乳糖不耐症やアレルギーで牛乳が飲めない人や、動物性食品を摂取しないヴィーガン派も安心して取り入れることができる植物性ミルク。これまでは豆乳やアーモンドなどのナッツミルクが主流でしたが、近年はヘンプから作られた安全でおいしいヘンプミルクが注目を集めています。
植物性ミルクが世界のトレンド
世界的なヴィーガン・ブームやヘルス志向の高まりから、牛乳に代わる植物性の代替ミルク=プラントベース・ミルクが人気になっています。
昔からある豆乳に加え、アーモンドやココナツを材料にしたナッツミルク、米をベースにしたライスミルクなど様々な種類がありますが、2019年はオーツ麦をベースにしたオーツミルクが人気でした。カフェでその魅力を知った人々が、ロックダウン中にその味を再現しようと2020年は家庭でのオートミルク消費も大きく伸びました。
欧米ではカフェでコーヒーや紅茶などミルク入りホットドリンクを頼む際に「どのミルクにしますか」と聞かれることが増えています。
そして2021年の注目株はヘンプ(麻)の種を使ったヘンプミルクです。世界的パンデミックの影響で健康意識が高まったこともあり、オートミルクと同じくオンライン注文が急増したことが報じられています。英国のTea and Coffee Companyによると、多くの消費者が乳製品からプラントベース・ミルクに乗り換えているとのこと。なんと英国では2020年にヘンプミルクのオーダー数が倍増。世界のヘンプミルク市場も2019年から2027年までに14.28%の年平均成長率が見込まれています。
また環境問題の一環として、食物にも気を配る人が増えているため、「牛乳生産にかかるエネルギーよりも、植物性ミルクの方が、環境負荷が少ない」というのもプラントベース・ミルク人気の大きな理由です。中でも麻は成長が早く、水が少なくてもよく育ち肥料や農薬をほとんど必要としないので、サステナブルな作物として注目を浴びています。
様々なプラントベースミルクの中で「使用する水の量・土地の利用・環境ガス排出」の点から計算すると、環境への負荷が少ないのは豆乳・オートミルク・そしてヘンプミルクです。英オックスフォード大学の調査によると、コップ1杯の牛乳とプラントベースミルクを比較した場合、温室効果ガス排出量の差は平均で3倍になります。
植物ごとに利点があるのですが、麻の場合は丈夫で非常に使用用途が広いのが特徴です。ヘンプミルクの材料となる種以外の部分も、医薬品、建設資材、繊維、紙パルプ、麻ベースのプラスチックとして利用可能で、根の部分が深く成長することで土壌を改善します。
ヘンプミルクの味と栄養価
ヘンプミルクはその名の通り、雑穀でもある産業用ヘンプの種子を使って作られます。濃厚でナッツのような風味があり、飲み心地は滑らか。ヘンプオイルやCBDオイルを摂取したときに感じるような苦味は全くありません。
乳製品の代わりにシリアルにかけたりするほかにも、カフェラテや紅茶といったホットドリンクにもぴったりです。このようなヘンプミルクに使われる種子には、同じ麻でもマリファナなどに含まれる精神活性化合物THC(テトラヒドロカンナビノール)はほとんど含まれておらず、安心して日常的に飲むことができます。
またカルシウムが多く含まれており、健康的な食生活に欠かせないオメガ3と6の必須脂肪酸の比率も1:3と理想的。飽和脂肪が少なく、コレステロールを含まないのも魅力的です。グルテンアレルギーやナッツアレルギーがある人もヘンプベースのミルクなら安心して飲むことができます。ほかにもたんぱく質、オメガ9、GLA、亜鉛、カリウム、鉄、マグネシウム、ビタミンB1、ビタミン、B6、葉酸など、ヒトのカラダに必要な栄養素が豊富に含まれています。
どんなブランドがある?
通勤前や休憩時間にはミルクティーやコーヒーが欠かせない英国では、Good Hemp 社のヘンプミルクがよく合うと人気です。またヨーロッパ最大規模の乳製品メーカーで、デンマークのアーラ・フーズの植物性ミルクJördはオートミルクとヘンプミルクをブレンドしてさらにクリーミーで飲み心地を実現し、オートミルク派も魅了しています。オーガニック商品であることもアピールポイントです。
ヘンプミルク商品発売に乗り出した世界の主要企業ほかにもLiving Harvest Foods Inc.、Ecomil、Hudson River Foods、Drink Daily Greens LLC、Good Hemp Food、Organic Hemp Milk Australia、Pacific Foods of Oregon Inc.、Goodmylk Co.、MaMilkなど多数。北米やカナダ、メキシコ、ヨーロッパほか各国でシェアを伸ばしています。
Jörd社のヘンプミルク
https://jordplantbased.com/en-gb/oat-and-hemp-drink/
Good Hemp社のヘンプミルク
https://www.goodhemp.com/our-products/ambient-creamy-hemp-milk/
ホームメイドも簡単にできる
ヘンプミルクはミキサーなどがあればナッツミルクと同じように自宅で簡単に作ることができます。基本材料はヘンプシードと水、そしてひとつまみの塩だけ。素材を自分で選ぶことができる上、数日ごとに作れば、いつも新鮮なホームメイドのヘンプミルクを飲むことができます。
〜ヘンプミルクのレシピ〜
<材料>
- ヘンプシード1/2 カップ(殻をむいた商品が理想的)
- 水3~4カップ (濃厚なミルクが好みなら水を少なめに)
- 塩1 つまみ
<オプション>
バニラエッセンスや蜂蜜、メープルシロップなどのフレーバー
<作り方>
- ヘンプシード、水、塩、およびオプションのフレーバーを高速ブレンダーに入れ蓋をし、約1分間ブレンドします。
- 味見して濃度や風味/甘さのチェック。必要に応じて水やフレーバーを追加します。
- でき上がったら容器に注ぎます。ナッツミルクと異なり、布で漉さなくても良いので簡単です。よりスムーズな飲み心地をお好みの方はナッツミルクバッグや手拭い、ガーゼなどの布で液体を漉します。
- 出来上がったヘンプミルクは蓋をして冷蔵します。冷蔵庫保存で4、5日以内に使い終わるのが目安です。使用前には容器を振って、中身をよく混ぜてからそのままドリンクとして飲むほか、コーヒーや紅茶、スムージーやシリアルにも利用できます。
ほかにもデーツなどのドライフルーツや蜂蜜、ココアパウダーや抹茶をブレンドしてオリジナルのヘンプドリンクを作ってみるのも楽しいもの。
ドリンクだけでなくパンケーキやマフィンなどの焼き菓子に使ったり、スープに入れて使うこともできます。
食べるだけでなくドリンクにもなる万能選手のヘンプ。
ぜひ普段の生活に取り入れて、その魅力を味わってみてください。
合わせて読みたい記事はこちら↓
<参考資料>
オートミルク人気について
https://vegworldmag.com/study-shows-44-of-british-vegans-prefer-oat-milk-in-their-tea/
気候変動問題に取り組むには、どの植物性ミルクを選ぶといい?(BBCの記事)
https://www.bbc.co.uk/news/science-environment-46654042