アメリカでは大麻への意識が変わり、アルコールよりも安全と考える人が増えています。人と話し繋がる場所として従来のバーに代わりに大麻ラウンジを利用する若い世代も増えています。アルコールを飲まない「ソバーキュリアス」流行とも連動して、新しい「酔い」を楽しんでいるようです。
ロックダウン後の若者カルチャーの変化
1997年から2012年に生まれたZ世代は、今までの若者とは違ったライフスタイルを好んでいるようです。特に、お酒を飲む量が少ない傾向が顕著だといわれています。20代の中でお酒を全く飲まない人の割合も増えています。コロナ後に特に顕著になったこの傾向には5つの理由があると言われています。
Z世代がお酒をあまり飲まない理由1
<ヘルシー志向の高まり>
健康志向の高まりから、アルコールを控える若者が増えています。特に、SNSやインターネットを通じて健康情報が手に入りやすくなり、健康への意識が高まっています。
Z世代があまりお酒を飲まない理由2
<価値観の変化>
お酒を飲むこと自体に価値を見出すのではなく、人と繋がることや新しい体験を楽しむことを重視する若者が増えています。SNSやオンラインゲームなど、お酒を飲まなくても人と繋がる手段が増えたことも影響しているようです。
Z世代がお酒をあまり飲まない理由3
<エンターテインメントの充実>
動画配信サービスや音楽ストリーミングサービスなど、エンターテインメントの選択肢が豊富になりました。そのため、家の中で気軽に楽しめる娯楽が増え、外出してまでお酒を飲む必要性が減ったという声もあります。
Z世代がお酒をあまり飲まない理由4
<経済的な理由>
経済的に余裕がない若者が増えていることも、飲酒量の減少に影響している可能性があります。アルコール飲料は比較的安価な嗜好品ですが、それでも家計に負担となる場合も多いのです。またノンアルコール飲料の種類や品質が向上しており、お酒を飲まない人でも楽しめる選択肢が増えています。特に、クラフトビールやスピリッツ類、カクテルなど、本格的な味わいのノンアルコール飲料が人気を集めています。
Z世代がお酒をあまり飲まない理由5
<大麻合法化の流れ>
州ごとに大麻合法化が進んでいるアメリカでは、Z世代のアルコール離れが大麻人気にも関連があると考えられています。米国のエンタメ業界ではロックダウン後、ライブ会場でのアルコール消費が減少し、ノンアルコール飲料を選ぶ若い人が増えているといいます。加えて、お酒の代わりに合法的な大麻を楽しむ若者も増加しています。
お酒と大麻のメリット・デメリット
ニュー・フロンティア・データの2022年レポートによると、18歳から24歳の69%、25歳から34歳の70%、35歳から44歳の68%がアルコールよりも大麻を好んでいるという驚きの結果が出ています。大麻は多くの州で合法化されてきておりZ世代にとって身近なものとなったことや、新しいものを試したい冒険心も、要因として挙げられます。
お酒と大麻は、どちらも精神にプラスとマイナスの影響を与えます。
例えばアルコールは社交的になったりリラックスする効果がありますが、飲みすぎると急性アルコール中毒や二日酔いを引き起こし、長期的には成人病や依存症のリスクがあります。人によっては攻撃的になり暴力行為に及ぶこともあります。
大麻はリラックスや多幸感をもたらしますが、場合によっては被害妄想や不安を引き起こすこともあります。長期的には呼吸器系や認知機能への影響が懸念され、判断力が低下することから交通事故やけがのリスクも高まります。どちらも摂取を過度にすると健康に悪影響を及ぼす可能性があるので注意が必要です。
アルコールを飲まない「ソバーキュリアス」の流行
アルコール離れには「ソバーキュリアス」の流行も関係しています。ソバーキュリアス(Sober Curious)とは、2019年ごろから欧米で広がった、あえてお酒を飲まないライフスタイルのことです。単にお酒を我慢するのではなく、健康志向や価値観の変化などさまざまな理由から、お酒を飲むことへの考え方が変わった人々が実践しています。
ノンアルコールドリンクが増えたり、「飲み会ではお酒を飲まなくてはいけない」という社会的プレッシャーが減ったことで、周りの目を気にせずに自分の生活を楽しめるようになりました。次の日の体調を犠牲にせずに社交を楽しんだり、趣味や習い事、子育てなどをフルに楽しむ自由な考え方が広がっています。
カンナビジオールとZ世代
Z世代の中には、大麻成分を上手に使い分ける人が増えています。大麻には多くの成分が含まれていますが、その中で精神に作用するのはTHC(テトラヒドロカンナビノール)です。このため、THCを抽出してドリンクや食用製品(エディブル)として摂取し、アルコールとは違ったリラックスを楽しんでいます。
一方、非精神活性成分のCBD(カンナビジオール)は、健康や美容に効果があるとされ、Z世代の間で人気が高まっています。CBDは不安やストレスを和らげ、睡眠の質を向上させるため、深いリラックスを求める人々にとって理想的な選択肢です。
もちろん、乱用のケースがないわけではありませんが、Z世代が健康やウェルネスの新しい方法を探していることを示しています。従来のアルコールに頼らず、自分たちのライフスタイルに合った方法で心身の健康を保ちつつ生活を楽しんでいるのです。
大麻ラウンジの台頭
米国では、Z世代向けに新しいエンタメ施設である大麻ラウンジが登場しています。これは大麻が合法な州でのみ営業し、安全に大麻を楽しめる場所です。多くのラウンジでは、カフェメニューのほか、ノンアルコール飲料や軽食も楽しむことができます。
こうした場所は観光スポットとしても人気があり、集まる人々から新しい音楽やファッションのトレンドが生まれることが期待されています。また、Z世代が求める新しいエンタメスポットとして、今後ますます注目を集めるでしょう。単に大麻を楽しむだけでなく、新しい出会いや文化体験、そして健康的で多様なソーシャルライフを提供する場所として期待されています。
<参考資料>