蘭カンナビノイド協会、トレーサビリティ無料検索ツールを開発
食品業界では、さまざまな生産者が関わるサプライチェーンの透明性を高め品質保証する技術として「ブロックチェーン」が注目されています。
本記事では大麻製品のブロックチェーン導入検索ツールが登場したという、オランダ発のニュースを解説します。
「弾圧より管理」で安全を目指すオランダ
嗜好用の大麻を含むソフトドラッグについて、独自の取り組みを行っているオランダ。厳しく弾圧し、犯罪組織等の闇マーケットに出回ってしまうとかえって危険だという考えをもとに、ソフトドラッグの個人利用を使用できる年齢や所持できる量などのルールを明確に規定したうえで容認しています。
ハードドラッグ使用者にさえHIV予防のため注射針を提供するなど、かなり先進的かつ独自の政策が特徴的です。
また医療大麻の研究も進んでいるオランダでは、医療大麻の処方も受けやすくなっています。このため欧州で流通売される大麻由来のCBD(カンナビジオール)などを利用したサプリメントには、オランダ産の商品が数多く見られ、上質な製品が多いという定評があります。
このように欧州のカナビス先進国といえるオランダで、2020年8月、カナビス関連商品のトレーサビリティを保証するためのオンラインの検索ツールが開発され、消費者に無料提供を開始するというニュースが報じられました。
食品と同様の扱いを
オランダのカンナビノイド協会では、大麻を食品と同様にとらえ、消費者がCBD製品を種子の状態から商品棚に並ぶまでを追跡できるようにする無料検索ツールCanCheckシステムを開発提供し、商品の安全性と流通の透明性を高めようとしています。
欧州では国によってCBD製品への規制も細かく異なります。素性がはっきり分かっている製品の方が輸入もしやすく、その国の規制に沿った商品輸入が可能になるため、トレーサビリティを明確にしておくことは、安全のためだけでなくより広い流通のためにも欠かせない要素になってくるのです。
産業用ヘンプ生産会社Sensi Seeds系列のCBD商品メーカーHempFlax CEOのマーク・レインダース氏は今回の検索システム立ち上げについて、以下のようにコメントしています。
「今日のブロックチェーンテクノロジーを使用して生産を追跡することで、オンラインおよび店舗でCBD製品を選択するときに消費者に安心を与えることができます。完全なトレーサビリティと品質管理体制を組み合わせることは、製品の品質を保証し、消費者を保護することにつながります。 私たちは、世界中のCBD生産者にも同レベルの透明性を採用することを期待しています。」
検索ツールCanCheck.orgでは、CAN品質マークが付いた商品を個々の生産者・業者が、いつ、どこから、何を、どれだけ入荷し、どう出荷したかを入出荷時に記録・保存できるようサプライチェーンに沿ったすべてのリンクが「ブロックチェーン」によって保存されるようになっています。
ブロックチェーンとは?
もともと仮想通貨の基盤技術として注目を集めてきたブロックチェーン技術。ネットワーク内で発生した取引の記録を「ブロック」と呼ばれる記録の塊に格納し、これらの生成ブロックが、時系列に沿ってつながっていく、チェーン型のデータ構造になっており、改ざんを加えることは非常に難しくなっています。
そしてこの「取引データを追跡できる」という特性を活かし、食品流通分野での活用もかなり進んでいます。
CanCheck.orgではCAN品質マークが付いたCBD製品はすべて情報のトレースが可能となり、その内容を検証することが可能になっています。
データには認定の研究所が実施した明確な製品組成分析も含まれており、有効成分CBD(カンナビジオール)およびTHC(テトラヒドロカンナビノール)の含有量や汚染物質の有無といった細かい情報もすべて入手可能。
また「フルスペクトル」タイプのCBD製品に含まれる、自然由来のすべてのカンナビノイドについての情報を入手することも可能になっています(※)。商品パッケージからだけでは得られない詳細な情報が消費者に提供されることになったのです。
※「フルスペクトル」とは
「フルスペクトル」タイプのCBD製品には、麻の植物で自然に発生するすべてのカンナビノイドが含まれており、カンナビノイドやテルペン、フラボノイドといった成分を同時に摂取することにより、これらが相互作用し性能を高める「アントラージュ効果」をもたらすと考えられています。麻に含まれるさまざまな成分が相互作用することで身体調節機能エンドカンナビノイドシステム(ECS)に影響を与え、負の副作用を抑えたり、より高いレベルで成分の持つ効果を発揮することが期待できます。
なぜトレーサビリティが重要なのか
大麻由来の成分CBD(カンナビジオール)の人気により、さまざまな製品が登場している現在。
各生産者がCBD商品を取扱った際の記録を作成し、それがすべてチェックできる方法で保存する。生産と流通ルートの透明性や追跡可能性、つまりトレーサビリティの確保はマーケットが広がれば広がるほど重要になってきます。
例えばある食品を食べた人が食中毒を起こした場合に、その製品がどこで製造され、加工され、原材料がどこで収穫されたか、そしてどのような経路をたどって消費者のもとに届いたことが分かれば、食中毒の原因になったファクターが突き止めやすくなります。
体の中に取り入れる食品やサプリの安全性はしっかり把握しておきたいもの。
CBD商品がどんな品種でどこで栽培され加工され、どうやって手元に届いたのかその経路を管理記憶することは、消費者への品質保証となるほかに生産者が高水準の商品を提供していくために欠かせないステップになるのです。
まとめ
今回は大麻製品のトレーサビリティについてご紹介しました。
個々のメーカーの品質管理に頼るだけでなく、業界全体のサプライチェーン全体の透明性を高め、関連業者のクオリティを管理することは、業界の責任であると同時にリスクマネジメントにもなります。
さらに成長を続ける大麻産業の社会的責任として、生産プロセスで何が起こっているかを正確に記録し、データと信頼を積み重ねていくことが業界の更なる発展につながっていくのではないでしょうか。
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<ニュース源>
ライター:根本