精神作用がないとされる大麻成分CBDですが、車の運転は控えましょうという意見もあります。しかし2022年発表された研究論文では、高濃度を摂取しても運転には支障を引き起さないことが証明されました。本稿ではCBDを摂取した後の運転テストの結果について紹介します。
CBDと運転は相性が悪い?
様々な健康効果が期待できることから、愛用者が増えているCBD(カンナビジオール)。痛み止めや吐き気の抑制、睡眠の質を高めたり心身のバランスを整えるなど、医療やウェルネスの分野で広く使用されている大麻由来成分です。
リラックス効果や痛み緩和のほかにも、CBDにはスポーツなどによる筋肉疲労の緩和、美肌効果なども期待できます。また重度のてんかん症状の治療、がんの化学療法で生ずる副作用を軽減したり、自己免疫疾患やアレルギー性疾患など免疫の過剰反応による症状への医療効果も確認されています。このCBDはオイルやサプリメントの状態、または食品やドリンクに配合されているものが一般的で、電子タバコのリキッドに配合されているタイプも増えています。
これらのCBD商品に記載された注意書きには「乳幼児の手の届かない場所にて保管してください」「妊娠中、授乳中の方はご使用を控えてください」といった表示のほかに「車の運転前の服用はご遠慮ください」という表示を見かけることがあります。このためCBD摂取後の運転は安心なの?と気になっている人も多いのではないでしょうか。
服用すると眠くなるってホント?
酒気帯び運転が大きな危険をはらんでいるのは、アルコールの作用によって視聴覚機能が低下して注意力を鈍らせてしまうため、正しい運転や安全判断ができない状況になるからです。また飲酒によって眠気を引き起こす危険があるのも大きな理由です。
CBD(カンナビジオール)の場合は、飲酒時のように酩酊状態になったり精神が高揚する効果は確認されておらず、安全性についても高く評価されています。ただし精神をリラックスさせることで不眠を解消してくれる作用があり、この効果が運転中に眠気として現れるのではと心配になる人もいるでしょう。
これまで行われた様々な研究では、CBDを摂取した後でも運転することは可能だが、体質や体調によって眠気を感じたり血圧が低下する場合も報告されています。そのような場合は運転を休止し休憩するか、不安な場合は使用を控えた方が良いというのが一般的な見解です。CBDは服用後30分ぐらいから効果を発揮し始め、6時間ほど持続するとされています。運転の予定がある場合は、早めに服用して当日のコンディションを確認しておくか、運転後に安心して楽しむといった選択肢があります。初めて服用する場合は、念のために運転は見合わせておいた方が良いかもしれません。
新研究でわかったこと
シドニー大学で行われた最新実験では、CBDの1日あたりの最大摂取量である1500mgを摂取しても人々の運転能力や認知能力には影響を与えないと結論付けています。
Journal of Psychopharmacology(精神薬理学ジャーナル)に掲載されたこの研究では、17人の参加者がプラセボ薬、15mg、300mg、1500mgのCBDオイルを摂取した後、運転シミュレーション・テストを実施しました。
テスト参加者は、運転シミュレーション・テストで先行車との間に安全な車間距離をキープしたり、高速道路や田舎道に沿って運転するタスクを与えられました。CBD摂取後から45〜75分後、そして3.5〜4時間後に再びタスクに取り組み、血液の状態も検査しました。そして参加者全員が、4つの異なる治療(プラセボと3つの異なる用量)の状況下でそれぞれ同じテストを繰り返しました。 その結果、CBD投与量が中毒状態を誘発したり、運転や認知能力を損なうことはないようだと結論付けられています。
15mg、300mg、1500mgという3種類の摂取量はユーザーの摂取量を目安にしています。一般的なユーザーの最大摂取量は1日150mgとされており、てんかん、痛み、睡眠障害、不安などの医療目的には1日に最大1500mgの使用がガイドラインとなっています。
多くの国でCBDを摂取後の運転に規制はありませんが、今回の研究で、CBDが単独で消費された場合には、運転をしても影響がない(=安全である)ことが初めて確認されたのです。
ただしこの研究はCBDを単独で摂取した場合に限られており、研究者のダニエル・マッカートニー博士は、ほかの薬と一緒にCBDを服用しているドライバーはその作用に注意する必要があるとコメントしています。
THCレベルにはご注意を
もう一つ注意すべきなのはCBD製品に含まれるTHC(テトラヒドロカンナビノール)の濃度です。日本ではTHCは規制対象となっており、通常のCBD製品に含まれていることはありませんが、海外製品ではCBD製品であっても多幸感を引き起こすなど精神作用のあるTHCが少量含まれている場合もあります。
大麻が合法化されている国や地域でも、大麻使用後に運転することは飲酒運転と同様に違法とされており、国によってはTHCレベルに厳しいルールを設けている場合もあります。
法律に触れるかどうかだけでなく、自分や他人の身を守るためにも服用前には成分表示をきちんと確認し、不安な場合は、運転前の服用は見合わせた方が賢明でしょう。
例を挙げると、欧州ではCBDオイルに含まれるTHCの量はは0.2~0.6%の場合に許容範囲となっています(国ごとに異なる)。イギリスでは0.2%未満、米国では0.3%以下が合法となっています。
まとめ
CBDの効果は、ユーザーの体質によっても異なります。鎮痛剤や睡眠薬などの化学薬品に頼る回数が減ることで、身体への負担を軽減することができますが、服用の際はその日の体調や自分にベストの量をきちんと把握しておくことが大切です。またCBDの効果が感じられない場合は、必要量を服用していない場合もあります。この場合は適量の範囲内で少しずつ量を増やしながら適量を見つけてみてください。またラボテストを行い品質を公開している、信頼のおけるブランドを選ぶことも大切です。
<参考資料>