大麻が合法化されたカナダや米国の一部の州では、バーやパブでお酒を飲むのと同じように大麻を楽しむことができる「大麻ラウンジ」が登場しています。一見トレンディなカフェと変わらないこれらのラウンジでは、どのような体験ができるのでしょうか。
もっとソーシャルに大麻を楽しみたい
日本ではなかなか想像しにくい大麻合法化。米国では大麻が合法となっている州のみディペンサリーと呼ばれる大麻薬局で大麻を購入して所有・使用することができますが、州ごとに独自の法律と規制があり、公共の場で大麻を楽しむことができる場所はまだ限られています。
このため大麻を購入した人が自宅だけでなく、社交の場で仲間とビールやカクテルを楽しむのと同じように大麻製品を安全に楽しむために作られた合法ライセンスを持つソーシャル大麻喫煙ラウンジが生まれています。
かつて大麻が完全に違法となっていた時代には、都市部には大麻と音楽をこっそり楽しむ「ティーパッド」と呼ばれる非合法クラブがありました。こういったスペースで大麻を購入し、ジャズを聴き社交することで新しいカルチャーも生まれることもありました。
また医療大麻合法化運動が盛んだった90年代には、HIVやがん患者、その他の病気を抱える人が医療用大麻を入手することができる合法化運動ラウンジが結成され活動が続けられました。
ラウンジの楽しみ方
大麻が合法となっている州でも、一般に大麻の消費は個人宅に制限され、公共の場における大麻消費はほぼ禁止されています。しかし社会的ニーズの高まりにより、カリフォルニアやネバダ、イリノイ州など、ソーシャルな大麻消費を許可する州も徐々に増えています。
こういったラウンジではバーでドリンクを注文するように店で売っている大麻製品のみが消費できる場所と、自分で持ち込みができる州に分かれています。多くのラウンジでは、レストランでの食事代を支払うのと同じように、ラウンジで扱う大麻製品を購入する必要があります。
また予約制となっていて 90 分から 120 分の範囲で利用することができます。
カリフォルニア・ウェストハリウッドにある人気のディペンサリー(大麻販売所)「アーティストツリー」にある大麻ラウンジは上品で洗練されたイメージ。ディペンサリーにある700 以上のアイテムの中からお気に入りを選んで2 階に上がると、大麻を楽しむだけでなく、食事やライブミュージック、アート、イベント、ウェルネスクラスなど様々な体験ができるソーシャルスペースが用意されています。
ラウンジによってはゲームを楽しんだり、コメディショーが行われることもあります。
またラウンジとは異なりますが、大麻を楽しむことができる観光バス、ホテル、ベッド & ブレックファストなどの分野も米国で成長を遂げている大麻関連サービスの一例です。
ヨーロッパの大麻ラウンジ
個人使用に限っては大麻を犯罪として扱わないことから、スペインのバルセロナとオランダのアムステルダムの2都市ではすでに大麻ソーシャル・ラウンジ文化が存在します。
バルセロナの市内にある大麻ラウンジは400店以上。スペインでは大麻はグレーゾーンの扱いで自宅や大麻クラブでは喫煙できますが、公共の場所で使用すると600ユーロからの罰金が科せられます。
またバルセロナの大麻ラウンジはアムステルダムのように、誰でもそのまま入場できるわけではなく、観光者であってもそのラウンジの会員になる必要があります。クラブでは大麻喫煙を楽しむほかにも食事、ドリンク、ライブ演奏などが提供され、さまざまなビデオゲーム、 大画面テレビでスポーツ観戦も楽しむことができます。日中はこのスペースでドリンクか片手にしおしゃべりを楽しんだり、ラップトップに向かって仕事をしている人もいるなどありふれたカフェやバーとほとんど変わらない機能をしているようです。
カナダには合法ラウンジが少ない?
アメリカに先駆けて大麻を合法化したカナダでは、意外にも合法の大麻ラウンジはあまりありません。国土が広く人口の少ないカナダでは大麻を楽しむ土地はたくさんあるものの、室内で集まって楽しむことには消極的なよう。
オンタリオ州ではニーズの高まりを受け合法的な屋外の大麻消費スペースの運営がスタートしていますが、アメリカに比較するとかなり控えめです。非合法ラウンジは多数存在してるものの、アメリカの大麻ツーリズムの盛況ぶりを見る限りカナダは観光収入のチャンスを逃しているのかもしれません。
もしハイになりすぎたら?
大麻の効果が強すぎたり、吸いすぎてしまって自分がコントロールできなくなるハプニングも起こります。そんな時はどうしたら良いのでしょうか。まず、パニック状態になる前に深呼吸をして気分を落ち着けてから、周りの友人やスタッフに状況を伝えます。
バーテンダーが酔いすぎたり体調不良を訴える酔客をケアするよう教育されているのと同じように、大麻ラウンジのスタッフはこのような場合のケアや対策のトレーニングを受けています。めまいなどが起こっても、焦ると事態がますます悪化することもあるので、大麻成分の効果はじきに薄れていくものと自分に言い聞かせ、スタッフの指示に従いましょう。
変化するユーザー像
2021 年のギャラップ世論調査によると、米国の成人の 60% が飲酒すると回答しています。これは2019 年の 65% から5%の減少です。特に若い世代のアルコール消費量が減っており、35 歳から 54 歳までの 70% がアルコールを飲むと報告しているのに対し、18 歳から 34 歳のグループの飲酒率は60%でした。
その一方で、大麻経験のある成人はすでに全体の半数にあたる49%にのぼっています。
大麻調査会社ニュー・フロンティア・データの調査によると、 18歳から24歳までの人々の69%はアルコールよりも大麻を好んでいるそう。
別の調査では2022年時点で28歳以下にあたるZ世代 の 38% が大麻ラウンジを訪れたことがあることがわかりました。大麻ラウンジは今後、若い世代の新しい社交場として発展していくのかもしれません。
<参考資料>
https://www.leafly.ca/news/canada/why-are-there-no-weed-lounges-in-canada-post-legalization
https://daily.sevenfifty.com/do-cannabis-lounges-pose-a-threat-to-the-bar-industry/
https://news.gallup.com/poll/353858/alcohol-consumption-low-end-recent-readings.aspx
https://www.restaurantbusinessonline.com/beverage/cannabis-competing-alcohol-gen-zs-dollars