UFCなどのスポーツ団体が、競技の安全性向上を目指して、大麻草やその主成分であるCBDを禁止物質から削除しました。これによりプロ・アマを問わずアスリートの大麻成分の使用がますます一般的になっています。
UFCが大麻解禁。注目が集まる進歩的ポリシー
アメリカの総合格闘技団体UFCが新たなドーピング規制を導入し、大麻を禁止物質から外すと発表しました。この前向きな変更により、スポーツ界における大麻使用についての規制が再び注目を浴びています。
UFCは世界最高水準の総合格闘技団体として知られており、今回の変更では、大麻由来の成分CBD(カンナビジオール)だけでなく、これまで規制の厳しかった成分THC(テトラヒドロカンナビノール)についても罰則を撤廃すると発表しました。
今後はアスリートの体内からTHCの陽性反応が出ても、「アスリートがパフォーマンス向上の目的で意図的に使用したという証拠が存在しない限り」、違反とは見なされなくなります。
つまり、試合当日に勝つことを目的に大麻を摂取するのではなく、オフシーズンにリラックスや怪我の治療のために使用する場合には、ドーピング行為とはみなされなくなります。そしてUFCでは適切な使用をする限りにおいて、大麻はレスラーの健康や安全に悪影響を及ぼすものではないということも確認しました。
この決定は大きな注目を浴び、スポーツ業界全体で再び大麻に対する態度がクローズアップされています。UFC幹部であるハンター・キャンベル氏は、新しいルールが「格闘技界における健康と安全の基準を引き上げるもの」であると述べ、今後も独立・管理されたドーピング検査を続けることで、レスラーが公平で安全な条件の下で競技できるように努めるとコメントしています。
レスラーの健康を守れ!
ドーピングは「スポーツ選手が競技力を向上させるために、指定された物質や手段を使う行為」を指します。主に薬物や非薬物の摂取がその手段に含まれています。ドーピング行為はスポーツの公平と倫理に反する行為とされており、またアスリートの健康を損なう可能性があるため、多くの国やスポーツ団体が検査や厳格な規制を取り入れています。国際的な基準は、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)によって策定され、各国のスポーツ組織はこれに基づいて検査を行っています。
例えば、ドーピング物質としてよく知られるステロイドは、合成された男性ホルモンであるアナボリック・アンドロゲニック・ステロイド(AAS)の一種で、筋肉増強をもたらし、パワーや持久力の向上が見込めます。しかし一方でステロイドの濫用は、アスリートの健康にダメージを与え、心臓病、肝機能の障害、メンタルヘルスの悪化など様々なリスクが報告されています。ドーピング規制は、アスリートが不正な手段で競技するのを防ぐだけでなく、彼らの健康を守ことも重要な目的とされているのです。
米国では産業用大麻の生産が解禁され大麻研究が加速するにつれ、大麻成分は健康やボディケアに良い影響があると考える専門家が増えています。一方、大麻を使用することで健康効果は得られても試合で優位に立つ可能性は低いとされています。このためスポーツ界では大麻成分の使用を認める傾向が急速に広がっているのです。
他のスポーツリーグでは
総合格闘技(UFC)だけでなく、アメリカンフットボールリーグ(NFL)や全米バスケットボール協会(NBA)も大麻に関する規制を緩和しています。NFLは2021年にポリシーを改訂し、選手がオフシーズン(4月から8月まで)の間にはTHC検査を行わないことにしました。
このことにより、アスリートが休暇中に怪我や痛みへの治療に専念できるようにしたのです。
また大麻由来の成分CBD(カンナビジオール)については既に完全に受け入れられており、アスリート以外にも愛用者は増えています。CBDには、炎症や痛みを効果的に和らげる成分が含まれています。
アスリートたちは、一般の人よりも肉体的な負担が大きく、怪我をしやすい状況にあります。また痛みを和らげつつもプレーを続けることも多いため、彼らは時に強力な化学物質を利用することがあります。一方で大麻由来の成分CBDは、通常の化学鎮痛剤よりも副作用が少なく、アスリートが痛みや炎症に対処する際に、より安全な選択肢とされています。またCBDは抽出成分であるため、精神作用を引き起こす成分が含まれていません。CBDを取り入れることで、強力な化学薬品による副作用を軽減し、痛みの管理や怪我の回復を助けることが期待されています。
また大麻成分には神経保護作用も報告されています。この発見はボクサーやフットボール、サッカー選手など、頭部の損傷リスクが高いプロのアスリートにとって、将来の脳へのダメージリスクを減らす可能性を示しています。
大麻成分についてもっと知ろう
大麻草には、THC(テトラヒドロカンナビノール)やCBD(カンナビジオール)などの生理活性成分カンナビノイドや、テルペンと呼ばれる精油成分など、数百種類もの成分が含まれています。そしてこれらの成分は、体内に取り入れることで様々な作用を引き起こされます。
大麻の代表的な成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)は、大麻喫煙による精神の高揚、つまり「ハイ状態」を引き起こすことで知られていますが、使い方によっては精神的な作用以外にも、強い痛みの緩和や吐き気・けいれんの抑制、食欲増進など様々な効果があります。THCはがん患者や難病の化学療法の副作用を和らげ、食欲を取り戻して体力を保つためにも使われることがあります。ただしアルコールの摂取と同じように、車の運転などに際しては慎重さが必要で規制が必要とされています。
また大麻成分として非常に人気の高いCBD(カンナビジオール)は、リラックス効果やストレスの緩和、不眠緩和、痛みの緩和などに効果があり、多発性硬化症(MS)のけいれんや手足の硬直などの症状にも有効とされています。THCのような精神作用はなく、大きな副作用がなく安心して使えるのが大きなメリットです。
他にも大麻由来のカンナビノイドには100種類以上もの種類があり、CBG(カンナビゲロール)、CBN(カンナビノール)、CBC(カンナビクロール)など、それぞれに特有の作用があります。最近注目されているのは、少量しか含まれていないものの効果の高いレアカンナビノイドで、代表的なものには、THCV(テトラヒドロカンナビバリン)や、CBGv(カンナビガバリン)などがあります。
そして大麻に含まれる香り成分であるテルペン類も、気管支を拡張する、鎮静効果、筋肉を緩メル、鎮痛、抗炎症作用などの様々な働きがあります。医学的に大きな可能性があること、そしてアルコールのような嗜好品としての利用、そして経済的なメリットから、2014年にコロラド州とワシントンDCでの大麻解禁以来、米国では大麻と大麻ビジネスへの注目が急速に高まっています。
ドーピング団体や大学スポーツ界の見解は?
プロスポーツ界やアスリートの間で人気の高まってきた大麻成分ですが、世界中で緩和が進んでいるわけではありません。
世界アンチ・ドーピング機関(WADA)は大麻の使用に対して依然として禁止を維持しており、スポーツパフォーマンスの向上やアスリートの健康リスクを理由に挙げています。
現在も賛成派と反対派で議論は続いており、アスリートの大麻使用による出場停止処分に関して、スポーツ団体やファンからの激しい反発が起きる事件も報道されています。
WADAでは2017年9月に大麻由来成分であるCBD(カンナビジオール)のみ禁止薬物リストから外しており、現在はCBDに関してはドーピング行為とはみなされません。このことはスポーツ界で大麻成分の活用を広める大きなきっかけとなりました。そして2021年の東京オリンピックは、アスリートがCBDを心身のケアに使用することが許可された、初めての五輪大会となりました。
プロスポーツ界の変化の波は大学スポーツ界にも及んでいて、NCAA委員会(全米大学体育協会)も現在、大麻やCBDを禁止物質から外す方向に進んでいます。これにより、アスリートたちの健康サポートが強化され、スポーツ健康に新しい理解が生まれつつあります。
多忙なライフスタイルにCBDを取り入れる
アスリートでなくても、痛み止めや健康管理、リラックスのために安心して使えるCBDを取り入れる人は年々増えています。これは大麻の規制緩和の進んだ米国だけでなく、日本でも見られる傾向です。
CBDは一般的な生活をしている人にも、以下のようなメリットを期待できるとされています。
痛みの軽減: 抗炎症作用によって、運動に伴う筋肉痛や関節痛の軽減に役立ちます。
美肌効果: 抗炎症作用によって、肌トラブルを抑えます
ストレス管理: リラックス効果をもたらし、日常のストレスや不安の軽減に役立ちます。
睡眠の改善: リラックスによる安眠効果が、質の高い睡眠をサポートします。
アクティブなライフスタイルを送る現代人も、健康とパフォーマンスの向上にCBDを取り入れてみることができそうです。
<参考資料>
https://www.mycannabis.com/ja/ncaa-to-remove-cannabis-from-list-of-banned-substances/