最近気になる注目の健康ワードは「免疫力」。細菌やウイルスといった外敵から体を守るために自然に備わっている大切な防護機能のことです。手洗いやうがいによってウイルスや細菌の侵入を予防することも大切ですが、サプリメントなどで体を整え、健康の底上げして万全に備えておきたいもの。今回は、注目の成分CBD(カンナビジオール)と免疫力の関係についてご紹介します。
CBDとはどんなもの
CBDとはカンナビジオールの略で、大麻草に100種類以上含まれる化学物質カンナビノイドのひとつです。大麻草からできていると聞くと「安全なのか、違法性はないのか」と不安を覚えるかもしれませんが、CBD自体には麻薬のような向精神作用や中毒性はなく、 WHO(世界保健機構)も、CBDは公衆衛生上の問題も濫用の危険性もないということを公式発表しています。
多くの人が持つ大麻草=麻薬という先入観はTHC(テトラヒドロカンナビノール)というカンナビノイドの引き起こす作用によるもの。THCは摂取すると多幸感を覚えたりいわゆる「ハイ」の状態を引き起こすことが知られています。このため危険というイメージがつきまとうのですが、THCのもたらす機能の中にも様々な病気の治療に役立つ薬理作用が見つかっており、医療界で現在研究が進められています。
サプリメントとして利用されるCBDはTHC含有量が少ない部分を使って抽出したり、製造の過程でTHCが取り除かれているため麻薬的な作用はなく安心して使うことができます。オイル状の商品からコーヒーや紅茶などのドリンクに配合したもの、チョコレートやグミなどのお菓子、シャンプーや歯磨き粉に配合されるなど海外ではどんどん生活に浸透し、スーパーでも見かける商品になりつつあります。
どんな効果がある?
人によってCBDへの反応は異なりますが、サプリとして利用した場合に得られるCBDの効果には大きく分けて3つあります。
- 抗炎症作用
- 抗酸化作用
- 精神安定作用
ほかにも不眠の軽減、けいれんを抑える効果や吐き気を抑えるなど様々な効果が報告されており、難病患者の症状が改善した例も多数報告され、海外では医療用として処方されるケースも増えています。
免疫とエンドカンナビノイド
人間の体内には、私たちが生きていくために本来備わっているECS(エンド・カンナビノイド・システム)と呼ばれる身体調節機能があります。ECSは食欲、痛み、免疫、感情、運動機能、神経の保護、認知機能などをつかさどり、私たちの体が一定の状態を保ち安全でいられるよう働いている複雑なネットワークです。
同時に体内ではエンドカンナビノイド(内因性カンナビノイド)という化合物が産生され、これらがECSで受容体と結合すると、睡眠・食欲・痛み・免疫・体温調節・記憶といった身体機能に影響を与えると言われています。
大麻草から抽出されたCBDは体内のエンドカンナビノイドを補う形でECSに働きかけ、問題があれば症状に働きかけて症状の緩和を促すと考えられています。またエンドカンナビノイド受容体は、皮膚や内蔵、生殖器、脳など体内の様々な場所に存在し、ヒトの免疫系にも影響を与えます。免疫系というのは体内に入って来た異物を排除し、一定の状態を保とうとする機能。つまりバランス調節機能の1つなのです。
実は免疫を抑制する効果も
ジェームズ M. ニコルスとバーバラ L.F. カプランによる研究(2019年)では、実験データを分析した結果、CBDには免疫抑制作用と抗炎症作用があるという結論が発表されています。免疫を抑制してしまうのは一見悪いことのように思われますが、アレルギーや多発性硬化症(MS)、関節リウマチ、乾癬といった自己免疫疾患の症状において、CBDは効果を発揮します。
これらの自己免疫疾患は免疫系が正常に機能しなくなり、時分で自分の組織を攻撃してしまう病気。CBDは免疫系の暴走を抑えてこのバランスを保ってくれる作用があるのです。
またCBDを利用したからといって普通の健康状態にある人の免疫力が下がってしまうとは限りません。ECS(エンド・カンナビノイド・システム)は上がったもの下げ、下げたものを上げるというバランス維持が仕事。そしてCBDは先ほど述べたように、ECSの機能を高める作用があることが分かっています。
バランスが保たれることで体が健康な状態に保たれ、病気への抵抗力が高まることも考えられます。
またCBDには痛み・炎症・不安や不眠を緩和してくれる作用があります。CBDを取り入れることでストレスや痛みが軽減し、充分な睡眠を確保でき体を休めることができるなど、間接的な形で免疫力をサポートする可能性は大いにあると言えるでしょう。
ストレスと免疫力
ストレスと免疫力の関係も見過ごすことができません。
ストレスは色々な感染症に対する免疫力に影響を及ぼします。ストレスが過度になれば自律神経のバランスが崩れさまざまな心理的・身体的症状があらわれることはよく知られています。そして私たちが持続的な強いストレスを受けると、脳からストレスに反応してステロイドホルモンや神経伝達物質が分泌され、白血球中のリンパ球や細胞の働きを低下させることが動物実験で分かっています。
白血球の役割は、ウイルスや細菌などの異物が体内に入ったときに、自分のなかにそれを取り込んで消化分解する、つまり悪者を退治すること。この働きが弱ってしまうことはつまり免疫力の低下になります。
またストレスによって精神のバランスを崩し、心の病になってしまう人も多くいます。またストレスをかかえるせいで眠れなくなったり、飲酒量が増えてしまった結果、健康が損なわれることもあります。
CBDはエンドカンナビノイドを通じてストレスと不安に働きかけ、精神の安定やリラックス効果を与え、気分をより前向きにしてくれると考えられます。
折れない心、強いメンタル作りとあわせてCBDを生活に上手に取り入れることもメンタル面での抵抗力アップに役立つのではないでしょうか。
安眠のためには、寝る前30分から1時間前に、CBDオイルを舌下摂取するのがおすすめ。CBD配合したノンカフェインのお茶を飲むのもリラックス効果が高まり良いものです。
まとめ
今回はCBDと体内の調節機能、そして免疫の関係についてご紹介しました。
病気にかかりにくい体を作るためには、日頃から睡眠や休養、栄養バランスのとれた食事、そしてストレスに負けないしなやかなメンタル作りが大切です。健康のブースト役としてCBD を取り入れることに問題はみられないでしょう。
もちろん現在病気治療中で投薬を受けている場合は、投薬との相互作用もありますのでCBD利用の前に医師と相談することをおすすめします。
魔法のやせ薬が存在しないように、「CBDをとれば病気にかからない」「これさえ飲めば治る」といった話は誇大広告になりますが、健康的な生活を心がけつつCBDを健康維持のサポート役として活用し、強い体作りに役立ててみてください。
引用元
<参考資料>
免疫抑制
https://canex.co.uk/how-does-cbd-affect-the-immune-system-and-autoimmune-disease/
https://www.grecc.org/actualites/immune-responses-regulated-by-cannabidiol-james-m-nichols-and-barbara-l-f-kaplan-2019/
ストレスと白血球<生理学者ハンス・セリエ博士の学説>
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3341916/
https://www.kanagawas.johas.go.jp/publics/index/202/detail=1/b_id=764/r_id=80/