いよいよパリ五輪が近づいてきました。今大会ではヘンプなど天然建材を使った体育館や住居が建てられたり、また五輪選手のヘンプ成分活用もさらにポピュラーに。パリ五輪をめぐる様々なヘンプの事情についてご紹介します。
ヘンプってどんな植物?
ヘンプはアサ科の植物で、学名はカンナビス ・サティバ、日本では大麻(たいま・おおあさ)と呼ばれます。戦前までは日本でも盛んに栽培され、世界各地で古代からさまざまな用途に利用されている植物です。
ヘンプは繊維が主な用途の一つです。茎から取れる繊維は丈夫で耐久性があり、衣料品やロープ、紙などに使われます。さらに、種子から取れるオイルは栄養価が高く、食用や美容に利用されます。樹脂やバイオ燃料の原料としても注目を集めています。
またヘンプは成長が速く、短期間で多くの収穫が可能です。成長中には大気中の二酸化炭素をどんどん吸収するため、地球環境に優しい植物として再評価されています。持続可能性や多様な用途から、様々な産業での利用が再び注目を浴び、研究や普及が進んでいます。
ヘンプクリートのエコ効果
美しい都市パリで繰り広げられるパリ五輪ではこれまでの大会とは異なり、環境への配慮がテーマとなっており、特に大会に向けた都市部の新規建築においては天然由来のサステナブルな素材を使用することが政府によって奨励されています。
その中で注目を集めているのが、ヘンプクリート。ヘンプクリートは、ヘンプの茎から作られる繊維と、石灰や泥土を混ぜ合わせて作られた建材であり、耐火性や耐久性、そして断熱性に優れ、軽量で加工がしやすいため様々な使い方ができます。
このヘンプクリートもともとフランスで生まれ。歴史的な建造物の補修用に開発されたこの建材が、30年の時を経てさまざまな建築プロジェクトで活用されるようになりました。
本大会に関連する建物でも、スポーツセンターのような公共施設のほか、一軒家から集合住宅の建築までヘンプクリートの利用が際立っています。日本でも、2023年に関西で初のヘンプクリート住宅が作られ今後さらに注目されていくことでしょう。
ヘンプクリートの特長
- 耐火性、耐久性、断熱性に優れている
- 軽量で加工がしやすい
- ヘンプの栽培過程で二酸化炭素を吸収する
- 地球環境へのプラス効果
- 森林伐採の削減
- 温室効果ガスの排出削減
- 廃棄物の削減
アスリートもヘンプ成分を活用
大麻草に含まれるCBD(カンナビジオール)は、競技後の疲労回復やストレス解消、怪我のリカバリーに役立つとされ、アスリートたちの注目を浴びています。この成分に関しては、世界保健機関(WHO)が検証を行い、依存性や乱用性がないことを明らかにしました。
そして、2018年には世界アンチドーピング機構(WADA)がCBDを規制対象から外すことを発表。この決定により、プロ選手を含むアスリートたちがCBDを使うことが一気に増えました。CBDは競技後の疲労回復やストレス解消に役立つことで、コンディション向上に役立つといわれます。副作用の大きい化学薬品よりも体に優しく、アスリートたちにとって嬉しいサポート手段となっているのです。
アスリートが注目しているCBDの主な効果は、以下のようなものです。
疲労回復の促進: アスリートが激しいトレーニングや競技後には、筋肉や関節に疲労がたまります。CBDは抗炎症作用があり、筋肉の炎症を和らげ、回復を促進すると考えられています。
ストレスや不安の軽減: アスリートは高いプレッシャーやストレスにさらされることがあります。CBDは神経系にリラックス効果をもたらし、ストレスや不安の軽減に寄与できるとされています。
睡眠の改善: 良質な睡眠はアスリートにとって不可欠です。CBDは睡眠の質を向上させ、次の日の活動に備える助けとなります。
- 関節のサポート: 激しい運動やトレーニングによって関節に負担がかかりますが、CBDの抗炎症作用が関節の健康をサポートし、怪我の予防や回復に役立つと言われています。
スポーツ用品作りにも応用
ヘンプの茎に含まれる繊維は強度、耐久性が高いことで知られます。このため、木材に変わってスポーツ用品の素材としても利用されています。その丈夫さは、メルセデス・ベンツやアウディと言った車メーカーが、車体の素材に取り入れているほど。
スポーツ用品や楽器などにおいて、ヘンプが木材の代替として選ばれる理由は、木材が成長に数十年かかるのに対し、わずか3ヶ月で収穫できるという成長スピードの早さが挙げられます。ヘンプを利用することで、森林伐採を防ぎ、持続可能な素材を使用したスポーツ用品の生産が可能になります。
ヘンプ由来の食品や飲料も
ヘンプは種子を使って食用油や食品を作ることもできます。ヘンプ種子から抽出されるヘンプオイは、オメガ3脂肪酸やビタミンEを豊富に含み、血液の循環を改善し、動脈硬化や心臓病の予防に役立ちます。またビタミンEも含み、細胞の老化を防ぐ効果も期待できます。
ヘンプ種子から作られるヘンププロテインは、人体に重要な必須アミノ酸をバランスよく含んでいます。牛乳に含まれるホエイが原料になっていることが多いプロテインパウダーですが、最近では栄養価が高くタンパク質の豊富なヘンプの種=ヘンプシードを使った製品も登場しています。クセのない味わいで、アスリートでなくても健康や栄養補給の取り入れてみたくなります。
まとめ
本稿ではパリ五輪にまつわるヘンプの活用法についてご正気しました。今年の大会ではサステナビリティや健康意識の高まりによって、ヘンプが様々な分野で使われます。そしてヘンプにかかわらず、持続可能なアプローチを追求する注目すべきイベントになるでしょう。