諸外国において、その治癒効果が認められ活用されている大麻。がんや多発性硬化症(MS)、てんかん等の様々な病気の治療に効果が高い大麻成分ですが、辛い症状に悩まされることの多いクローン病にも有効とされています。
クローン病はどんな病気?
クローン病は自己免疫疾患の一種であり、患者数が増加し続けている難病の1つです。免疫系が異常反応を引き起こすことで発生するとされていますが、具体的な原因ははっきり分かっておらず、遺伝的な要因や環境要因まで複合的な要素が関係していると考えられています。
一般的な症状には、腹痛、下痢、便秘、体重減少、疲労感、食欲不振、血便などで、関節痛、皮膚疾患、口内炎、発熱などの全身症状も現れることがあります。海外のデータでは、クローン病患者さんの大腸がんが発生する危険度(相対危険率)は、一般の2倍以上高いことも報告されています。多くの患者は通院や定期検診を受けながら日常生活を送ることができますが、それでも様々な不快な症状に悩む人が多いようです。
治療にはステロイドのような抗炎症剤、免疫抑制製薬、特定のタンパク質をターゲットにしたバイオ製剤、栄養療法などがありますが、完全に治すための治療法はまだ開発されていません。
医療大麻は内臓トラブルに効く?
従来の医薬品よりも副作用が少なく、治癒効果が高いことが知られるようになった医療大麻ですが、「痛みやけいれんを抑える」「緊張をほぐしラックス状態を促す」といった効果のほかに、腸内環境にも好影響を与えることがわかってきました。
腸内環境を整える方法といえば、腸内細菌の食料となる繊維質や、善玉菌を多く含む食品やサプリメントをとるといったアプローチがまず思いつきますが、大麻に含まれるCBD(カンナビジオール)に代表される生理活性成分カンナビノイドには、
- 免疫の暴走を抑制する
- 腸のバリア機能の回復
- 消化器の運動の抑制
- 下痢の抑制
- 内臓過敏症と腹痛の軽減
といった働きがあり、CBDを服用することで過敏性腸症候群(IBS)や腹痛、吐き気、下痢、食欲不振といった症状を緩和したというケースが報告されています。
クローン病の発生は免疫系統のトラブルが一因になっていることからも、医療大麻や抽出カンナビノイドはクローン病治療に応用できるのではという期待が高まっています。
医療大麻はすでに米国の多くの州で合法となっており、クローン病患者の多くが大麻治療を取り入れたり、検討しているとされています。しかし医療大麻が病気に伴う不快な症状や不安感を和らげてくれる効果はあっても、症状の進行をストップまたは改善してくれるかどうかについては懸念の声も上がっています。
医療大麻はいまだ新しい分野であり、クローン病の医療についても充分な臨床実験が行われていないため、現時点では確定的な結論がでていないのが現実です。しかし医師と相談し、定期的にチェックを受けた上で、副作用の少ない大麻由来のCBDサプリメントをケアの一部として導入してみることを検討してみる価値はあります。
カンナビノイドはどのようにして作用するのか
カンナビノイドは、大麻やヘンプといった植物に含まれる化学物質です。大麻草の中に100種類以上が含まれており、中でもテトラヒドロカンナビノール(THC)やカンナビジオール(CBD)の存在が最もよく知られています。
このカンナビノイドは人体に存在する「エンドカンナビノイドシステム(ECS)」と呼ばれる、脳や神経系、免疫系など広範囲に分布するバランス調整システムと相互作用することでその作用を発揮します。
たとえば神経細胞の一部に存在するカンナビノイド受容体にカンナビノイドが結合することによって、神経細胞の活動が変化してシグナル伝達が影響を受けます。これによってリラックス効果をもたらしたり、食欲を増進、炎症を和らげ痛みを緩和するといった生理的な変化や感覚の変化が引き起こされるのです。
カンナビノイドは体内でも作られている
カンナビノイドは大麻だけが持つ成分だと思われがちですが、私たちの体内でも大麻成分に類似した作用と構造を持つ物質が生成されています。これらは総称して内因性カンナビノイドと呼ばれていて、この内因性カンナビノイドとECSが相互作用して健康状態が保たれています。しかしライフスタイルの乱れやストレス、加齢などにより体内の機能が弱まりカンナビノイドが欠乏した状態になると、健康バランスが崩れ心身のトラブルが発生するのです。
CBDをはじめとする外部から取り入れる大麻由来カンナビノイドは、弱まったECSの機能を整えることで、幅広い疾患の治療に効果を発揮すると考えられています。
米国の食品医薬品局は、大麻植物の使用を合法としていませんが、州ごとの合法化は進んでおり、カンナビノイドを含んだ単独の医薬品については既に承認を得て、医療施設で処方されています。大麻由来の医薬品には、てんかんの治療に使用されるCBDを含む「エピディオレックス」や、化学療法の副作用で起こる吐き気や嘔吐を緩和するTHCを含む「マリノール」や「シンドロス」などがあります。
腸内運動を穏やかにするカンナビノイド
大腸炎に関する動物実験では、カンナビノイドが大腸炎の発症を予防、またはダメージを最小限に抑えてくれるというデータがあります。そして研究段階ではありますが、腸の過敏症を調節してくれる可能性のあるカンナビノイドには、CBD(カンナビジオール )やCBC(カンナビクロメン)が効果的というのが有力説。
CBDはカンナビノイドの中でも最も広く研究が行われている成分の1つで、抗炎症、鎮痛、抗不安、抗てんかん、神経保護、血管弛緩、抗けいれん、抗ガン、制吐、抗菌、抗糖尿、骨の成長促進など様々な効果があることが知られています。
一方のCBCはCBDほど研究が進んでいませんが、痛み緩和、抗炎症、ガン腫瘍の抑制、骨の成長促の作用などが見つかっており、神経の新生にも関与する可能性が示されています。
まとめ
医学が進歩する一方で、現代人は疲労やストレス、ライフスタイルの乱れによって体内で様々な炎症が引き起こされ、心身のトラブルを起こしやすくなっているといわれます。
トラブルの原因となっている生活の乱れを整えることが最も大切ですが、既にトラブルに悩んでいる人々にとっては、長期的な生活改善と並行して、不快な状態を和らげ、リラックス効果や質の高い睡眠を確保するために、CBDなどのサプリメントや医薬品のサポートを上手に活用することも重要です。
CBDをブレンドしたサプリメントは日本でも手に入りやすく、副作用も少ないため、安心して取り入れることができます。日常生活にサプリ的に取り入れるだけでも「安眠できる」「イライラが減った」といった嬉しい効果が多く報告されています。
最近では錠剤やオイル、ドリンクタイプなど、さまざまな形態のCBD製品が手軽に入手できるようになりました。健康的な生活を送るために、生活を改善するとともにCBDを取り入れてみるのも一つの方法です。良質のサプリは日常のストレスや不調を軽減し、心身のバランスを整える手助けとなってくれるでしょう。
参考資料
https://www.crohnscolitisfoundation.org/complementary-medicine/medical-cannabis