麻と聞けば日本に住んでいる日本人の中ではあまり良いイメージを持たれないのではないでしょうか?
そんな麻ですが、実は古代から人と密接に関わるとても身近な植物だったのです。
現在の日本での麻のイメージとは違った麻の背景、人間と麻はどのように関りあってきたのか、その歴史を紐解いていきましょう。
人類最古の繊維として重宝される
麻とは人類が初めて繊維を得るために栽培したといわれており、「人類最古の繊維」という伝えがあります。麻を使い始めたのはおよそ1万年前で、世界文化発祥の地チグリス・ユーフラテス川に芽生えたもの。
麻を使った洋服を着用している絵画が見つかっていることから、すでに人類は麻の特徴でもある耐久性の高さや通気性の良さに目をつけ、衣類に活用していたといわれているのです。
この時点でわかるように、人間と麻は遠い昔からすでに関係があり、その歴史はとても長いです。麻は20種類以上あり、そのなかでも亜麻(リネン)は現代において最も親しまれています。
聖書にも繊維として麻の記録があり、18世紀頃には生産が高くなり衣料としての存在意義を確立していきます。
古代エジプト王朝時代には神聖なものとして認識されていた
麻は古代エジプト王朝時代において、神聖なものとして人々に認識されていました。麻はWoven Moonlight、つまり月光で織られた生地といわれており、神事に使われていたといわれています。
エジプトの王様の墓には麻を栽培した記録となる壁画が残されていたり、カラシリスという巻衣は神様に許されたものとされていたりと、特別な繊維と考えられていたようです。
一般的な衣類にも使われていたようですが、先に述べたように神様に許されたものという認識から神官の衣類に用いられることも。また、エジプト王のミイラは麻製の布で包まれていることが確認されています。
権威や格式を重んじる場でリネンが使われる
亜麻(リネン)は、神事に使われていたという記録がある通り、神聖なものという認識がありました。そのため、権威や格式を重んじる場で使用されていたといわれています。とくにヨーロッパでは品格や家風を象徴する繊維であり、その家系で代々引き継がれていくほどです。権威や格式を重んじるという考えは現代にも残っており、例えばいわゆる一流といわれるホテルでは、ベッドやテーブルのまわりに使われています。さらに、ポケットチーフやハンカチーフもリネンが使われているのです。
さらに、皇室のテーブルクロスやシーツにも麻は使われており、格式ある場にはなくてはならない繊維といっても過言ではありません。格式や権威を大事にするシーンであるアメリカホワイトハウスでの晩餐会では、テーブルクロスやナプキンの素材は亜麻(リネン)です。
麻の特性から衣類や寝具などの身近なものに活用される
麻は多くの場で親しまれている繊維です。その理由としては、麻が持っている特性が関係しています。ここではその特性について説明していきます。
「吸水や発散性に優れている」
麻の特徴として、吸水性や発散性に優れている点が挙げられます。肌触りが良い点も特徴であり、サラサラとして肌に優しく、かつ水分や汗を吸い取る特性があるため、とくに夏物の衣類や寝具には活用されています。吸い取った水分を発散する力にも長けていることから蒸れにくい点も麻素材を使っている物のメリットで、コットンやシルクなども肌触りは非常に良いですが、麻の方がこの発散性に優れている点から、シーツ・ピローケース・パジャマなどに使われることが多いです。
また、最近では耳にすることが多くなってきた接触冷感ですが、これは肌に触れると冷たく感じることを意味しています。接触冷感素材は熱伝導率が高いのが特徴で、触れた物質の熱を吸い取るイメージです。この熱伝導率について麻は非常に優れており、シルクやコットンなどを凌ぎます。そのため、寝苦しい夏の夜には麻素材の寝具が活用され、今では多くのメーカーで使われているのです。
「高い耐久性を誇り汚れも落ちやすい」
麻は耐久性に優れているのが特徴。天然素材のなかでも非常に強く、その特徴を活かして今では船を停めて置く際に使用する係留ロープに活用されています。さらに、麻は汚れが落ちやすい繊維としても知られています。その特性から、ホテルではベッド回りやテーブルなどに使用されているのです。水に強いことから洗濯もしやすいため、手入れが容易である点もシルクよりも麻を好む人が多い理由のひとつです。さらに、汚れが落ちやすいうえ臭いが付きにくいのも麻を使うメリット。カビなどの雑菌が繁殖することを抑制するため、清潔な状態を維持できます。
麻が持つこれらの特性から、衣類や寝具など身近なものに用いられていることが多くあります。これは、現代では当たり前のようになっていますが、大昔に遡った際も活用方法は大きく変わりません。ただし、あえて注意点を挙げるのであれば、麻はその耐久性の高さゆえ伸びにくさがあり、シワになりやすい点があります。麻素材の衣類はあえてシワをおしゃれとして楽しむというアイテムも発売されていますが、人によっては好みが分かれやすいでしょう。
まとめ
麻は人間の歴史と大きく関わっている繊維で、その繋がりは数万年前まで遡ります。神聖なもの、権威や格式のあるものとして認識されている反面、寝具や衣類などの身近なアイテムにも使用されているのが特徴です。
これらを考えてみると人間と密接な関係にある麻は、これからも私たちの生活を豊かにしてくれる天然素材といっても過言ではありません。
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情報元URL
https://asabo.jp/museum/tradition/日本紡績協会『伝統と生活の麻』
https://sunchi.jp/sunchilist/craft/115196麻とはどんな素材なのか
https://www.binchoutan.com/hemp/info.htmlプレマ株式会社『ヘンプの歴史、魅力効果』
http://nihonnoasa.com/about_nihonnoasa/日本の麻『日本の麻とは』
https://isshomono.com/clothes/post-1902洋服屋の一生モノブログ『人類にもっとも愛された素材』