米国で成長を遂げている大麻観光ブーム。中でも人気の高いのが大麻バスツアーです。どんなプログラムが組まれているのでしょうか?
エンタメ化がすすむ大麻
2012年に全米で初めてワシントン州とコロラド州で娯楽目的の大麻が合法化されてからすでに10年が経ちました。世界的経済誌フォーブス(Forbes)によると、アメリカの大麻ツーリズム市場は成長を続け、すでに170億ドル(約2.2兆円)規模に達しているといいます。
大麻はすっかり観光名物そしてエンターテインメントとして定着しています。大麻体験が売りの観光ツアーでは、観光名所を巡るだけでなく熟練ガイドと共に安全に大麻を楽しんだり、同じ関心を持つ人たちと知り合うことのできるチャンスを提供してくれます。州によってルールが違っていても、プロがいればうっかりタブーを犯してしまう心配もありません。
2023年前半の時点で娯楽用大麻が合法化されているのは全米50州のうち約20州。今年中にいくつかの州が加わる予定となっており、しばらく大麻ブームは続きそうです。
大麻ツアーってどんなことをするの?
大麻観光では、大麻がまだ規制されている他州や海外から訪れた観光客を地元のディスペンサリー(=大麻販売ショップ)に案内したり、大麻ラウンジや大麻ファームを訪れて楽しむのが一番のハイライトです。人々の旅行意欲も回復しパンデミックによって大きな打撃を受けた観光業界によって、この大麻ツーリズムは素晴らしいビジネスチャンスとなっています。
観光客に人気のカリフォルニアやネバダ州では、観光客が安心して嗜好用大麻を楽しめるスタイリッシュな専用ラウンジが続々オープンしています。ラウンジでは店の大麻ソムリエがおすすめする大麻を喫煙したり、大麻成分をブレンドしたグミやドリンクなどのエディブル(食品類)を楽しむことができるのが特徴です。大麻が合法になっても専用のライセンスを持っているお店以外、公共の場所での喫煙はNGです。アルコールやタバコと同じようにルールを守って安全に消費できるよう州ごとに規制が定められています。
人気ナンバーワンはコロラド州
大麻をオープンに楽しむことができるようになったとはいえ、一般的ホテルではそのことを快く思わない宿泊客もおり、トラブルが発生することもあります。このため「大麻フレンドリー」を打ち出した宿泊施設も登場しています。こういった大麻喫煙OKを打ち出した宿泊施設は、民宿「ベッド&ブレックファスト」をもじって、「バッズ・アンド・ブレックファースト」というニックネームが付けられています(バッズは大麻の有効成分が凝縮された花の部位のことを指します)。
大麻をさす言葉「カンナビス」と「バケーション」を組み合わせた造語「カンナケーション」という言葉もポピュラーになっています。米大手旅行会社アップグレード・ポインツでは、娯楽用大麻が合法な州で 50 の主要都市を選び、大麻の価格やツアーの充実度、グルメや大麻への寛容度など様々な側面から採点し「カンナケーション先ベスト10」を発表。
1位はコロラド州デンバー、2位がメイン州ポートランド、3位がカリフォルニア州オークランドという結果になりました。
コロラド州は4位にボールダー、8位にコロラド スプリングスもランクインしており、人気の高さを証明しています。大麻解禁が早い時期に行われ、サービスが充実していること、大自然に恵まれアクティビティも豊富しているのが高得点の要因のよう。また最もリーズナブルに大麻ツアーを体験できるのは、カリフォルニア州のオークランドでした。
ちなみにアメリカより先に国ごと大麻を合法化したカナダでは大麻ツーリズムはほとんどありません。「カナダは観光収入のチャンスを失っているのでは?」いう声もありますが、国によって方針はかなり違うようです。
バスツアーはこんな感じ
実際の大麻ツアーはどんなことをするのでしょうか。
動画サイトでは大麻ツーリズムのVログや、サービス会社のプロモーション用ビデオなどがたくさん見つかります。ここでは観光地ロサンゼルスを拠点とした大麻観光バスツアー会社のGREEN LINE TRIPSの様子を覗いてみます。https://high5tours.com/green-line-trips/
人気の2 時間バスツアーでは、大麻の葉のマークが印刷されたバスに乗りこみ、大麻を楽しみながらハリウッドやベニスビーチ地区など南カリフォルニアの観光地をまわります。
合法とはいえ、カリフォルニア州ではほとんどの公共の場で大麻を吸うことは禁止されています。このためツアー客はバスの中で大麻を楽しみ、街へ繰り出すのがルールです。ツアーガイドは観光客が法律を犯さず安全に楽しめるように気を配り、ドライバーと乗客の間にはガラスで敷居を作り、煙を吸い込まないようにして安全第一をモットーにしています。
ツアーは2 時間のものもあれば、3日間かけてさまざまなディスペンサリー(=大麻販売ショップ)と大麻ラウンジに立ち寄り、大麻テイスティングを楽しみ大麻について学ぶことができるツアーもあります。人気のライブハウスを訪問するなどカルチャー・ムードも盛り込まれているツアーもあるなど充実の内容です。
ツアー会社では大麻のシェフやバーテンダーが、特製のケーキやカクテルをケータリングしてくれる「大麻がテーマ」の結婚式やバースデー、卒業式、退職祝いといったパーティの企画も行っています。
まとめ
大麻に対するイメージがよりオープンになってきた最近のアメリカでは、医療用のツアーだけでなく、純粋に楽しむための大麻ツーリズムに参加する人が増えました。
もちろんフィットネスや健康向上をテーマにした大麻ホリデーにも人気があります。ウェルネス系のツアーでは、精神を高揚させる効果を含まないCBD を使ったマッサージやエステ、セラピーを受けたり、大麻農園を見学したりヨガや瞑想クラスに参加するのがトレンドのよう。
東南アジアのタイでも医療大麻が解禁されたことで、南国で楽しむ大麻ツーリズムへの関心が高まっています。見知らぬ土地で大麻に手を出すことを危険視する声もありますが、熟練したプロのガイドのサポートにもとで楽しむ事ができるという点では、一番安心な方法と言えるのかもしれません。
<参考資料>