
アントラージュ効果とは、大麻草に含まれる様々な成分が一緒に働くことで、効果がより高まる現象を指します。まだ解明されていない部分も多い分野ですが、なんとある食材と組み合わせることでも、大麻成分が優れた効果を発揮することが分かっています。
不思議がいっぱいのアントラージュ効果
アントラージュとはもともとフランス語で、「取り巻き、および環境」を意味する単語です。また大麻でいうアントラージュ効果は、その言葉をもとに大麻草に含まれる様々なカンナビノイドやテルペンなどの成分が相互作用し、単一の成分よりも強い効果を発揮する現象を指しす様になりました。近年このアントラージュ効果が、大麻の医療的可能性を広げる鍵として注目されています。
大麻の有効成分カンナビノイド
カンナビノイドとは、大麻草(カンナビス)に含まれる100種類以上の化合物の総称です。これらを人間が摂取することによって体内のエンドカンナビノイドシステム(ECS)に働きかけ、様々な生理的効果をもたらします。
主要なカンナビノイドには以下のようなものがあげられます。
THC(テトラヒドロカンナビノール):
-精神活性作用があり、高揚感を引き起こします。
-鎮痛作用や食欲増進、吐き気を抑える作用もあります。
CBD(カンナビジオール):
-精神活性作用がほとんどなく、リラックス効果や抗炎症作用、鎮痛作用があります。
-不安症状やてんかん、慢性痛の緩和によく使用されます。
CBN(カンナビノール):
-熟成した大麻草に含まれることが多く、鎮静作用があります。
-入眠と安眠効果があるとされています。
CBG(カンナビゲロール):
-抗菌作用や抗炎症作用があり、注目成分の1つとして研究が進んでいます。
こういったカンナビノイドは、食欲、睡眠、気分、免疫機能、痛みの感覚など私たちの心身の様々な機能に作用します。
香り成分で有名なテルペン

もう1つの注目成分「テルペン」は大麻草だけでなく植物全般に存在する化合物で、香りや味の源になっており、抗菌や抗炎症作用、リラックス効果といった健康効果を持ちます。テルペンを生かした健康法としては森林浴やアロマテラピー、ハーブ療などがよく知られています。
テルペンの例としては以下のような成分があります。
リモネン(Limonene)
-レモンや柑橘類の香りを持ち、抗炎症作用や抗菌作用があり、気分を高める効果があります。
ピネン(Pinene)
-松のような香りを持ち、抗炎症作用や気道拡張作用があります。
カリオフィレン(Caryophyllene)
-スパイシーな香りを持ち、鎮痛作用や抗炎症作用があります。
ミルセン(Myrcene)
-ハーブやスパイシーな香りを持ち、鎮静作用や筋肉のリラックス効果があります。
テルピネン(Terpinene)
-ハーブやスパイシーな香りを持ち、抗菌作用や抗酸化作用があります。
具体的なメカニズムは?
アントラージュ効果に関する科学的エビデンスは増えていますが、まだ完全には解明されていません。しかしたくさんの研究が進む中、大麻草の成分をまんべんなく利用することで得られるメリットについて理解が深まっています。
アントラージュ効果の基本的な考え方は、「成分が協力し合うことで、単独では得られない効果が生まれる」というものです。これは、カンナビノイドやテルペンのそれぞれの成分が持つ特性が、互いに作用し合って全体の効果を引き出すという考え方です。
たとえば、大麻草に含まれるCBD(カンナビジオール)とTHC(テトラヒドロカンナビノール)は、それぞれ単独でも健康効果がありますが、一緒に摂取することで互いの効果を高め合うとされています。THCの副作用をCBDが抑えたり、CBDの鎮痛効果がTHCによって強化されると言われているためです。
このようなアントラージュ効果はカンナビノイド同士だけでなく、 テルペンとカンナビノイドの組み合わせでも起こります。
<例>
リモネンとCBD:
-レモンのような香りを持つリモネンは、リラックス効果や気分を高めます。
-CBDの鎮静効果をサポートし、より深いリラックス感を得られるとされています。
リナロールとTHC:
-リナロールはラベンダーの香りを持ち、リラックス作用や抗不安作用があります。
-THCの精神活性作用を和らげる効果があり、THCの強い作用を調整します。
どの組み合わせが効果的?
効果的なアントラージュ効果を得るためには、カンナビノイドとテルペンのベストな組み合わせを見つけることが重要です。精神作用だけでなく、鎮痛剤としてもテルペンとカンナビノイドの組み合わせが有効であることがマウス実験でわかっています。しかし現時点では、どの組み合わせが最も効果的なのかを断定することはできておらず、さらなる研究が進められています。
研究者は、様々な大麻株や抽出物、配合方法を組み合わせた実験を行っています。しかし個人の体質や症状によっても効果的な組み合わせは異なるため、上のような例が全ての人に当てはまるとは言えないのが現状のようです。

春の味覚・ふきのとうをスキンケアに
ほろ苦い風味が珍重される春の味覚・ふきのとうの蕾に含まれる成分が、CBDに似た分子構造を持つこともわかりました。抗菌・抗炎症作用のあるイソペタシンなど、テルペンも豊富であるふきのとう成分をアトピー性皮膚炎や老化防止などのスキンケアに応用するという研究もされています。実験では精製されたCBDとふきのとう成分を組み合わせることで、抗炎症作用が著しく高まるというアントラージュ効果が確認されました。花粉症などによる肌トラブルを改善する効果も期待できるとのことで、皮膚科やコスメ業界で期待が高まっています。
まとめ
現在では、がん患者の痛みの管理や重度のてんかん治療に医療大麻が使われるようになっています。ここでもアントラージュ効果は、大麻の医療的可能性を広げる助けとなりそうです。
現在、多くの研究者がこの不思議な現象のメカニズムや医療活用方法を探しています。一般の消費者にとっても遠い話ではなく、大麻草に含まれる成分を幅広く取り入れたCBDブロードスペクトラムやフルスペクトラム製品などの製品を通じて、アントラージュ効果の恩恵を受けることができるといわれているのです。
<参考資料>