ドイツでは2024年4月1日より娯楽用大麻が合法化され、ヨーロッパ各地の都市でこの歴史的な出来事を祝うイベントが開催されました。
なぜドイツで大麻が解禁されたのか
2024年4月1日、ドイツは娯楽用大麻の合法化という歴史的瞬間を迎えました。 ヨーロッパ各地の都市ではこの出来事を祝い、さまざまなイベントが開催されました。
嗜好品大麻の合法化はヨーロッパではマルタ(2021年)、ルクセンブルク(2023年)に次いで3カ国目となり、世界で第4番目になります。ヨーロッパ最大の経済国であるドイツの大きな決断については、ニュースやソーシャルメディアで賛否両論が巻き起こりました。
なぜドイツで大麻が解禁されたのでしょうか。
これは、いままで闇ルートで取引されてきた大麻の流通を政府の管理下に置くことで、闇マーケットでの粗悪品の取引による健康被害や未成年者の使用、犯罪への関与を防ぐのが目的とされています。
2017年以降、ドイツなど欧州の多くの国では、医療目的での大麻の使用を合法化しています。またスペインやオランダなど一部の国では、一般的な利用に関しても「違法ではあるが犯罪とはしない」という考えで処罰の対象から外すようになりました。
今回の娯楽用大麻の合法化では個人消費用に3株までの栽培と、最大25グラムの所持が認められるようになります。
ニュースやSNSではどんな反応が?
賛成派は「合法化が個人の自由を広げ、ブラックマーケットを減らし、税収入を増やすことにつながる」と主張しました。一方で反対派は「健康への悪影響や中毒のリスク、若者への悪影響な」どを懸念しています。
この合法化が周辺国にどのような影響を与えるかも注目されます。
SNSでも「ついにこの日が来た!」「これは大きな一歩」という声もあれば、「若者の健康が心配だ」「交通事故が増える」と賛否両論の意見が飛び交いました。
ドイツでは今後、大麻を合法的に育てることができるクラブの設立も許可されることになります。運営に携わる人たちは「大麻ソーシャルクラブで生まれた大麻1グラムは、闇市場に出回らない1グラムだ」とし、人々が闇市場に関わる危険を減らすことができることを喜んでいます。
ドイツでの解禁の詳細は以下の通りです。
<4月1日からの変更>
18歳以上は公共の場で25gまでの大麻所持が可能
成人は1世帯あたり最大3株の植物を育てることができる
朝7時から夜8時までは学校やスポーツセンターの目の届く範囲、あるいは「歩行者専用区域」での喫煙は禁止される。
「認可された店を通じて大麻を販売する」という当初の計画はEUの反対により撤回されましたが、大麻の販売を試験するための第2の法律が準備中です。
7月1日から
生産者協会またはソーシャルクラブを最大500人のメンバーで設立することができる
メンバーは18歳以上でドイツ在住が条件
ソーシャルクラブは非営利ベースを条件に大麻を栽培し配布することができる
クラブ内における摂取は禁止
オランダの大麻カフェと何が違うのか?
大麻に関して寛容な国というと、オランダを思い浮かべる方もいるかもしれません。実際に首都アムステルダムを訪れれば、大通りには普通のカフェとあまり変わらない店構えで「コーヒーショップ(大麻ラウンジの名称)」をあちこちで見ることができます。
しかしこんなオランダでも実は娯楽用大麻は違法です。「大麻の利用が二次的な問題を引き起こさない限り」という条件付きで、さまざまな制約のもとに、個人による栽培・所持・利用が「非犯罪化」され容認されているのです。
ドイツで新しく生まれる「大麻ソーシャルクラブ」はアムステルダムの「大麻ラウンジ」を連想させますが、中身はかなり異なるようです。
アムステルダムでも大麻を楽しむためにやってくる観光客の波を抑えるために、コーヒーショップ大麻ラウンジから観光客を当酒ようとする動きが見られます。新しく誕生するドイツのソーシャルクラブも在住者のみを対象にしており、外国からの観光客には門を閉ざしています。しかし大麻消費が合法となっていることから、再び観光客向けに闇マーケットが活性化し、犯罪組織の抑止が目的だったはずの合法化の意味がなくなってしまうと指摘する声も大きくあります。
ドイツの警察組合は、ソーシャルクラブの厳しいルールについて指摘し、「闇マーケットが今後さらに拡大するだろう」とコメントしています。クラブが機能し始めるまでに数カ月かかる上に、家庭で大麻を栽培するには忍耐と手間が必要です。そのため、合法的な供給が確立されるまでの間に、闇マーケットの需要が急増することを懸念しています。
「大麻に優しい国」になれるのか
ヨーロッパ人の55%が娯楽用大麻の合法化を支持し、30%近くが試してみたいと考えているといいますが、市場調査コンサルタント企業サバンタ・コムレスの2022年調査によると、欧州で合法化を最も支持しているのはイタリア(60%)、次いでポルトガル(59%)、スイス(58%)。そして最も反対している欧州の国は、意外にもドイツとオランダ(29%)、次いでフランスと英国(27%)でした。
今回の合法化では、これらの国にとって大きな影響を与える可能性があります。「ソーシャルクラブ」のあり方など今後の動向に注目が集まります。
変化を続けるヨーロッパ市場
大麻に関してはまだ規制の多い欧州ですが、医療大麻や大麻草から抽出されたCBD(カンナビジオール)などの有効成分カンナビノイド、そして大麻草の繊維を利用した生分解性プラスチックなどは、サステナブルに意識の高い欧州では非常に人気となっています。
CBD製品は、ストレスや不安の軽減、炎症抑制や鎮痛、関節痛の痛み軽減、筋肉の回復サポート、安眠サポートなど、副作用がほぼなしで様々な健康メリットをもたらすことから、幅広い層に支持されています。CBD製品の普及は、大麻に対する意識改革にもつながります。ドイツの大麻合法化は、社会的な意識変化の表れともいえるでしょう。
今後も各国の合法化の動きがどのように進んでいくのか、目が離せません。
<参考資料>
https://www.bbc.co.uk/news/world-europe-68674813
https://www.france24.com/en/live-news/20240401-germany-gives-controversial-green-light-to-cannabis