大麻や大麻由来成分のCBD(カンナビジオール)はアメリカでトレンドの一つとなり、健康面でも様々なメリットがあることが知られています。本記事では「大麻ランニング」というユニークな活動や、大麻をアクティブライフに役立てる研究についてご紹介します。
賛成派が7割。一般利用が増える大麻由来成分
大麻草から抽出される成分CBD(カンナビジオール)はアメリカを始め各国でトレンドの一つとなり、健康メリットが大きいことが知られるようになりました。特にアメリカでは合法化が進み、アメリカンフットボールNBAの花形選手やプロゴルフ選手などが使っていることで人々の意識も大きく変わりつつあります。
アメリカのバスケットボールリーグNBAでは、選手たちが副作用の大きい鎮痛剤の被害に苦しむのを避けるため、医療大麻による痛み管理を許可するという動きも見られます。
日本に比べて大麻合法化がかなり進んでいる米国において、大麻合法化に賛成しているのは全体の68%(ギャラップ調査)。これは2021年時点のデータですので、現在は7割を超えていると予測されます。しかし現代において違法だった時代が長い大麻にまつわるマイナスイメージもまだ大きく、不安を抱いている人も多いのが事実です。
どんなメリットがあるの?
CBD(カンナビジオール)はそんな大麻に含まれる数百におよぶ化学物質の1つで、生理活性物質カンナビノイドの一種です。このCBDをはじめとするカンナビノイドは、生き物に備わったエンドカンナビノイドシステムと呼ばれる心身のバランス調整機能に働きかけ、私たちの健康に様々な効果を催します。
CBDの効果として代表的なのは炎症からくる痛みの緩和効果、リラックス効果、不安やストレス状態を緩和するといった効果で、炎症や体内の酸化からくる皮膚トラブルにも有効とされています。
また医療グレードで使用することで
- 重度のてんかん
- がんの疼痛管理
- 一部のがん細胞の抑制
- うつ病
- アレルギーや関節リウマチのような自己免疫疾患
- 糖尿病などの成人病
- 多発性硬化症
など様々な病気の改善に役立つことがわかって来ています。
前述のように炎症と痛みを抑える効果を利用して、アスリートのボディケアにも広く使用されるようになりました。
大麻を使って快適にランニング
CBDをはじめとする大麻成分は大麻草をそのまま喫煙したり、抽出成分を服用することでその効果を得ることができます。また抽出成分を食べ物やボディクリームなどにブレンドしたものも人気があります。
アスリートやスポーツ好きはプレー後に大麻製品を使うことが多いですが、オレゴン州ポートランド在住のスティーブン・スナズク氏は、大麻を使ってランニングをする「マリファナランニング」というスポーツを考案しました。
スポーツ好きのスナズク氏は、大のランニングが好きでウルトラランにも出場。彼は大麻を使用することでランニング後の回復ケアだけでなく、ランニング中の心身をリラックスさせることができ、パフォーマンスを向上させると語っています。
彼は、オレゴン州で2018年に大麻が合法化されたことをきっかけに地元で「大麻ランニング」を始めました。また自分や仲間と使用するための栽培にも精を出しています。
これはマリファナを使ってからランニングを楽しみというシンプルな楽しみ方。大麻の効果によって痛みや緊張を和らげランニングがより心地よく感じられるようになります。またランニングの最中に生まれる疲れやストレスも軽減することができるそう。
「マリファナランニング」は楽しみだけでなく安全性が大切です。スナズク氏は適量を見極め、自分自身がコントロールできる範囲で使用するようアドバイスしています。
スポーツと大麻、いいこともあるけど注意点も
スポーツに大麻を使うという行為には賛否両論があります。
まず、大麻使用が違法なエリアの場合は当然ながらスポーツ選手が使用することは許されていません。また大麻の中に含まれるカンナビノイドTHC(テトラヒドロカンナビノール)はドーピング成分として指定されているので、一般の大麻使用が合法であっても注意が必要です。
加えて大麻を喫煙することで瞬時の判断力や運動能力の低下が起こるケースもあるため、どんなスポーツにも向いているわけではないことも覚えておきましょう。そして大麻の抽出成分であるCBDは、ドーピング規則に触れず、運動能力への悪影響を与えない点で、より安全なチョイスと言えるでしょう。
大好きなランニングを続けるため、肉体面・メンタル面の両方のサポートに役立つと大麻を愛用しているスナズク氏自身も「喫煙によってランニング時の呼吸に悪影響はないのか」という質問に対し、「全くない訳ではないと思うが、自分にとってはメリットの方が優っている」と語っています。
ランナーズハイと大麻のハイ
医療用と嗜好用大麻をいち早く合法化した米コロラド州のコロラド大学ボールダー校では、大麻がワークアウトに与える影響を探る研究が行われています。
ランニング中に感じる“ランナーズハイ”という現象は、運動後に脳内で放出されるエンドルフィンという物質が作用することで生じると考えられています。
また大麻に含まれるカンナビノイドTHCも、脳内のエンドカンナビノイドシステムに作用することで気分が高揚したり、幸福感を感じるといわれます。
コロラド大学の研究では、定期的に運動をしている大麻ユーザー10人と、同条件だが大麻を使用していない10人が参加しました。研究ではランニングマシンで30分間運動した後、血液サンプルを採取し、ランニング中に感じた幸福感やパフォーマンスについてヒアリングを行いました。
その結果、大麻を使用したグループは、ランニング中に感じる幸福感が高かったものの、運動パフォーマンス自体には大きな差は見られなかったといいます。
また大麻の体験は個人差が大きいことも示唆されました。
また、Frontiers in Public Health誌に掲載された研究では、大麻を使用する人のうち80%が運動と大麻を組み合わせており、70% がスポーツ時の楽しさが増したと述べ、78% がリカバリーを促進すると述べ、52% がやる気を起こさせたと回答しています。
さらに高齢者を対象とした別の研究では、大麻使用者は非使用者よりも運動量が多いことがわかりました。これは「大麻を喫煙するとだらけてしまい、ソファーに座ったきり何もしなくなる」という、典型的な大麻喫煙者のイメージとは正反対の結果といえます。
ランナーズハイに関する新事実
またランナーズハイを引き起こすのは実は脳内のエンドルフィンだけではなく、体内で生じる内因性カンナビノイドも関係している可能性が浮上して来ました。
内因性カンナビノイドは、人間や動物の体内で自然に生成される化学物質であり、神経伝達物質としての役割を持っています。また体内のカンナビノイド受容体と相互作用することで、痛み、感情、食欲や睡眠、運動、学習・記憶などの機能にも影響を与えます。
内因性カンナビノイドと同じ受容体に結合するCBDやTHCを外部から摂取することにより、アスリートは、ワークアウトの最初からある程度のランナーズハイ状態を得ることができ有利なスタートを切ることができると推論できます。
シニアライフにおける大麻の可能性
高齢者のライフスタイルには、様々な課題がありますが、運動不足は高齢者の健康維持にとって非常に重要です。年齢を重ねるとともに、体に痛みを抱えることが増え、運動することがおっくうになりがちです。これが、高齢者が運動不足になる理由の一つです。研究者たちは大麻が高齢者の痛みや炎症を和らげ、より活動的になることをサポートするメリットに期待を寄せています。
すでに関節炎の痛みを抑えるCBD配合の経皮パッチなども普及しており、利用者はじわじわと増えているようです。
まとめ
この記事では大麻の効果やランナーズハイ、スポーツ時の爽快感に関する研究について紹介しました。
大麻や大麻由来成分は痛みの緩和やメンタル面のサポートなど、ポジティブな影響をもたらすことができます。違法行為やドーピングにならないように、正しい使用方法と注意点を守り、アクティブライフに役立てていきたいものです。
<参考資料>
https://www.colorado.edu/today/2019/04/30/new-runners-high-80-cannabis-users-mix-weed-workouts