EU 離脱(ブレクジット)に 揺れ動く英国。経済的ダメージ大きいと言われるこのブレグジットがCBDビジネスに絶好の機会を与えてくれるかもしれない、と意見が聞かれるようになりました。ブレクジットで英国そして欧州のCBDビジネスにどのような影響があるのでしょうか。
ブレクジットとCBDビジネス
英国では2016年6月にイギリスの欧州連合離脱是非を問う国民投票」が行われ、欧州連合(EU) を離脱ブレクジットすることが決定しました。
それから4年。たび重なる離脱交渉を経たのち2020年に1月31日に英国はEUを離脱しましたが、2020年末までは移行期間に置かれています。
自由貿易協定(FTA)を含め、英国とEU間の移行期間後の将来関係の交渉が進む中で、専門家たちは市場規模3兆円ともいわれる「グリーンラッシュ(大麻特需)」で、英国におけるCBDビジネスが恰好のチャンスに恵まれる可能性を指摘しています。
CBDとはカンナビジオールの略で、大麻から抽出される化学物質の総称カンナビノイドの一つ。大麻草に104種類含まれるカンナビノイドの中でも人体に役立つ薬理作用が高く、医療に応用できる大きな可能性を持つ成分として、世界の数多くの研究所でリサーチが進められています。英国では2018年に医療大麻の処方が合法化され、重度のてんかんや多発性硬化症といった難病患者を対象に、他の医療楽で効果がなかった場合のみ、専門医によって大麻由来の製薬を処方することが可能になっています。
このCBDは、体内にもともと備わっている身体調節機能エンド・カンナビノイド・システムに働きかけることで、心身のバランスを整えるために役立ちます。このため難病患者向けに製造される高濃度の医薬品でなくとも、健康維持サプリメントとしても利用することが可能です。
またマリファナに含まれる向精神作用を持つ物質THC(テトラヒドロカンナビノール)とは別物ですので、違法性や中毒性もなく安心して摂取することができます。
CBDをサプリメントとして一般的に取り入れることで期待できる効果は主に3つ。
- 鎮痛・炎症の抑制
- リラックス効果・不眠改善
- 不安の緩和と気分向上効果
CBDオイルをそのまま摂取するほかにも、リキッドタイプの製品を電子タバコで吸引したり、炎症抑制作用をスポーツサプリやスキンケアコスメ、トイレタリー製品などに応用したり、リラックス効果や安眠効果を謳ったドリンクやお菓子が開発されるなどと様々な商品が生まれており、巨大マーケットとして成長を続けています。
英国では大手スーパーでもCBD入りドリンクなどが発売されており、ドラッグストアやコンビニ、オンラインショップででCBDオイルやリキッド、コスメなどが手軽に入手できます。また2020年は新型コロナウィルス感染拡大による長期ロックダウンが起こり、不安や不眠を抱えた人たちが症状改善のためCBDをサプリ的に利用するケースが急増しました。
EUと英国の制度のちがい
しかしこのCBDを「ノベルフード」ではなく「麻薬成分」として分類するという欧州委員会(EC)の発表が、業界に波紋を広げています。
「ノベルフード(Novel Food)」というのは、欧州連合(EU)が認定する安全性保証基準を満たした「新食品」のこと。1997年5月15日以前に食用として使用されたことのない方法で作られた食品あるいは食品原料を指します。遺伝子組み換え原料を使用した食品に関して欧州議会が懸念を示したしたことから制定された経緯があります。つまり、新しい食品の安全性の保証する欧州独自のシステムです。
新成分や新素材を使った食品は、欧州安全性評価機関(EFSA、European Food Safety Authority)による審査を受け、健康や環境に対し危険性がないことを承認されたうえで、ビジネス展開が可能になります。
遺伝子組み換え食品や、人工的な成分のほかにも、欧州以外では古くから食べられている食材であっても、欧州でビジネスとして商品展開する場合はこのノベルフードの認定を受ける必要があり、新しく登場した健康食材などはこの認定を受けることが必要とされています。審査は厳しく、申請取り下げや承認拒否されたものも多くあります。
欧州委員会(EC)のスポークスマンは英国の食品情報マガジンFood Navigatorに向けて「CBDについて、現在のところ疑問が残る」とコメント。最終的な決定ではないものの、分析の結果、現時点(2020年8月当時)では食品としての資格を与えることができないと発表しました。
つまりCBDがサプリメントという形の食品ではなく麻薬として分類された場合、ノベルフードの審査を通過することはできず、グリーンラッシュに湧く多数のCBDビジネスのチャンスが失われてしまう可能性があります。
このため、今後の交渉に影響は受けるものの、英国のEU離脱(ブレクジット)はCBD産業においては奇しくもビジネスチャンスになるのではという専門家の意見が報じられるようになりました。
カンナビノイド産業協会のスポークスマンは、英国が欧州委員会へのコミットメントから脱却し自由になること、また英国食品基準庁(FSA)が独自の食品認可プロセスを持っているため、CBDを扱う企業ははるかに迅速にライセンスを取得できるだろうと語っています。
欧州安全性評価機関(EFSA)は、欧州委員会がCBDを麻薬として分類すべきかどうかを決定するまで、すべての新規食品申請を保留にすると発表しています。 この場合、少なくともしばらくの間、CBDビジネスは欧州でスローダウンすることになるかもしれません。
一方の英国ではCBDが麻薬であると捉えていないため、英国内でのビジネスがしやすく、CBDビジネス業界の活性化が見込まれます。また世界的な製薬会社・研究機関を擁する英国では自国を欧州エリアにおけるCBDおよび大麻製薬の研究・開発のハブとなる可能性も生まれます。
EU離脱後は、英国は国内の大麻由来製品の市場をより細かく管理できるようになります。また大麻生産が復旧したり、あらたなCBD製品や医薬品が誕生する可能性もあるでしょう。もちろんあらゆるCBD製品は合法的ビジネス展開のために2021年3月31日までに英国食品基準庁(FSA)からの新規食品の検証を受ける必要があります。
いつまでも続くかと思われたブレクジットの手続き。CBD産業は今後大きな恩恵を受けることができるかもしれません。
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参考資料
Will Brexit be a Golden Opportunity for UK-Based CBD Businesses?
https://canex.co.uk/will-brexit-be-a-golden-opportunity-for-uk-based-cbd-businesses/