健康効果はあるけれど、そのままでは苦味がありおいしいとは言えないCBDやCBDオイル。スナックやドリンクに上手にブレンドして商品化するために、どんな技術が使われているのでしょうか?
大麻成分CBDのしくみって?
ウェルネス効果で人気のCBD(カンナビジオール)。大麻に含まれる生理活性成分の1つで精神を高揚させる作用がなく、リラックスや安眠、鎮痛・炎症緩和などに効果を発揮することで知られています。
CBDは大麻草に含まれている100種類以上ある生理活性成分カンナビノイドの一種で、免疫機能や痛み、感情、認知など様々な機能のバランス調整を行うエンドカンナビノイドシステム(ECS)に対して働きかけます。これは人や動物の体内でも内因性カンナビノイドがつくられているためです。カンナビノイドと結びつくことができる受容体を私たちが持っているおかげで大麻成分の効果を受け取ることができるといってよいでしょう。
カンナビノイド受容体にはCB1とCB2の2種類があり、CB1は脳や中枢神経系に、CB2は末梢神経や免疫系、皮膚などに多く分布します。またCB1やCB2受容体に作用する内因性カンナビノイドは10種類ほど存在することがわかっています。
大麻以外にも含まれているカンナビノイド
意外に知られていないことですが、カンナビノイドが含まれているのは大麻だけではありません。ひまわりの一種であるヘリクリサム、免疫ハーブとして知られるエキナセア、ある種の苔類やトリュフなどにもカンナビノイドが含まれています。
またオハイオ州立大学の研究によると、またラデュラ属のゼニゴケには大麻の多幸感をもたらすカンナビノイドTHC(テトラヒドロカンナビノール)と似た構造を持つ成分ペロッテチネンが含まれ、THCのようにカンナビノイド受容体と結合することがわかりました。この成分がカンナビノイド受容体と結合すると、脳に送られる痛みのシグナルが止められ、痛みや炎症が和らぎます。この成分には大麻に含まれるTHCのように高揚感を引き起こす作用は低いということもわかっています。日本、コスタリカ、ニュージーランド、タスマニアで見られるゼニゴケの 3 種のみが、この化合物を生成すると言われています。
人気成分CBD、あの「独特の味」はどこから来る?
CBDオイルの一般的なとり方といえば舌下摂取が主流、舌の裏にCBDオイルを数滴垂らして粘膜から成分を吸収します。CBD成分を効率的に吸収し期待する効果を得るために最も効果的な方法の1つとされています。
しかしCBDオイルを買ってみたものの、大麻草の持つ独特の風味や苦味が苦手という人は多いものです。これはCBDそのものの持つ味の場合もあれば、CBDをブレンドしているキャリア・オイル(ベースオイル)が原因となっていることもあります。
製品によって異なりますが、キャリアオイルにはヘンプオイル、MCTオイル、オリーブオイル、ココナッツオイルなどが使われています。ほとんどのオイルはマイルドな味ですが、大麻から抽出されたヘンプオイルは草を食べているような青臭い独特の風味を持っています。
味が苦手だとせっかくのCBDオイルも続けるのがおっくうになるもの。楽しく続けられるように、最近ではマイルドな味のオイルにブレンドしたり、ミントなどのハーブやフルーツのフレーバーを加えたより取り入れやすい製品が増えています。
相性のいいフレーバーと合わせるのがコツ
CBDが人気になったことで、より手軽にCBDの効果を楽しむことのできるグミやチョコレートなども登場しています。お菓子の形状や、甘みが加わることで食べやすくなる気がしますが、組み合わせによってはあまり美味しく感じられないことも。
これは使用している大麻草に含まれる成分と相性の良いフレーバー・相性の悪いフレーバーがあるためです。一般的にかんきつ類の「グレープフルーツ」と、料理にも使われるハーブ「タイム」との相性が良いと言われています。CBDにはこれらの素材とよく似た香り成分のテルペンが含まれているため、違和感なく味がマッチングできるのです。
苦味を消すナノテクノロジー
現在はナノテクノロジーを使ってカンナビノイドを飲料にブレンドする方法が人気になっています。CBDはもともと水溶性ではなく脂溶性。つまり水ではなく油に溶ける性質を持っています。CBDオイルが広く流通しているのは、このCBDのもつ性質を生かしているからです。
いっぽうで不溶性のCBDオイルと水を混ぜると、濁った液体ができます。これは見た目が美しくないだけでなく、時間が経つと油と水が分離するため、安定性の低い製品になってしまいます。ナノテクノロジーでは超音波を使ってCBD分子を非常に小さな粒子に分解し水溶性のCBDを作ることができます。これは極小の油を水の中に分散し、まるで水に溶けているように見える状態で「ナノエマルジョン」と呼ばれています。現在、食品やドリンク、そしてコスメにも広く使われている技術です。
独特の風味を消そうと強いフレーバーや甘味料を加えるよりも、ほぼ無味無臭のナノエマルジョンに変化させてからフレーバーを加えることで、ライトで飲みやすいCBDドリンクができ上がるのです。
超音波などでナノ化されたCBDはバイオアベイラビリティ(投与された薬物のうちどれだけの量、全身に循環するのかを示す指標)が高いため、ドリンクだけでなく食品に混ぜても有効成分をムダなく吸収することができます。
これはナノエマルジョンが油脂を必要とせずすみやかに体内に吸収され脳に運ばれるため。効果は10〜30 分経つと現れ数時間続きます。海外で流行中のCBD入りノンアル・または低アルコールのビールは、CBDの生み出すリラックス感をアルコールの酔いと置き換えることを目的に作られています。
現在人気のCBDドリンクは、アルコールを含まず、微炭酸でフルーツやハーブのフレーバーを加えた甘すぎないヘルシー・ドリンクがほとんど。ナノテクノロジーのおかげで「ヘルシーな快楽主義」が可能になったといえるでしょう。
まとめ
今回はウェルネス成分CBDがどのようにドリンクにブレンドされているのかについてご紹介しました。CBDの摂取には様々な方法があり、ベイプを使って吸入したり、クリームやコスメを塗ったり経皮パッチを使うこともできます。基本のCBDオイル自体も食べ物にブレンドするなどさまざまな使い方ができます。
自分にあった方法を取り入れて、その効果を実感してみてはいかがでしょうか。
<参考資料>
https://www.microfluidics-mpt.com/blog/nanoemulsions-mixing-cbd-oil-into-beverages