健康メリットがたくさんと噂のCBDですが、はたしてダイエットには効果的なのでしょうか。「食欲を抑える」という話もあれば「食欲が増える」という意見も耳にします。本当のところはどうなのか。今回はCBDが食欲やダイエットにもたらす影響について紹介します。
大麻草と食欲の関係を知ろう
心身の健康によいとウェルネス業界やスポーツ界まで巻き込んで大人気の成分CBD(カンナビジオール)。これはアサ=大麻草から抽出された化学物質カンナビノイドの一つで、向精神作用や依存性はありません。体内のバランス調整機能エンドカンナビノイドシステム(ECS)に働きかけ、ストレスや不安状態を改善したり、不眠解消をサポート、体内の炎症や痛みを緩和してくれることが分かっています。日本でもCBDを利用したオイルやサプリ、ドリンク等に注目が集まるようになりました。
こういった注目成分やサプリにはよく「ダイエットに効果的」というキャッチフレーズがついているもの。実際にCBD脂肪燃焼や減量効果があるのか気になるところですね。
大麻を吸引すると食欲が増進するという話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
これは大麻の中に含まれるカンナビノイドの1つTHC(テトラヒドロカンナビノール)の効果によるものです。大麻には100種類を超えるカンナビノールが含まれていますが、このTHCの効果を利用して食が細くなってしまったがん患者やエイズ患者に対して医療大麻を処方する国もあります。これは病気でやせ細り、栄養不良状態になってしまった人たちの体力回復を手助けするために処方されるものです。また抗がん剤の副作用で起こる吐き気や嘔吐を抑えるために処方される場合もあります。
THCは人間の精神を高揚させてしまうため麻薬物質として禁止されている場合が多いのですが、このようなメリットも発見されており、医療の現場ではCBDやTHCをはじめ様々なカンナビノイドを組み合わせた医療薬の研究・製造が進んでいます。カナダやイギリス、オランダ、オーストリア、アメリカの大部分の州など、難病や重病患者向けに医療大麻製剤の処方が認可されている国もかなり多いのです。
次はCBDと食欲の関係についてみていきましょう。
CBDで暴走する食欲をリセット
サプリメントとして広く利用されているカンナビノイドCBDには、食欲を抑える効果があることが2012年のマウス実験によって分かっています。また体内のバランスを整える機能エンドカンナビノイドシステムに直接働きかけ、代謝バランスを良くしてくれるそう。
てんかんの症状を治療する目的でCBDを投与した子どもの一部は食欲が増加したという例も報告されており、人間についてもCBDが等しく食欲抑制効果を発揮するかどうかは今後の研究が期待されるところですが、ダイエットを目的にCBDを生活に取り入れる人が多いのには、実は別の理由があります。
CBDには不安やストレス、不眠などのつらい症状を和らげる効果があります。ストレスや不安を感じるとそれをまぎらわせるように暴飲暴食してしまう人が多いため、これらの症状を緩和することで食べ過ぎを減らそうとする人が多いのです。
ライフスタイルと精神状態、食欲には密接な関わりがあることは科学的にも証明されています。
米スタンフォード大学が2004年に行った調査では、5時間しか寝ていない人は、8時間寝た人に比べて食欲がわくホルモン「グレリン」の量が約15%多く、食欲を抑えるホルモン「レプチン」の量が約15%低いという実験結果が出ました。
つまり睡眠時間と食欲をコントロールするホルモンのバランスが相関していることが分かったのです。
また脳で分泌される睡眠ホルモン睡眠「メラトニン」を生成するには精神や気分のバランスを保つホルモン「セロトニン」が必要になります。セロトニンは幸せホルモンとも呼ばれ、太陽を浴びる、運動する、食事をよく噛んで食べる、人やペットとスキンシップをとった時などに増えると言われています。しかし忙しい現代生活ではそういった機会が減少しており、体内のセロトニン分泌量も減ってしまいます。
つまり多忙でストレスの多い生活を送っていると、
セロトニン低下
↓
睡眠不足
↓
グレリン増加
↓
食欲が暴走
↓
体調不良や体重増加でますますストレス
という負のスパイラルが起こりがち。
ロンドン大学が行った研究においても、うつや不安傾向にある人は、そうでない人に比べ体重増加が見られるケースが多く、肥満率は2倍におよぶと報告されています。
CBDをサプリとして取り入れると、こういったストレスによる緊張状態や不眠状態を改善し、その結果ホルモンバランスが自然に整えられ、過剰になっていた食欲が元に戻りガマンせずに以前より食欲が抑えられるということになります。
つまりメンタルを安定させることでドカ食いを防ぐという、間接的なダイエット効果が期待できるということになります。
ほかにも、大麻草に含まれるTHCV (テトラヒドロカンナビバリン) という別のカンナビノイドは、THCとよく似た構造をもちながらも食欲を抑制し、発作とけいれんを減らし、骨の成長促進を刺激する作用があることが分かっており、こちらも今後医療への応用ができる成分として期待されています。
CBDは脂肪も燃やす?
CBDには白色脂肪細胞を褐色脂肪細胞に変化させるという作用も報告されています。
人体内にある脂肪には白色脂肪と褐色脂肪という2つの種類があり、白色脂肪細胞は余剰エネルギーを蓄える脂肪の貯蔵庫として働き、褐色脂肪細胞は脂肪をエネルギーとして利用し消費する働きがあります。この褐色脂肪細胞は新生児には多く存在しますが、大人になるにつれて減少していくといわれています。
脂肪細胞の量には個人差がありますが、体内の褐色脂肪がたくさん存在すればするほど、脂肪がエネルギーとして消費されやすい体ということになります。
2016年に分子細胞生物学の専門誌Molecular and Cellular Biochemistryに発表された研究によると、CBDには白色脂肪細胞を褐色脂肪細胞に変える「ファットブラウニング」と呼ばれる現象を促すだけでなく、脂肪がより効果的に分解されカロリーとして使われるサポートの役割も果たしているとのこと。このため、将来的にメタボリックシンドロームの改善にもCBDを利用できるのではないかという期待が高まっているのです。
総合的に考えると、CBDは健康的なダイエットに役立ってくれると言えるのではないでしょうか。
まとめ
CBDは魔法のやせ薬ではありませんが、心と体のバランスを整え、健康状態に導いてくれるサポート役を努めてくれます。
食事内容や運動・睡眠などのライフスタイル改善と組み合わせて、上手にCBDを取り入れてみてはいかがでしょうか。
引用元
<参考文献>
●CBDの食欲抑制効果ほか
https://www.medicalnewstoday.com/articles/324733#claims-and-research
ファットブラウニング 2016年
●Cannabidiol promotes browning in 3T3-L1 adipocytes; Molecular and Cellular Biochemistry; May 2016; Hilal Ahmad Parray & Jong Won Yun; https://link.springer.com/article/10.1007/s11010-016-2702-5
●https://www.healthline.com/nutrition/cbd-oil-for-weight-loss