ボクシングの元世界ヘビー級王者マイク・タイソンが発売した、耳の形をした大麻成分入りグミ「マイク・バイツ」。しかしコロラド州のダメ出しを受けて、形を変更することになりました。大麻成分を配合したグミに形状の制限があるのはなぜなのでしょうか。本稿で解説します。
プロ引退後も大人気、ボクシング界のレジェンド
ボクシングの元世界ヘビー級王者のマイク・タイソン。複雑な幼少時代を送り、数え切れない逮捕経験を経た少年院時代を経て1985年18歳でプロデビューし、初戦を衝撃のKO勝ちで飾り、世界のトップへ躍り出ました。
2005年に引退したあとも、俳優業やライブのコメディショーなどに挑戦し根強い人気を誇っている彼は、2011年の国際ボクシング殿堂への殿堂入りを果たしています。
またタレント業に加え、大麻ブランド「Tyson 2.0」のプロデュースにも乗り出したタイソンは、アメリカ・カリフォルニア州に広大な大麻農園を所有しています。これまでオリジナルの大麻製品やアパレルグッズなどを発表してきましたが、新商品として発売された「マイク・バイツ(MIKE BITES)」という名前のTHC(テトラヒドロカンナビノール)入りグミが話題を呼んでいます。
有名な「食いちぎり事件」をモチーフに。
この耳型グミはタイソン氏がタイトル戦中に対戦者イベンダー・ホリフィールドの耳を食いちぎったエピソードをもとに作られたもの。
1997年に起こったこの有名な事件をモチーフに作られた耳型のグミは、よく見ると耳の一部が食いちぎったように欠けているところまで忠実に再現されていて、猛犬のように攻撃的だったタイソンの全盛期を思い出させる商品となっています。
非常に話題となりメディアにも取り上げられた「マイク・バイツ」ですが、全米に先駆けて娯楽用大麻を合法化したコロラド州ではまさかの販売NGの結果に。
これは2016年の州法によって、大麻やその成分を使用した食品が人間、動物、フルーツ、または子どもを引き付ける可能性のある形にして販売することを禁止しているためです。またTHC入りの食品は全て「THC」と書かれた記号を印刷することが義務付けられています。
合法だからこそ安全に
以下はコロラド州マリファナ執行部(The Marijuana Enforcement Division)のポリシーです。
「マリファナ執行部は、コロラド州の医療および小売マリファナ産業の認可と規制を担当しています。 私たちの使命は、法規制の一貫した管理とプロセス管理、機能的専門知識、革新的な問題解決の戦略的統合を通じて、コロラドの商業用マリファナ産業を規制することにより、公共の安全を促進し、公共の害を減らすことです。」
つまり、今回のコロラド州の要請は、子どもや未成年が「楽しそう、面白そう」とうっかり手を出してしまう危険を避けるための措置。
全米に先駆けて娯楽用大麻を合法化したコロラド州でも、全く規制がないわけではありません。全米に先駆けて合法化したからこそ、アルコールやタバコなどと同じように安全を守るための様々な対策が取られているのです。
こうしてコロラド州では「マイク・バイツ」は、タイソン氏のイニシャルである「T」に形を変更し、販売を行うことになりました。マサチューセッツ州、カリフォルニア州、ネバダ州などでは、現在のところ耳型のままでグミが販売されるとのことです。
トラブルを抱えたタイソンを救った大麻
↑インスタグラムほかSNSでも活発な彼。最近の活動を垣間見ることができます。
画像引用元:https://www.instagram.com/itstyson20/
暴れん坊で、暴力事件を起こすなどお騒がせボクサーとしても知られた彼ですが、その原因は複雑な生い立ちによる精神の不安定さにも原因があったといわれています。
彼は大麻を使って心身をリラックスさせることで自分の攻撃性をリングに向け、ボクサーとしてのキャリアにフォーカスすることができたと語っています。
米フォーブス紙では「大麻はPTSD(Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害)を和らげ改善する効果がある」という研究について報じています。
PTSDは、生死に関わるような体験や強い衝撃を受けた後に、その後何年にもわたって悪夢、パニック発作、過覚醒、他人からの分離、コントロールできないほどの強い感情、自己破壊的行動などの慢性的な問題を引き起こしてしまう状態のことです。
米ミシガン州デトロイトで行われた研究では、PTSDなどに関連する不安に対処する人々の扁桃体反応と大麻使用の影響を調べ、大麻は不安を軽減する可能性があり、ストレス下に置かれた人間の不安感が高まるのを防ぐ可能性があると発表しています。
カンナビノイドがストレス状態に働きかける仕組み
大麻に含まれるCBD(カンナビジオール)やTHCといったカンナビノイド類は、体内にあるカンナビノイド受容体と結びつき効果を発揮します。
マウス実験では、脳内のカンナビノイド受容体の活性化が、ストレス状態によって引き起こされる心拍数・血圧反応を安定させ、パニック状態を軽減させることがわかっています。
大麻成分が肉体的・精神的ストレスによるパニック状態を鎮めてくれることは多くの人がすでに経験的に知っている効果の一つです。タイソン氏以外にも、試合前のストレスなどをコントロールするために大麻成分の1つであるCBDを使用しているアスリートは多いことからも、その効果のほどがうかがえるでしょう。
大麻成分の中でも特にCBDは副作用や精神を高揚させる作用がなく、ドーピング規制もないため安心して使用できる」メリットがあります。メンタル面に働きかけるだけでなく、炎症や痛みを緩和する作用もあるため、プロ・アマ問わず、トレーニング後のリカバリーや怪我の回復サポートにCBDを使用する人も増えています。
まとめ
2005年の引退後も離婚やアルコール中毒症に苦しむなど、人気とは裏腹にトラブル多き人生を送ってきたタイソン氏。55歳を超えてもなお血気盛んでお騒がせキャラが抜けない彼ですが、大麻ブランドの成功とサポートで、心穏やかな生活を迎える日はやってくるのでしょうか。
参考資料