より、日本人は、麻の持つ力を生かし、麻とともに暮らしてきました。時代の流れとともに、一時期、麻の栽培が廃れたこともありましたが、今、麻への期待、注目が集まっています。
 21世紀の今、地球規模のさまざまな問題が噴出しています。それらへの一つの解決策が、麻栽培であると考えられ、あちこちで麻の復権が始まっています。
 麻の持つパワーに寄り添いながら、21世紀も麻を大いに活用していきたいものです。きっと、麻は、それらの期待に応えてくれることでしょう。

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引用元

https://sunchi.jp/sunchilist/craft/115196
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E8%8D%89
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B8%E6%92%B2#%E7%A5%9E%E4%BA%8B%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%AE%E7%9B%B8%E6%92%B2
https://www.sankei.com/west/news/191112/wst1911120018-n1.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%98%97%E7%A5%AD
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%BA%BB_(%E7%A5%9E%E9%81%93)
https://sunchi.jp/sunchilist/craft/115196
https://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/chiiki/seikatu/miyazaki101/shinwa_densho/029.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%BA%BB_(%E7%A5%9E%E9%81%93)

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