人は苦しいとき、医療を頼ったり法律を頼ったりして問題の解決方法を見出そうとします。病に苦しむ人は、医師の診断と外科的な処置、投薬など、それぞれのケースに合わせて適切な処置を求めるでしょう。
しかし科学や医学は今なお発展途中にあり、人体の神秘となるとむしろわからないことの方が多いのが現実です。今後何十年何百年とかけて生体はさらに解明され、医学もいっそう発展していくでしょう。こうしたトピックにおいて、大麻は一つの重大なキーワードです。
もし今の日本で大麻を医療用として使うことができたら、一体どのような変化が想定されるでしょうか?
大麻に含まれる「カンナビノイド」とは
大麻は多種の病において症状の緩和や改善効果に期待できることがわかってきています。たとえばガン、気管支喘息、アルツハイマー、HIV、パーキンソン病、帯状疱疹、多発性硬化症、クローン病などのほか強迫性障害や不眠症などの精神疾患など、およそ250種類の疾患に効果があるといわれています。
こうした効果は、大麻に含まれる成分であるカンナビノイドによるものです。
大麻には60種類を超えるカンナビノイドが含まれており、その中でもっとも含有量の多いTHCとCBD、CBNは3大カンナビノイドといわれています。大麻を吸引あるいは摂取して陶酔感を覚えるのはTHCによるもので、CBDやCBNなどには原則としてそうした効果はないとされています。
医療用大麻などではこうした有効成分を抽出加工し、処方薬として製品化されています。また大麻をハーブとして利用する際は、乾燥させた大麻の花穂や葉を燃やしたり加熱したりしてその煙を吸引して利用されます。
なお日本においてこれらの行為(大麻の所持や譲渡など)は大麻取締法、麻薬及び向精神薬取締法にて厳しく規制されています。
カンナビノイドの鎮痛作用
仮に今すぐカンナビノイドを医療で使えるようになったとしましょう。果たして医療の現場ではどのような変化が想定できるでしょうか。
まず、ガンなど痛みを伴う病において、大麻の鎮痛作用によってその痛みを緩和することができます。モルヒネなどオピオイド系鎮痛薬と大麻の決定的な違いは、大麻はオピオイド系鎮痛薬のように急速に耐性が形成されないということ。さらに高い安全性で運用しやすいということです。
オピオイド系鎮痛薬は使用に伴い耐性がつき、次第に用量を増やさないと十分な効果が得られなくなる傾向があります。併せて呼吸中枢への作用により呼吸抑制が引き起こされ、呼吸停止により死亡するリスクもあります。アメリカではオピオイド系鎮痛薬による死亡事故人数が1999年に4400人、2010年には16000人にものぼったことがわかっています。
カンナビノイドをガン治療へと積極的に採用すれば、こうした事故やリスクを減らせる可能性があります。
吐き気の緩和と食欲増進
ガン治療においては、化学療法による吐き気や食欲不振などが問題になるケースが少なくありません。カンナビノイドには吐き気を抑え食欲を増進させる効果があるため、化学療法の副作用への対症療法としてカンナビノイドが効果的なことがわかっています。海外ではこうしたケースに対して実際に大麻が処方され、医療用大麻が実用化されています。
カンナビノイドはガンの治療だけでなく、悪阻(つわり)などに伴う吐き気や食欲低下にも効果的です。アメリカのカリフォルニア州での調査によりますと、悪阻症状の改善に妊婦が大麻を利用したケースが2009年では4.2%、2016年には7.1%にまで増加していたことがわかりました。こうした兆候はカリフォルニア州だけに留まらず、アメリカ全土で広がっています。
ただし、大麻が胎児や妊娠中の母体にどのような影響を及ぼすのかまだはっきりとわかっていないため、これらの行為に警鐘を鳴らす専門家もいます。
睡眠&リラックス効果
カンナビノイドには睡眠作用があるため、とくに不眠症や不安障害などの精神疾患に効果的であることがわかっています。カンナビノイドを摂取することで安眠が得られるだけでなく、リラックス効果による不安やストレスの軽減作用にも期待できます。
一方でこうした睡眠効果、リラックス効果は、集中力が必要とされる場面では必ずしもメリットとなりません。たとえば自動車の運転中にカンナビノイドを摂取した場合、車の誤操作や居眠り、よそ見、集中力散漫などによる事故のリスクが高まります。医療大麻を使用する適切なタイミング、シチュエーション、容量などの管理が重要な課題となってきます。
まとめ
残念ながら、本項に記した大麻の恩恵はすべて、現在の日本では実現されません。たった今もガンの痛みや化学療法の副作用に悩んでいる人達がいます。たった今も不安障害や不眠で苦しんでいる人達がいます。たった今も吐き気や食欲低下で悩んでいる人達がいます。本来であればこうした人達の苦悩は、カンナビノイドの処方により即座に解消されるのかもしれません。
せめて私達の子供世代が不要な苦しみに人生の多くの時間を奪われないよう、未来を変えるために必要な下地を今のうちから着々と築いていくしかないのかもしれません。
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情報引用元(参考文献、URL、URKページ タイトル記載)
http://www.f-gtc.or.jp/medical-cannabis/medical-marijuana-for-cancer.html