栄養豊富なスーパーフードとして知られるようになったヘンプシード。安眠にも役立つこと、ご存知でしたか。
ヘルシー度がすごい、話題のヘンプシード
産業用大麻(インダストリアル・ヘンプ)の種子であるヘンプシードは、最近人気を集めている食品の一つです。良質なタンパク源を含んでいるほか、体内で生合成できないため食品から摂取する必要のある必須脂肪酸(オメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸)をバランスよく含んでいます。ほかにも食物繊維、ビタミン、ミネラルも豊富に含んだオールラウンダーの優秀フードです。
大麻の種というと「安全なの?」と心配になる人もいるかもしれませんが、大麻の種子は貴重な栄養源として世界各国で栽培され食用にされてきました。七味唐辛子に入っている「麻の実」は誰でも知っているポピュラーな例です。また漢方薬の世界では「麻子仁(ましにん)」と呼ばれ重宝されてきました。 日本の古墳や世界各地の遺跡からも麻の実が出土しており、ヘンプシードが古代から食用とされてきたことがわかっています。(※)
最近では気候変動問題を軽減するために、環境ガス排出量の少ない植物性食品を消費しようという動きが盛んですが、世界中で人気に火がついたオートミルク(=オーツ麦のミルク)とともに、ヘンプシードを材料にした使ったコクのあるヘンプミルクも人気が急上昇しています。
これは植物性ミルクの中でもヘンプミルクは豆乳やナッツ系ミルクに比べてアレルギーを起こす率が低く、生産過程で生まれる二酸化炭素排出量が少ないことが理由です。またヘンプはとても成長が早く、収穫までの期間が短いためよりサステナブルであると考えられているのです。
※現在、日本における麻の栽培は大麻取締法により認可を受けた農家だけが栽培できるようになっており、食品に含まれる麻の実は熱処理などが施され発芽しないよう処理されています。
安眠ホルモンの原料になる
ヘンプシードは安眠にも有効であることがわかってきています。ヘンプシードには睡眠ホルモンのメラトニンの材料となるアミノ酸トリプトファンとビタミンB6がほどよいバランスで含まれているためです。食べ物から体に入ったトリプトファンは、日中は脳内でセロトニンに変化し、時間をかててメラトニンに変化し夜の自然な眠りを促します。
このセロトニンはドーパミンやノルアドレナリンを制御し精神を安定させるため「幸せホルモン」とも呼ばれます。トリプトファンがビタミンB6と結びつくことでセロトニンが生成されるため、両方をバランスよく含んだヘンプシードは効率よい形で幸せホルモンと睡眠ホルモンの原料になってくれるのです。
トリプトファンが多く含まれている食材はヘンプシードのほかに豆腐・納豆などの大豆製品、乳製品、穀類やゴマ・ピーナッツ・卵・バナナなどにも含まれています。
ビタミンB6を多く含む食品は鮭、さば、さんまなどの魚類、鶏胸肉やささみなどの脂身の少ない肉類、ピスタチオ、ゴマなどです。1食当たりの摂取量を考慮すると、植物性食品よりも動物性食品の方が効率的に摂取できると言われています。
セロトニンを増やすには、トリプトファン、ビタミンB6を含む食品を取り入れるほかに、
日光を浴びる
歩く、よく噛んで食べるなどのリズム運動を行う
といった習慣が効果的です。
またトリプトファンの代謝には腸内環境の良し悪しも影響します。腸の働きを促し、善玉菌の餌にもなってくれる食物繊維も豊富に含むヘンプシードは、その点でもオールマイティーな食品といえるでしょう。
睡眠不足のダメージは思ったより大きい
睡眠不足は様々な健康被害をもたらすことが科学的にわかってきました。
<睡眠不足の弊害の例>
ストレスホルモンの分泌が高まる。
ホルモンバランスの乱れによる食べ過ぎと肥満リスク増大
免疫システムの弱体化
認知機能の低下
気分の低下
糖尿病、高血圧、心筋梗塞など様々な病気のリスク増大
睡眠時間が短いと糖尿病になりやすいことは以前から知られていましたが、最近ではこの現象に前述のメラトニンが関わっていることも科学的に証明されています。
寝る時間を削って頑張ることがカッコいいとされた時代はもう終わり。
現在では「できる人は睡眠を大切にし、メリハリつけて効率よく働く」というのが常識で、安眠スキルは現代社会のライフハックとしてブームになっています。
『スタンフォード式 最高の睡眠』『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』など、忙しい日々を送るビジネスパーソン向けの睡眠本がベストセラーとなり、眠りの質を分析するAI搭載のウェアラブルなど、よりよい睡眠を実現するためのテクノロジーや製品などのスリープテック・ブームも起こっていることからも、眠りの重要性が注目されていることは明らかでしょう。
また食品としてのヘンプシードだけでなく、ヘンプ種子や花や茎など(※)から抽出される薬理成分CBD(カンナビジオール)も体内調節機能に働きかけ、リラックスや安眠を促す成分とされ人気アイテムになっています。
※日本国内で認可されているCBD製品は、大麻取締法で許可されているヘンプの茎と種子の部分を加工して作られた製品のみになります。
ヘンプシードの効果的な取り入れ方
ヘンプシードはナッツのように香ばしい風味があり、美味しく食べることができます。
様々な料理と相性がよく雑穀としてご飯に炊き込んだりふりかけにしたり、ごまのようにサラダやお浸しに振りかけたりと食べ方はいろいろ。
朝食のオートミールに混ぜて、スムージーに混ぜるもの取り入れやすい方法です。またクッキーやケーキなどのお菓子類などにナッツ類と一緒に混ぜヘルシーおやつを作ってもよいでしょう。
ヘンプシードと水をブレンダーで細かく粉砕し、布で濾したせば手作りヘンプミルクも簡単に作ることができます。布で濾した後に残るおから状のヘンプシードパルプは、スパイスやオートミール、豆類などとミックスして自家製の植物性バーガーパテやミートボール風ヘンプボールにして無駄なく使い切ることができます。
安眠と健康の強い味方になってくれるヘンプシード。忙しい日々の健康サポートとしてキッチン常備フードに取り入れてみてはいかがでしょうか。
<参考資料>
Role of melatonin on diabetes-related metabolic disorders
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21860691/
ヘンプの栄養価
https://www.medicalnewstoday.com/articles/308044